テレビ画面における広告というと、かつてはテレビ CM を指しましたが、近年ではインターネットに接続したコネクテッドテレビの普及とともに、デジタル広告が果たす役割が広がっています。
2023 年 3 月時点で、コネクテッドテレビは全テレビデバイスの 34% を占めており、前年から 5 ポイント増加しました(*1)。大画面で迫力ある映像を楽しめる、リビングなどで誰かと一緒に視聴しやすいといったテレビ画面ならではの特徴に加えて、広告の配信面としては、ユーザーの興味関心に基づいて配信できるというデジタル広告の特徴も合わせ持っているのです。
ユーザーに、より興味関心を持って能動的に視聴してもらえるということは、広告として高い費用対効果(ROAS)が期待できるということでもあります。
この記事では、コネクテッドテレビ向けの YouTube 広告(YouTube コネクテッドテレビ広告)を活用して成果を上げた、株式会社トライグループと株式会社ブリヂストンの事例を紹介します。
CPA を 18.3% 改善、興味関心から検索リフトまで効果 —— 個別指導のトライ
まず紹介するのは、「家庭教師のトライ」を運営するトライグループの事例です。オンライン個別指導塾サービスへの申し込み促進を狙い、YouTube コネクテッドテレビ広告の配信を強化しました。
同社がコネクテッドテレビに着目したのは、「潜在顧客へのリーチ」と「共視聴」の 2 つの観点からです。
コネクテッドテレビの普及を受けて、テレビはより届けたい対象にリーチできるデバイスになりました。子供の教育に関心があり、トライグループにとって重要な顧客層である MF2 層(35 歳〜 49 歳男女)へのリーチを強化するためにも、YouTube コネクテッドテレビ広告が有効だと同社は考えました。
また教育サービスの特性上、親と子の双方にサービスの良さを理解してもらい、より納得感をもって入会してもらうことが重要です。モバイルの個人視聴とは異なり、テレビなら親子での共視聴が期待できることも、コネクテッドテレビへの配信を強化する決め手になりました。
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今回の YouTube 広告では、サービスの特徴を端的に訴求し、動画の最後では「トライ オンライン」というキーワードでの検索を促しました。
KPI としては、Google のブランド効果測定で「比較検討」と、サーチリフト調査で「検索リフト」を測定。さらに、同社が定常的に配信している検索広告の顧客獲得単価(CPA)への影響も分析しました。
YouTube コネクテッドテレビ広告による比較検討の数値は 10.6% のリフトを確認でき、検索リフトも 243% 増加しました。購買行動の重要な接点で YouTube コネクテッドテレビ広告が貢献していることがわかります。
CPA も大きく改善しました。測定にあたっては、日別のコンバージョン数が同じになるように全国の都道府県を 2 つのグループに分け、一方では広告を出稿せず、もう一方では YouTube コネクテッドテレビ広告を配信しました。
その結果、YouTube コネクテッドテレビ広告を配信したエリアの CPA は、配信していないエリアと比べて 18.3% 削減と大きな効果が見られました。
今回のキャンペーンを担当したトライグループの廣野伊織氏(宣伝部 課長)は「フルファネルにわたって YouTube コネクテッドテレビ広告の効果を可視化できた点が最大の成果」と振り返ります。
「一口にコネクテッドテレビの配信と言っても、目的に合わせたプロダクトの選定や広告クリエイティブのフォーマットも含め、自由度高く配信できます。また認知効果をブランドリフトとして可視化できただけでなく、獲得効率をどれだけ向上させることができたか、検索数をどれだけ増やせたか、といったそれぞれの KPI に対して結果を出すことができました」
視聴 “ 質 ” の差が、広告認知の差に? ブリヂストンによるテレビと YouTube の比較検証
続いて紹介するのは、ブリヂストンの事例です。スタッドレスタイヤブランドである「BLIZZAK(ブリザック)」のキャンペーンで、テレビ CM と YouTube コネクテッドテレビ 広告の効果を、広告認知を KPI として比較検証しました。
ブリヂストンの事例で注目すべきは、単なる広告認知の数値比較ではなく、その数値の要因までを分析した点にあります。同社は、テレビ視聴の分析サービスを提供する REVISIO株式会社の「視聴質調査」を効果測定に取り入れることで、テレビ CM と YouTube コネクテッドテレビ広告の視聴を質的にも分析したのです。
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まずは、広告認知の数値をテレビ CM とYouTube コネクテッドテレビ 広告それぞれ見ていきます。両方接触した場合に加えて、それぞれの層でどれだけ認知リフトがあったかを確認しました。
まず、テレビ CM と YouTube コネクテッドテレビの両方に接触した場合に 15.3 ポイント増と最も高いリフトが出ていました。同じ素材、デバイスではあるものの、テレビ CM と YouTube コネクテッドテレビの重複接触によるリフトが見て取れます。「テレビ CM だけでなく、YouTube コネクテッドテレビを合わせて出稿することが広告効果を高める」ことが確認できたのです。
次にそれぞれの内訳を見ていきます。テレビ CM の場合、「確かに見た」「見たような気がする」で 4.3 ポイントのリフトがあったのに対して YouTube コネクテッドテレビ広告では、 9.1 ポイントのリフトと、テレビ CM 以上の効果を確認できました。
同じテレビ画面への配信で、かつ同じクリエイティブにもかかわらず、なぜこうした差が出たのでしょうか。REVISIO の視聴質調査から分析しました。この調査は、協力を得ている世帯のテレビに人体認識技術を搭載した機器を設置し、プライバシーに配慮した形で、その世帯の誰がいつ画面を見ているかをデータ化して分析するものです。
はじめに、対象の広告が 1 秒以上画面に映った場合の「世帯リーチ」に対する滞在リーチの割合を、テレビ CM と YouTube コネクテッドテレビ広告それぞれで確認しました。すると前者の滞在リーチは 59%、後者は 77% と、YouTube ではより質の高いリーチを獲得できていることがわかったのです。
また滞在リーチを年齢別に見ると、MF2 以下(20 歳 〜 49 歳の男女)におけるテレビ CM の滞在リーチが 35.6% だったのに対して、YouTube コネクテッドテレビ 広告では 59.7% でした(*2)。つまり YouTube コネクテッドテレビ広告は、世代の偏りなく見られていることがわかります。
さらに、対象の広告が画面に映っている間、1 秒以上画面を注視していた場合にカウントする「注視率」を比べても、テレビ CM が 37.5% に対して、YouTube コネクテッドテレビ広告では 50.9% と開きがありました。
つまり、YouTube コネクテッドテレビ広告はテレビ CM よりも注視されており、それが広告認知の差にもつながっていると推察できます。
今回ブリヂストンのキャンペーンを担当していた博報堂DYメディアパートナーズの佐藤憶人氏(AaaSビジネス戦略局 メディアプロデューサー)は、この結果を受けて、「同じデバイスでも、地上波のテレビ CM とは視聴者特性が異なるからこそ YouTube コネクテッドテレビ広告は効率的に認知を獲得することができるという結果を得られた」と話します。
なお、今回のキャンペーンではテレビ CM とYouTube コネクテッドテレビ広告の効果を比較するために、テレビ CM の素材をそのままコネクテッドテレビでも配信しました。
今後 YouTube コネクテッドテレビという配信面に合わせて、クリエイティブや広告フォーマットを工夫すれば、さらに高い広告効果を実現できる可能性もあります。同社でも「広告効果を最大化するべく、PDCA を回し続けたい」とのことです。