YouTube は、リーチや認知を高めるだけではなく、人々の商品購入そのものにも大きな影響を与える存在になっています。Google と Talk Shoppe の調査では 71% が「YouTube の影響で、もともと買う予定のなかったものを買ったことがある」と回答しており、「YouTube は最終的な買い物の決断の、自信を与えてくれる」と答えた人も 76% となっています(*1)。
これはオンラインに限った話ではありません。これまで、比較的デジタル広告の効果が現れにくいとされてきた「実店舗における売り上げ増加」に寄与するケースも増えてきています。
この記事では、2022 年 10 月 27 日に Google が開催したマーケターのための YouTube の祭典「Brandcast」の発表内容から、YouTube 広告を活用して売り上げを伸ばした 2 社を紹介します。売り上げのほとんどを実店舗が占めている企業の事例として、森永製菓株式会社と株式会社セブン‐イレブン・ジャパンの取り組みをご覧ください。
森永製菓「inゼリー」は YouTube 広告で店舗での売り上げ 2 ケタ増
森永製菓の「inゼリー」は、EC と実店舗の両方で販売していますが、売り上げが多いのは、コンビニやスーパー、ドラッグストアなどの実店舗です。
店頭で手に取って購入してもらうにはまず幅広い認知が必要だと考えた同社は、テレビを中心としたマスメディアを戦略的に活用してきました。それと同時に、テレビ離れの若年層など、テレビだけでは商品メッセージを届けられない層に向けてデジタル媒体への出稿も積極的に推進。特に、以前の検証でブランドリフトが高かった YouTube への出稿に注力しています。
しかし、限りある広告費を効率的に活用していることを実証するためには、ブランドリフトだけではなく、その先にある売り上げへの貢献を明らかにすることが重要でした。YouTube への出稿が売り上げにどの程度貢献しているのかを可視化しようと考えた同社は、Google と共同でそのリフトを検証しました。
主に受験生に向けたキャンペーンにおいて、全国各地区を、テレビ CM のみの「コントロールグループ」と、テレビ CM に加えて YouTube 広告も配信した「テストグループ」に分け、両者の売り上げに差が出るかを統計的に分析しました。グループの設計にあたっては、キャンペーン以前の POS データを分析し、日別の売り上げの動きが限りなく同じになるように設計しています。なお、今回は将来的な投資を見据えてのトライアルだったため、テレビと YouTube の予算配分は、10:1と、YouTube への出稿は限定的でした。
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その結果、キャンペーンの主な対象である 10 代と、30 代から 50 代の親世代において、テストグループではコントロールグループに比べて、売り上げが 13%、販売個数が 15% 増加しました。また検証した実店舗データから、チャネル構成比なども考慮して推計した結果、YouTube 出稿金額の費用対効果(ROAS)はおよそ 650% でした。
森永製菓の松永秀樹氏(取締役 上席執行役員マーケティング本部長)は「今回の検証で YouTube が認知だけでなく売り上げにつなげられることを具体的な数字で示せたことは、我々にとっても大きな発見でした」と話します。
なお、テレビと YouTube の重複リーチが 4.7% と極めて少ないことがわかったことも発見でした。重複が限られた中でも売り上げの増分が見られたため、森永製菓としてはさらに重複を広げることで、より売り上げの拡大につなげられる可能性が高いと考えています。売り上げを最大化できる最適なメディアプランを模索しつつ、他ブランドへの展開も検討しています。
セブン-イレブン「ななチキ」はアプリの購買データを広告配信に活用、精度の高い見込み顧客に広くアプローチ
国内で約 2 万 1,000 店舗を展開しているセブン-イレブン・ジャパンでも、店頭での売り上げ増加を目指して、YouTube 広告を活用した試験的な取り組みを実施しました。対象は、2022 年 7 月に発売したレジ前惣菜の「ななチキレッド」の発売キャンペーンです。
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上で紹介した森永製菓と同様、全国の都道府県を、テレビ CM のみの「コントロールグループ」と、テレビ CM に加えて YouTube 広告も配信した「テストグループ」に分け、売り上げのリフトを検証。
試験的な取り組みのため予算は限定的でしたが、YouTube 広告を配信したテストグループでは「ななチキ」の売り上げが 3% 増加、ROAS は 182% を達成と、同社の想定を上回る結果でした。
これに加えてセブン-イレブン・ジャパンでは、ファーストパーティデータと組み合わせて YouTube 広告を配信することで、さらなる売り上げへの貢献を可視化しようと試みました。同商品で、会員数約 1,800 万人を有する「セブン-イレブンアプリ」のデータを用いて検証を行ったのです。
同社ではユーザーのプライバシーの保護に配慮しながら分析できる Google の「Ads Data Hub (ADH)」を用いて、ID-POS データ(顧客 ID と紐付いた購買データ) と Google 広告のアカウントを連携し、顧客の購買データに基づいたデジタル広告を配信できる基盤を整えています。
今回は「ザクザク食感の衣と唐辛子、ガーリックでやみつきになる辛さが美味しいフライドチキン」という商品特性を踏まえて、過去に「レジ横のホットスナックを購入した人」と、「蒙古タンメン中本の即席麺を購入した人」のセグメントを作成。ADH にセブン-イレブンアプリの購買履歴を接続して、これらのセグメントに向けて YouTube 広告を配信しました。
YouTube 広告の接触者と非接触者の購入率を比較したところ、揚げ物の購入経験者では 17% 増、蒙古タンメン中本の即席麺購入経験者では 19% 増を記録しました。またそれらの顧客にアプリ内でバナー広告を配信したところ、非配信者と比較して購入率が 61% 上昇。さらに 20 円引きのクーポン配布を行ったところ、購入率が 235% 増加しました。
ファーストパーティデータと、リーチ力のある YouTube を掛け合わせることで、このような規模感を持った広告配信を実現できたのです。
同社の杉浦克樹氏(商品本部 リテールメディア推進部 総括マネジャー)も手応えをつかんでおり、「自社アプリの購買データを YouTube 広告の配信に活用することで、より精度の高い見込み顧客に規模感を持ってアプローチでき、売り上げの伸びを実証できました」と話します。
今回紹介した事例のように、消費財や小売といった実店舗での売り上げを重視する業界においても YouTube 広告の効果が実証されており、採用例も増えてきています。新たな顧客層を開拓し、売り上げを拡大するための方法として、ぜひ参考にしてみてください。
2022 年 10 月の Brandcast で発表した YouTube に関する最新のユーザー動向や事例は以下のページにまとめています。合わせてご確認ください。