オンライン動画配信プラットフォームの利用は、幅広い世代で当たり前になりつつあります。
2020 年以降、人々の生活が変わり在宅時間が増えたことや、コンテンツがさらに充実してきたこともあり、YouTube の月間利用者数は大きく増加。2021 年 5 月時点では日本で月間 6,900 万人が利用しています(*1)。視聴態度も変化しており、これまでのようなスマホやタブレットなどパーソナルデバイスでの個人視聴に加え、自宅のテレビ画面で家族やパートナーと一緒に動画を楽しむ人も増えています(*2)。
YouTube の視聴というと、これまで若年層が中心というイメージも強かったかもしれませんが、もはや世代を問わないプラットフォームになっています。
実際、それはデータにも表れています。
動画サービスは、幅広い視聴者層に支えられる時代に
Nielsen DCR Monthly Total レポート(*3)によると、日本における 45 歳〜 64 歳の 2,500 万人以上が YouTube を視聴していることがわかりました。これはこの世代人口の 75% にあたる数字です。
また動画視聴者へのアンケート調査(*4)では、YouTube での動画視聴がきっかけとなり、その後の行動が喚起されている例も見られました。
たとえば「あなたが興味や関心のある事柄を、YouTubeで調べたり視聴したりしているうちに、それに関連したモノを買ったり場所に訪れたり、行動に移した経験はありますか」という質問に対する 40 〜 60 代の YouTube 視聴者の回答は、次のようなものでした。
- 「居住地近辺のラーメン屋さんを探して行きたいお店を発見し、実際に訪れて食べファンになり、行きつけのお店が増えた」(40 代女性)
- 「キャンプ道具の動画を見て、気になった道具を探して実際に購入した」(40 代男性)
- 「お花が好きで育て方など参考にさせていただいてます。調べものは本ではなく、YouTubeの時代ですね!」(50 代女性)
- 「関心のあったエリアの動画を見て、想像以上に興味を惹かれ、実際に訪問した」(50 代男性 )
- 「日本酒の紹介でほしいと感じ、そのお酒を購入した!」(50 代男性 )
- 「農業機械のメンテナンスの仕方を知ることができた。自分でできた」(60 〜 65 歳男性)
- 「釣り人のユーチュバーの画像を見ていて実際に使っている釣竿とリールを買った」(60 〜 65 歳男性)
- 「好きなアーティストのYouTubeを見ているうちに他の曲も好きになり、CDやDVDを購入した」(60 〜 65 歳女性)
- 「料理のレシピを見て実際に何度も作った。 ダイエット動画を見ながら毎日やっている」(60 〜 65 歳女性)
テレビ CM と YouTube 広告を活用した「なんぼや」はどのように認知度を上げたのか
YouTube 広告を活用して、若年層以外へのアプローチを実現した企業もあります。
今回は、バリュエンスジャパン株式会社が運営する、ブランド品や貴金属などの買取販売店「なんぼや」の事例を紹介します。
なんぼやでは、2021 年 3 月に実施した調査で認知度が 5.8% と 、今後の成長を考えたときに、業界内での認知度の低さが大きなボトルネックとなっていました。そのため同社は、認知度向上のためにテレビ CM を初めて実施することを決めたのです。
一方で、テレビ CM はマスへのリーチに効果的ではあるものの、テレビ を見ない人も一定数存在します。また CM の接触回数をコントロールできず、非効率なコストが発生しがちという問題意識もありました。
そこで、若年層以外の視聴も増えている YouTube 広告の配信を決定。ブランディング施策として、テレビ CM に加えて F2(35 歳〜 49 歳女性)、F3 層(50 歳以上女性)に向けて YouTube 広告を出稿しました。
テレビ CM の放映期間は 2021 年 4 月 9 日〜 5 月 9 日。同時期に YouTube 広告ではフォーマットを分けて、バンパー広告(4 月 9 日〜 4 月 24 日)と動画アクション キャンペーン(4 月 9 日〜 5 月 4 日)をほぼ半分ずつの予算配分で配信しました。
また YouTube 広告のクリエイティブには、テレビ CM の動画素材をそのまま使用するのではなくYouTube 用に編集。6 秒のバンパー広告 3 種と、動画アクション キャンペーン 2 種を制作し、配信したのです。
バンパー広告の動画はこちら
動画アクション キャンペーンの動画はこちら
その後、広告効果を計測。テレビ CM と YouTube 広告を合わせた成果として、2021 年 3 月の調査で 5.8% だった認知度は、施策後の調査では 11.3% に上昇。検索数は 45% 増となりました。
YouTube 広告の貢献に焦点を当てると、より効率的に、こうした結果につながっていることが分かります。
クロスメディアユニークリーチレポートで、F2 〜 F3 層へのユニークリーチ単価を見ると、テレビ CM が 14 円、YouTube 広告は 2 円と、効率よくリーチできています。 そのなかでも 55 歳〜 64 歳女性での結果は、テレビが 42 円、YouTube 広告は 12 円と、YouTube 広告の方が 3.5 倍効率がよかった、という結果でした。またF2 〜 F3 層の YouTube 広告接触者の検索のアップリフトは非接触者に比べて +328% を記録。クロスメディア検索リフトレポートで YouTube 広告とテレビの検索増分を確認すると、検索創出のコストはテレビの 2 倍の効率でした(*5)。
今回のキャンペーンを担当したバリュエンスジャパンの中村大亮氏(執行役員 マーケティング本部長)はこう話します。
「これまでは顕在層に対するオンライン広告が中心でした。今回初めて潜在層に対する認知にフォーカスをしたキャンペーンを実施しましたが、オフラインはさることながらオンラインも一定効果をあげたことについては手応えを感じており、マーケティング本部として引き出しが増えたことを実感しています」
今回紹介した事例やデータを見ると、YouTube 広告はもはや若年層に限らず、中高年層も含めた幅広い世代の態度変容を促せることがわかります。
クロスメディアユニークリーチレポートやクロスメディア検索リフトレポートといった、広告出稿に付帯する無料の Google の分析ツールを使えば、テレビと YouTube 双方の結果を振り返り、投資の見直しやメッセージの変更など、次の施策に反映していくことも可能です。
なんぼやの事例などを参考にしながら、適切なメディアプランニングや、広告を届けたい層に合わせたクリエイティブの開発によって、マーケティング課題の解決に役立ててもらえたらうれしく思います。
Contributor:
アカウントマネージャー 村瀬 太一 / アナリティカルリード 岩城 法子 / コンシューマー&マーケットインサイト・マーケティング リサーチ マネージャー 朴 ヨンテ