US 版 Think with Google が 2023 年 4月に公開した記事を基に日本語に翻訳し、編集しました。
企業がマーケティング戦略を立案、実行するにあたって、多様な動画フォーマットでの展開がますます重要になっています。たとえば、個人に最適化されたコンテンツや動画のフォーマットが、人々の視聴行動にどう影響するかを探ったり(英語)、さまざまな尺の動画で実験したり(英語)していることもそうした背景があるからでしょう。
視聴者の 80% が「YouTube は他のプラットフォームと比べて最も多様なコンテンツを提供している」と回答している(*1)こともあり、ブランドも、そうした多様なフォーマットや環境でキャンペーンを展開するために YouTube を利用しています。
多様なフォーマットによるマーケティングを成功させるために、クリエイティブ素材を配信面やコンテンツに合わせて最適化することは大切ですが、同時にマーケティング目標に合った動画フォーマットを選ぶことも非常に重要です。
今回は、複数の動画フォーマットを、トレンドを押さえたクリエイティブと組み合わせて成果を上げた 3 つのブランドの事例を紹介します。
Nissan USA は、音楽で成功を奏でる
Nissan USA は、ワクワクするような方法で、電気自動車「アリア」の認知度を高めたいと考えました。そこで、音楽であれば、多様な個人が楽しめるものであると同時に、普遍的な体験を提供できると考えた同社は、音楽ファンが幅広く情熱を注いでいる YouTube の活用を決めました。
日本の伝統美を活かした落ち着いた車内空間と、電気自動車のびっくりするぐらいの急加速感との組み合わせというアリアの二面性をアピールするために、Nissan USA は YouTube のトレンドである、チルなヒップホップのビートとシンプルな要素で構成された「Lo-Fi Hip hop(ローファイヒップホップ)」を取り入れることにしました。
Nissan USA は、人気の YouTube チャンネル「Lofi Girl」にインスピレーションを受け、15 トラックのプレイリストと少し変わったアニメで構成した 4 時間の動画(英語)を制作。数時間ものコンテンツを制作することにはリスクがあるように思うかもしれませんが、Nissan USA では YouTube の視聴者が長編動画を受け入れてくれる(英語)と確信していたのです。
同社のグローバル CMO であるアリソン・ウィザースプーン氏は次のように説明しています。「アリアを発売するにあたり、この車に匹敵するような、非常にクリエイティブでユニークで、トレンドの最先端を行くような方法で認知と検討を高めようと考えました。YouTube は、視聴者と真摯につながるための、革新的でクリエイティブなキャンバスを与えてくれました」
Nissn USA は、デバイスを横断して効率的にリーチを獲得するためにスキップ可能なインストリーム広告を使ってローファイ動画を画面全体に表示しつつ、広告の露出(SOV)を増やすために、Lofi Girl のチャンネルにロードブロッキングを設置しました。また熱心な音楽ファンを新たなオーディエンスとして取り込むために、音楽関連のダイナミック ラインナップの多様な組み合わせを使ってそんなファンたちとのエンゲージメントを強めました。
この動画は公開後 1 カ月間で 700 万回以上再生され、数千件の肯定的なコメントを獲得。全デバイスでの平均視聴時間は 15 分で、コネクテッドテレビ(CTV)に限れば 19 分でした。
たとえ長い動画コンテンツであっても、適切なクリエイティブ、トレンド、プラットフォームがあれば、デバイスを問わず視聴者を引き付けられることを証明したキャンペーンと言えます。
YouTube ショートを活用してアプリ登録を促したフィットネスブランド Les Mills
ニュージーランド発祥のフィットネスブランド Les Mills の目標は、自宅でフィットネスができるスマホアプリ「LES MILLS+」の登録者数を増やすことでした。そこで同社は、多くの人にとってはあまり楽しいものではないエクササイズを、より身近に感じられるようにする必要がありました。そのための理想的なフォーマットが、モバイル向けの短尺動画だったのです。
全世界における YouTube ショートの 1 日あたりの平均視聴回数が 2023 年 1 月時点で 2,500 億回を超えています(*2)。Les Mills は YouTube ショートをキャンペーンの中心に据えました。
広告クリエイティブ(英語)には、以前に SNS 用に制作した短尺の縦型動画を流用しました。次に、縦型と横型の動画アクションキャンペーンを組み合わせて、コンバージョン段階にある視聴者に向けて、アプリへの登録を促しました。これによって視聴者は、デバイスに縛られることなく、視聴環境に応じて適した縦横比の動画を受け取れるようになりました。
最終的にこのキャンペーンでは、クリック率(CTR)が 52% 増加し、同時に顧客獲得単価(CPA)は 10% 削減、インプレッション単価(CPI)も 16% 削減と、予想を上回る結果となりました。インプレッションのおよそ 4 分の 1 はモバイルでの視聴でした。モバイルを念頭に置いてキャンペーンを構築するという戦略は正しいものだと裏付けられたのです。
Les Mills のマーケティングマネジャーであるマイケル・フィッツパトリック氏は「縦型動画を組み合わせることで、多様なフォーマットで視聴者にリーチできるようになり、最終的にはより多くの人が LES MILLS+ で一緒にフィットネスをしてくれるようになりました」と話します。
同社の成功からも、複数フォーマットの活用が、新たな顧客と出会い、求める結果を実現するのに効果的であることがわかります。
Moët & Chandon、CTV で YouTube をストリーミングする視聴者向け広告を作成
フランスのワイナリーブランドである Moët & Chandon は、何世紀にもわたって格調高い高級シャンパンで知られてきました。一方で、最近ではコアな顧客層を拡大してブランドの魅力を高めようとしています。
これは同社のマーケティングチームにとって、現代的なひねりを加えることでブランドコンテンツを若返らせることを意味していました。YouTube で人気のハウツー動画からヒントを得て、シャンパン文化を新しい世代へアピールするためのチュートリアルシリーズ『The Perfect Serve』(英語)を制作しました。
このシリーズは、長い動画と短いティーザー動画(英語)で構成されています。Moët & Chandon は、「効果的な動画広告制作の ABCD」を参考に、視聴者を自社の YouTube プレイリスト『The Perfect Serve』に引き込むため、短尺動画(英語)をインストリーム広告として配信することにしました。
クリエイティブ素材の次は、視聴デバイスについて検討しました。さまざまな視聴環境にいる人々にリーチすることが重要だったため、2 つの異なるデバイスへ広告を配信しました。一方は CTV、もう一方は CTV 以外のすべてのデバイスを対象としたものです。
2 つの広告には同じ素材を使いましたが、CTV においては、魅力的なチュートリアル動画と没入しやすいテレビ画面との組み合わせにより、より高い効果を確認できました。Google が Latitude と 2022 年夏に実施した調査(英語)によると、YouTube CTV 広告は、 従来型の地上波テレビ放送や他のストリーミングアプリの広告よりも関連性が高く(59%)、ユニークで(55%)、楽しい(51%)と視聴者は回答しています(*3)。
広告は両者とも非常に好調でしたが、CTV に配信した広告は、他デバイスを対象としたものと比べて、広告想起率が 2 倍以上に増加しました。CTV を使ったメディア戦略を強化することで、熱心な視聴者とつながれることを実証したのです。
Moët & Chandon のカレン・ヴァレセラ氏(digital marketing and communications director)は「YouTube CTV 広告の拡大(英語)は、広告のメッセージと動画フォーマットがいかに本質的に結びついているかを示しています。動画尺にかかわらず、YouTube はあらゆるニーズを満たす幅広い可能性を提供してくれます」と話しました。この成果を受けて同社は、CTV をより広いブランド戦略にも組み込んでいます。
Nissan USA は電気自動車を盛り上げるために 4 時間のローファイ動画に挑戦し、Les Mills は短尺動画でアプリの登録数を伸ばしました。Moët & Chandon はブランド好感度を高めるために多様な動画フォーマットを活用し、最終的に CTV への配信で大きな成果を上げました。
これらのキャンペーンからわかるとおり、YouTube における動画や広告の多様なフォーマットを活用することで、ブランドのストーリーを伝え、適切なタイミング、場所、方法で、広く視聴者へメッセージを届けることができるのです。