ブランド認知の向上や新規顧客の拡大は、シェアを拡げるのに効果的なマーケティング戦略です。しかし認知を上げるための広告と、顧客獲得のための広告では訴求ポイントが異なるため、別キャンペーン、別の目標として実施されることが多くなります。
この記事でご紹介する有料動画配信サービス dTV(エイベックス通信放送株式会社)では、「認知の向上」と「新規会員獲得」という 2 つの目標を同時に実現するための施策を考案。YouTube 動画広告+検索連動型広告を組み合わせたプロモーションで、ブランド認知の大幅向上に加えて、Google 広告経由新規会員の獲得数を 27% 拡大することに成功しました。
どのような施策で、どんな工夫をしたのか?成功のポイントをご紹介します。
dTV のプロモーション戦略とは?
dTV は、映画、ドラマ、アニメ、音楽ライブ映像など 12 万作品が、月額 500 円で視聴できる有料動画配信サービスです。有料動画配信サービス業界は、この数年で利用者が急速に拡大している成長市場です。
そこで、dTV ではオリジナルコンテンツを配信し、それを軸に dTV の認知を高めつつ新規会員の獲得を効率的に行う、費用対効果の高いマーケティング手法を探していました。
施策の内容と、工夫したことは?
プロモーションの対象は dTV オリジナルコンテンツ「彼氏をローンで買いました」。その第 1 話を YouTube で無料配信し、同時に TrueView 広告でその魅力を伝えながら第 1 話の視聴者を増やし、ブランド認知も高めていきました。
・TrueView 広告の工夫:オーディエンス ターゲティングを活用
年代・性別・興味関心(例:映画ファン・テレビドラマファン・恋愛映画、ドラマ映画ファンなど)で配信対象を絞り込み、最適単価で最大視聴数を集める
「彼氏をローンで買いました」第 1 話の YouTube 配信
次のステップとして、「彼氏をローンで買いました」第 1 話の視聴者から検索広告向けリマーケティング リストを作成。視聴者と、非視聴者のグループを作成し、それぞれに検索連動型広告を配信、効果を比較しました。
・検索連動型広告の工夫:検索広告向けリマーケティング リストの活用
一話目を観た視聴者リスト(検索広告向けリマーケティング リスト)と、非視聴者リストそれぞれに同じ設定キーワード(キャスト名、動画タイトルなど)を配信
検索連動型広告:配信例
ブランド認知と新規会員獲得、どのような効果があったのか?
ブランド認知の変化は、Google の「ブランド効果測定(広告を見た人 vs 見なかった人を比較)」を使って計測しました。結果は下記のとおり、広告を見たグループには大きなブランド認知向上が起こっていました。
ブランド効果測定の結果
検索連動型広告からの新規会員獲得数はどうだったのでしょうか?
一話目を観た視聴者グループと、非視聴者グループからの獲得数を比較しました。こちらも有意な成果が確認できます。
新規会員獲得数比較
結果への考察
本事例の注目ポイントの1つは、「ブランド名: dTV 」ではなく「コンテンツ名:彼氏をローンで買いました」を主軸にした認知向上戦略にしたことです。顧客が有料動画配信サービスに求めるのは、魅力的な動画コンテンツ。「 dTV でしか観られない魅力的な動画」を YouTube で広めたうえで、検索連動型広告で興味を持った人に関連性の高いメッセージを伝えていく。この組み合わせが獲得数:+27%、さらに獲得単価:-26% という効率的成果につながったと考えられます。
もう 1 つのポイントは、連続ドラマの 1 話目だけを無料にしてプロモーションしたことです。1 話目を観た人は 2 話目が気になります。出演者や作品の評価などに関心がでる人もいるでしょう。そこで、「彼氏をローンで買いました 2 話」「キャスト」「監督名」などで検索する人に検索広告でメッセージを届けたわけです。同じキーワード検索者でも、1 話目を視聴した人の方が非視聴者より +27% 多く会員登録したということを踏まえると、視聴者の興味関心が高いところにしっかりと広告メッセージが届くと大きな成果につながるということです。
今後に向けて
今回のようなオリジナル作品は、0 からの認知を如何に高めるかの比重が大きいと同時にその認知を如何に無駄なく獲得に繋げられるかが重要でした。
そこで、Google 様からご提案頂いたのが You Tube 上での動画視聴ユーザーをリスト化してもらい、GDN/リスティング広告に反映させることで、Google プロダクト内での一気通貫での認知向上・会員獲得ができないかということでした。結果的に想像以上の成果が数値として現れ、改めて動画広告との相性の良さを実感できました。
また、今回の取り組みを通じて単純にリスト化からの検索広告連動だけではなく、様々な工夫の余地がある事もわかりました。今後は、別のコンテンツにおいても今回の取り組みをベースに更なる工夫をして成功パターンを増やしていきたいです。また、さらなる動画広告の活用という意味では、Google の新サービス TrueView アクション( YouTube 動画から直接会員登録を促進できる広告)を使って動画から直接新規獲得する、という手法も試してみたいと考えています。
エイベックス通信放送株式会社 コミュニケーションプロデュースグループ
池田純貴氏