2024 年 6 月に受賞作品を発表した YouTube の広告賞「YouTube Works Awards Japan 2024」のファイナリスト全 50 作品のうち、半数以上が Google AI を活用した YouTube 広告プロダクトを利用した事例でした。
AI がマーケティングの鍵を握る今、各社は YouTube 広告をどのように自社のキャンペーンに取り入れているのでしょうか。今回はアワードのファイナリストの中から、Google AI を取り入れた YouTube 広告プロダクトを活用して、売り上げやターゲットリーチなど、それぞれのマーケティング目標を達成した 3 社の事例を取り上げます。
後発サービスでも認知や売上拡大につなげたメディアプラン「MOTA車買取」
まず紹介するのは、車の一括査定サービス「MOTA車買取」を展開する株式会社MOTA の事例です。YouTube 広告の「動画アクション キャンペーン」を活用することで、売上拡大を効率的に後押ししました。
MOTA車買取は、車を売りたい人が、複数社から一括で査定を受けられるサービス。最大 20 社が事前入札を行い、査定額上位 3 社のみから連絡が来るユーザーファーストな設計が特徴です。
従来は、業界で主流だったラジオ広告や検索広告に注力しており、サービスの申し込み数や顧客獲得単価(CPA)は、目標を達成していました。
ただし車の査定サービスとしては後発のため、サービス認知や市場シェアの低さが課題に。すでに成熟した市場の中で、競合他社と同じ戦略では、最終的な売り上げや市場シェアの拡大までは難しいと判断し、メディアプランに YouTube 広告を加えました。
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過去の実績を基に、申し込みが多い 20 代 ~ 50 代男性で、車の売却を検討している人をコアターゲットに設定しました。
そして今回 YouTube 広告のフォーマットとして選んだのが「動画アクションキャンペーン」です。ユーザー行動を促すことに特化した広告フォーマットで、コンバージョン(CV)の可能性が高いユーザーを Google AI で予測し、設定した予算内で効果的な CV が獲得できるよう配信を最適化します。これにより、申し込み数と売り上げの最大化を図りました。
また同じく Google AI を活用した「P-MAX キャンペーン」や「ファインド広告」など Google 広告プロダクトも併用。YouTube 広告と同じ素材を使って配信しました。
2022 年 11 月から翌年 10 月までのおよそ 1 年間、従来のラジオ広告やその他 SNS 広告なども含めたキャンペーン全体を通じて、指名検索数は 27 倍と大きく増え、サービスの申し込み数は前年比 317%。その結果、2023 年の売り上げも同 354% と大きく成長しました。
業種別に 30 本の動画を制作して Google AI で配信を最適化、スキマバイトの「タイミー」
次に紹介するのは、株式会社タイミーの事例です。「タイミー」は、面接や履歴書なしで働ける “ スキマバイト” という新しい働き方を提案し、現在のユーザー数は 700 万人を超えています。同社も動画アクション キャンペーンを活用しサービスの利用を促しました。
従来、求人を掲載する事業者への営業活動は大手企業が中心でしたが、2023 年に事業者自らが無料でアカウントを作成して求人を出せるプラットフォームを開設。それを機に、より幅広い事業者にサービスを知ってもらい、アカウント開設数を増やすことが重要になりました。
アプローチしたい業種が、飲食や物流、小売、ホテル、介護など多種多様だったため、業種ごとの異なる課題を抽出し、それに沿った訴求内容を提示するクリエイティブを制作。業種と事業規模別に 30 本以上の動画を作り、対象に応じて広告を出し分けました。
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今回の KPI が新規アカウント開設の CPA だったため、アクションに対して配信を最適化できる動画アクションキャンペーンを活用することを決めました。Google AI による最適化で、より広告効果の高い動画に配信を寄せながら、効果を高めていきました。
配信を開始した 2023 年 8 月時点での CPA は配信前と比べて 4 分の 1 以下まで効率化。さらに、Google AI による最適化が進んだ 11 月 〜 12 月には、同 8 分の 1 まで改善しました。申し込み数も期待通りの結果であったため、同社はメディア予算を増額し、2024 年 5 月現在もキャンペーンを継続しています。
認知から行動喚起までカスタマージャーニー全体で Google AI 活用、ソフトバンクの新料金プラン「ペイトク」
最後は、ソフトバンク株式会社の新料金プラン「ペイトク」の事例です。カスタマージャーニー全体で、Google AI を活用した多彩なプロダクトを駆使して効率的に目標を達成しました。
ペイトクは、ソフトバンクキャリアの新料金プランです。PayPay での決済による還元率の高さを訴求し、キャリア加入につなげる狙いがありました。
同社は「認知」「内容理解」「行動喚起」 の 3つのフェーズに分けてキャンペーンを展開しました。
アプローチしたいのは 6,200 万人いる PayPay ユーザーですが、ユーザー全体に漏れなく届けるため、認知フェーズでは国民全員に知ってもらうことを目標に設定。テレビCM と YouTube 広告を併用しました。このフェーズの中核はテレビ CM が担いつつも、テレビ CM だけでは届かない層に、6 秒のバンパー広告を中心に YouTube 広告でリーチしました。
配信にあたっては「動画リーチキャンペーン」を活用しました。これは、Google AI によってバンパー広告と TrueView リーチ広告のリーチを予算内で最大化できるように自動で出し分ける広告フォーマットです。それぞれの広告フォーマットを個別に利用した場合と比べて、効率的にユニークリーチを拡大できます。
内容理解フェーズでは、YouTube 広告の長尺動画を中心に据えました。その際、コネクテッドテレビやモバイルなど、配信面に応じてクリエイティブを最適化したことも今回の成果につながっています。
ここでは「動画ビューキャンペーン」を活用。動画リーチキャンペーン同様に、Google AI を活用した広告フォーマットです。TrueView インストリーム広告やインフィード、ショート面を活用し、設定した視聴単価の範囲内で再生数を最大化できます。配信面が広がることで、従来の TrueView インストリーム広告単体の場合よりも多くの再生数が期待できるのです。
単一の広告フォーマットではリーチしきれないユーザーに対しても、インフィード面やショート面で効率よくリーチしました。
そして行動喚起フェーズでは、30 秒程度の短尺動画を配信。複数の動画クリエイティブの微修正を繰り返して PDCA を回しながら Webサイトへ誘導しました。また動画接触者に対するディスプレイ広告やその他オフライン施策も含めてクロージングを図りました。
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結果として、認知フェーズと内容理解フェーズいずれも視聴完了数は目標を達成しました。視聴完了単価も前年比でそれぞれ 28%、59% と大きく改善。Google のブランドリフト調査でも、認知は 20%、内容理解は 25% の相対リフト上昇が確認できました。また行動喚起フェーズにおける Web サイトのクリック率も目標比 280% を達成しました。
以上、今回はそれぞれのマーケティング目標に対し、Google AI を取り入れた YouTube 広告プロダクトを活用して効率的に成果を上げた 3 社のキャンペーンを見てきました。
YouTube Works Awards Japan 2024 のファイナリスト 50 作品は、以下の PDF に掲載しています。実に半数が、今回取り上げた Google AI を活用した YouTube 広告プロダクトを活用している事例です。広告の設計やクリエイティブ制作の参考にしてみてください。
ファイナリスト 50 作品のPDF はこちらから