US 版 Think with Google が 2023 年3 月に公開した記事を基に日本語に翻訳し、編集しました。
広告と言われて人々が真っ先に思い浮かべるのは、そのクリエイティブでしょう。記憶に残るような脚本には、人を笑わせたり泣かせたりする力があります。キャットフードブランドであるSheba による、朝方など猫に起こされて寝不足になりがちな飼い主に向けたキャンペーン(英語)のように、眠りを誘う力を持つものさえあるのです。
こうした力を持っているクリエイティブは、広告の重要な柱です。調査によるとクリエイティブの良し悪しが投資対効果(ROI)のおよそ 50% を占めています(英語)。しかし広告主によっては、ベストプラクティスの実践や AI を採用したツールで実現できる効率性を見落としており、クリエイティブの可能性を最大限に引き出せていない場合も多いようです。
Google の Creative Works チームでは、あらゆる規模の広告主による何千件もの YouTube 広告を見てきた中で、広告効果を損ないがちなポイントを見つけました。動画広告の効果を改善するための 3 つの観点を紹介します。
1:目的に沿った広告を制作する
効率を最優先に考えると、1 つの広告に複数の目標を設定してしまうことがあります。しかし効果的な YouTube 広告とは、核となるマーケティング目標に合わせて制作(英語)するものであり、広告に触れるまさにその人に向けて作っています。
実際にある調査では、ブランド認知、比較検討、購入意向のすべての目標に向けて同じ広告を配信しました。すると、1 つの目標に対して最大の効果を獲得したブランドであっても、その 80% 以上が他の目標に対しては同様の成果を上げられませんでした(*1)。核となる 1 つの目標に向けて広告を段階的に修正していくことでこそ、大きな成果を獲得できるのです。
どれほど効果的な動画広告であっても、すべての目標を達成することは期待できません。そのためファッションブランドの UGG は、認知のようなカスタマージャーニーの初期段階の目標に対してさまざまなパターンの広告を配信しました(英語)。その結果、6 秒の短尺広告では認知度を効率的に高め、60 秒の長尺広告では比較検討で高い効果を獲得しました。複数の広告を活用することで、目的に合わせて必要なクリエイティブの要素を調整できるのです。
2:テストの手間を惜しまない
Google 広告の「動画テスト」は、同一のオーディエンスに向けて複数の YouTube 広告をテスト、比較して、最も効果的なクリエイティブを確認できるツールです。テストには時間と費用がかかると誤解されがちですが、実際には、動画テストは YouTube の広告メニューに含まれており、わずかな最適化でも大きな利益を生み出せる可能性があります。
ファッションブランドの COACH は、新たな YouTube 戦略として「Call to Action(CTA)」ボタンを各広告に追加するテストを実施(英語)しました。これがブランドへの好意度向上と検索数の急増につながったことを確認できたため、第 2 弾のテストに追加投資。その結果、好意度、比較検討、エンゲージメントなどで高いアップリフトが見られました。
同様に、クルーズ客船運航会社の Celebrity Cruises は、メッセージがわずかに異なる 4 つの広告でテスト。明確なブランディングとボイスオーバーを取り入れたクリエイティブ(英語)は、比較検討において最高水準のアップリフトを記録しました。
テストの価値が実証されていることから、多くの広告主は広告費の一部をテスト用に確保しています。Google の自社広告などメディア戦略を担当している Media Lab チームでは、各キャンペーン予算の 20% ~ 30% をテストに当てています(英語)。
3:行動を促すために ABCD フレームワークを採用する
最近では、ブランドマーケティングの原則を反映した広告を使って、購入段階にある顧客に向けた動画戦略に舵を切る広告主が増えています。効果的な動画広告は、そのあらゆる要素が影響を与えるように構成されているものです。YouTube 広告接触後の行動を促すための「ABCD フレームワーク」は、最も説得力のある順序で素材を配置することで、その魅力を最大限に発揮させるのに役立ちます。
ABCD フレームワークを使うことで、1 ドル当たりのコンバージョン(CV)数は 50% 増加し、コンバージョン率は 40% 増加した例もあります(*2)。ベトナムのシャンプーブランドである Moc Nhu は、ABCD フレームワークに最適化した縦長動画で、顧客獲得単価を 78% 下げながら、7 倍のコンバージョン数を獲得しました(*3)。
動画 アクションキャンペーンは、長尺の動画から YouTube ショートまで、多様な視聴体験に合わせた広告クリエイティブを少なくとも 5 種類用意することで、より高い効果を発揮します。その際に、Google AI を採用したツールを活用することで、強力なクリエイティブミックスを効率的に構築できます。たとえば、入稿した画像やテキスト素材から動画クリエイティブを作成(英語)したり、新しいフォーマットに合わせるためにアセットを反転したりトリミングしたり(英語)、ボイスオーバーを追加したり(英語)など、YouTube 広告は既存のクリエイティブから新たなクリエイティブを制作するのに役立ちます。
クリエイティブは、ビジネスにとって大切な新たな視聴者を開拓し、売り上げを伸ばすために欠かせないものです。今回紹介したクリエイティブの 3 つの原則を活用することで、投資をより効果的にできるでしょう。一貫して 1 つの目標に最適化し、適切なメッセージを届け、新たな仮説を検証しながら過去の学びをもとにクリエイティブを修正していけば、YouTube 広告の可能性を最大限に引き出すことができます。