制約があるからこそ、さらなるクリエイティブティが発揮されます。だからこそ、6 秒という新たなキャンバスで、斬新なクリエイティブが次々と生み出されているのです。ここでは、Google のクリエイティブ ディレクター Ben Jones による、バンパー広告のクリエイティブにおける 4 つのポイントをご紹介します。
バンパー広告が YouTube に登場した 2016 年、当時のクリエイターたちの反応は、好意的なものばかりではありませんでした。従来の米国での動画広告の標準的な長さはテレビ CM 同様に 30 秒、その短縮版が 15 秒でした。 それにもかからず、6 秒でいったい何を伝えられると言うのでしょう?
しかし私は、その後 1 年間で何百ものバンパー広告を目の当たりにするうちに、クリエイターたちがその 6 秒という制約を逆手に取って、効果的なクリエイティブを創り出した成功例を数多く見ることになりました。 実に、バンパー広告は、これまでになかった方法でメッセージを伝えることのできる新たな挑戦の舞台となり、今では十分に活用されているのです。
ただし、新しいフィールドにおいては、まだまだ成功の秘訣というものが確立しているわけではありません。 そこで今回は、実績に裏付けられたバンパー広告から分析した、クリエイティブにおける 4 つのポイントをご紹介します。
1. シンプルな目的に集中する
マーケターもクリエイターも、広告の中にはたくさんの要素を詰め込みがちです。 慣れ親しんだ 30 秒や 15 秒なら、ちょっとしたストーリーに加え、商品情報やお買得情報などを盛り込むことが可能ですが、6 秒の場合は状況が異なります。 情報を詰め込まず、目的をひとつに定めしっかり伝えるようにしましょう。
バンパー広告は、特にモバイル端末に配信されやすいフォーマットです。パソコンと比較して短時間で情報収集を行なっている生活者に対して、受け入れられやすいメッセージとはどのようなものでしょうか。 そうです、たったひとつのシンプルな目的に落とし込むことが非常に重要なのです。 そして、シンプルな目的に集中することで、メッセージの質も向上するのです。
伝えるポイントは、商品の特徴でもブランドロゴでも商品の価格でも、何でもよいのです。 ポイントを 1 つだけ絞れば、クリエイティブに必要な要素もおのずと絞り込まれます。
2. 時間配分を意識する
広告が表示される状況をよく考えましょう。生活者は見たい動画を選択して、それが再生されるのを待っているところです。 このタイミングで差し込まれる広告を受け入れてもらうには、生活者が予期していないものに出会った時に気持ちを切り替える「一瞬の間」を考慮することが必要です。 私が目にした効果的なバンパー広告の多くは、最初に印象的なビジュアルを打ち出し、それを軸にメッセージを展開していました。 まずはじめにひとつのテーマや視覚的なメッセージを表示するのも、これから数秒間ブランドの世界観が展開されるのだと生活者に伝えるために効果的です。 そして冒頭には要素を詰め込みがちですが、生活者の混乱を防ぐためにも、シンプルにすべきです。
さらに、効果的な広告に共通する特徴として、動画の最後に明確なメッセージや行動を促すフレーズを提示して、生活者が内容を理解する時間を確保していることが挙げられます。 こうした時間は、コンマ数秒では足りないことが多く、2 秒程度が目安です。
特に、長い動画から短縮版をつくる場合、最後に複数の要素を盛り込みがちですが、メッセージはできるだけシンプルする方が効果的です。
3. テレビ CM など既存のフォーマットから応用する
バンパー広告を制作する際、テレビ CM の 30 秒や 15 秒動画広告を活用することが有効ですが、ただ単純に短縮版にするだけでは 6 秒動画で効果を発揮できるとは言い切れません。各シーンの長さやストーリー展開など、いくつもの要素を見直さなくてはなりません。 まずは動画全体を冷静に分析し、6 秒間を効果的に構成するために本当に必要なのはどの要素なのか、よく考えましょう。
また、バンパー広告に応用できる素材は、なにも動画だけではありません。 新聞広告、雑誌広告、そして屋外広告なども、要素を分解して 1 秒ごとの静止画として 6 秒間を構成することができれば、バンパー広告のフォーマットになり得るのです。さらに、ナレーションとジングルで構成されたラジオ広告も、ブランドロゴや商品カットなどのイメージビジュアルさえあれば、バンパー広告になります。 バンパー広告を制作する目的によっては、こうした発想で生み出されるクリエイティブも、長尺動画の編集版と同様に十分に効果を発揮するのです。
4. シリーズ化する
複数のバンパー広告を組み合わせ、さまざまな切り口からメッセージを伝え、大きなストーリーを作り上げることを意識しましょう。 これまで多くの動画広告を目にしてきましたが、複数の動画広告素材によって、あるコンセプトやメッセージをさまざまな切り口から伝えられると、特に効果的のようです。
バンパー広告を、3~5 パターンの動画広告を 1 セットとして運用するタイプのキャンペーンであると意識してみると、それぞれのバンパー広告ごとにテーマを絞りやすくなり、それぞれに対する目的もシンプルかつ明確にすることができます。 例えば、複数のバンパー広告に共通するパターンがあれば、生活者をよりすばやくブランドの世界に導き、効果的に気持ちをつかむことができます。 つまり、シリーズに共通するパターンを生活者に認識してもらえれば、バリエーションもより理解されやすく、またそれぞれの動画を新鮮に感じてもらうことも可能です。
シリーズとしての構成を意識することで、どのような要素でインパクトを与えることができるのか、より広い視野で考えることができるのです。 そして、複数のバンパー広告を組み合わせてもいいですし、さらにディスプレイ広告や TrueView など他の広告フォーマットと連動させることで、バンパー広告の世界観を広げし、さらなる効果を獲得することもできるのです。
バンパー広告と事例とその効果的な運用については、こちらをご覧ください。