日本において、YouTube を、インターネットにつながるコネクテッドテレビ(CTV)で視聴している人は 3,500 万人以上です(*1)。
かつては、スマートフォンや PC での視聴が主流だったものの、近年ではテレビで視聴するスタイルが定着しています。テレビでは、大画面で見られる、家族や友人と一緒に見やすい(共視聴)といったテレビデバイスならではの特徴があります。
そんな “ テレビで YouTube ” の視聴実態や、YouTube 広告をテレビデバイスへ配信する際のポイントを、4 つの記事で解説します。
1:今、テレビでの視聴が浸透している —— YouTube で、テレビはより「能動的な視聴」へ
2023 年 2 月の調査によると、スマートテレビ(CTV の一種、インターネットへの接続機能を備えたテレビ受像機)におけるテレビ放送と配信の総視聴時間は、2016 年以降横ばいが続いています(*2)。
背景にはビデオオンデマンド(VOD)視聴の浸透があると考えられます。VOD の例として YouTube を見ると、民放地上波のキー 4 局平均よりも 72% 長く視聴されていたことが、同様の調査から明らかになったのです。
このような VOD 視聴の盛り上がりと共に、従来とは異なる新しいテレビの楽しみ方やニーズが生まれていることも、YouTube に関する調査から見えてきました。それをまとめたのが下図です。
従来のテレビは「見て楽しむ」という受動的なニーズに応える媒体でしたが、CTV での視聴ではさらに「使って役立てる」という能動的な視聴態度も生まれています。Google が実施したユーザーインタビュー(*3)によると、「気になる情報を詳しく知りたい」「アクティビティのお手本が見たい」「思い出を振り返りたい」という 3 つのインサイトがあるようです。
記事では、実際のユーザーインタビューでの声などを取り上げ、テレビ視聴に関する新たなニーズを詳しく解説しています。
2:4 つのクリエイティブでコネクテッドテレビでの認知効果を検証——ベネッセと探る「ABCD フレームワーク」
CTV の浸透を背景に、YouTube 広告の配信面も、モバイルや PC だけではなく、CTV へと広がっていきました。記事では、YouTube コネクテッドテレビ広告(YouTube CTV 広告)で効果的なクリエイティブのヒントを、ベネッセの事例から探りました。
ベネッセが、YouTube CTV 広告の制作にあたって参考にしたのが、Google が以前から推奨してきた「ABCD フレームワーク」です。
- Attention:視聴者の関心を引き込む
- Branding:視聴者にブランドを認知してもらう
- Connection:ブランドストーリーと視聴者の感情を結びつける
- Direction:ブランドが望むアクションを視聴者に対して明確に提示する
ABCD フレームワーク自体は主にモバイルへの配信を前提としたものでしたが、これがテレビ画面でも有効なのかを検証しました。
検証で用意したのは次の 4 つの素材です。素材 1 はテレビ CMと同じ素材で、2 〜 4 は 1 に ABCD フレームワークを適用したものです。
- 素材 1:テレビ CM 素材を流用
- 素材 2:右上にロゴ表示、字幕を大きくして画面の明度を上げるなど視認性を強化
- 素材 3:逆 L 字型のバナーを追加して Direction(アクション提示)を強化
- 素材 4:冒頭にオファーを追加して Attention を強化
素材 1 を基準として 2 〜 4 の「ブランド認知」を比較したところ、素材 2、4 で有意なアップリフトを確認できました。特に 2 は効果的だったことから、「字幕を大きく表示する」「画面の明度を上げる」など小さなモバイル画面での視聴を意識した手法は、結果として、テレビ画面における動画の視認性を上げることにつながります。それが 4K テレビなどより高画質な画面での視聴体験が増えている中で、効果的に機能しているのかもしれません。
記事では実際の広告クリエイティブと共に詳しく分析しています。
3:「共視聴」「視聴時間の長さ」などテレビ画面の特徴を生かした YouTube コネクテッドテレビ広告 3 選——丸亀製麺、コーセー、NTTソルマーレ
YouTube CTV 広告のクリエイティブ制作や設計においては、CTV ならではの特徴を押さえておくことも重要です。PC やモバイル向けの YouTube 広告やテレビ CM とは異なる点を理解することで、効果を高められます。
たとえば CTV での YouTube 視聴は、他デバイスと比べて視聴時間が長いという特徴がありますが、これを広告に活かしたのが株式会社コーセーです。
2021 年における夏場前の定番商品の広告キャンペーンにおいて、30 秒という長尺の YouTube CTV 広告で、認知だけではなく興味関心や比較検討まで後押しできる広告を目指しました。
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YouTube 広告予算の 20% 以上を CTV に配分し、テレビ CM を出稿しない代わりに、その分のリーチ規模を確保しながら、30 秒のきれいなクリエイティブを大きな画面と音声ありの環境で見てもらおうと試みました。
クリエイティブ内では、「一品五役」「ひんやり気持ちいい」「13 時間化粧持ち」という 3 つの USP(Unique Selling Point、機能価値)を採用。認知を目的としたテレビ CM や、SNS 広告などの短尺広告の場合、機能価値を絞って伝えることも多いですが、ほかデバイスよりも比較的長い視聴時間が期待できる CTV への広告ということで、あえて 3 つすべての USP を訴求しました。
キャンペーン当時はコロナ禍で外出機会が減少し、化粧品の訴求が厳しい環境下でしたが、ブランドリフト調査では認知のアップリフトを確認。広告の完全視聴率や完全視聴単価などの目標も上回るなど成功を収めました。
記事ではこの他、CTV の特徴である共視聴を活かして親子へリーチした株式会社丸亀製麺や、YouTube というプラットフォームとの親和性を考慮した NTTソルマーレ株式会社の事例も取り上げています。
4:テレビ向け YouTube 広告の事例 —— 個別指導のトライとブリヂストンの挑戦、CPA の改善など
最後に紹介するのは、「家庭教師のトライ」を運営する株式会社トライグループと、タイヤブランドの株式会社ブリヂストンによる最新事例です。
トライグループが CTV に着目したのは、「潜在顧客へのリーチ」と「共視聴」の 2 つの観点から。子供の教育に関心があり、トライグループにとって重要な顧客層である父母層にリーチでき、さらには親子での共視聴も期待できると考えました。
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Google のブランド効果測定で「比較検討」と、サーチリフト調査で「検索リフト」を測定したところ、比較検討の数値は 10.6% のリフトを確認。検索リフトも 243% 増加しました。また YouTube CTV 広告を配信したエリアの CPA は、配信していないエリアと比べて 18.3% 削減と効率性の面でも効果を確認できたのです。
もう 1 つの例として取り上げているブリヂストンは、テレビ CM と YouTube CTV 広告の効果を比較検証しました。すると、同じテレビ画面へ同じクリエイティブを配信したにもかかわらず、YouTube CTV 広告がより認知のアップリフトにつながることがわかりました。
その理由をテレビ視聴の分析サービスを提供する REVISIO株式会社の「視聴質調査」でさらに詳しく検証したところ、YouTube CTV 広告はテレビ CM よりも注視されており、それが広告認知の差にもつながっていることが推察できることがわかりました。
記事では、各社の事例や効果検証の紹介を解説しています。
以上、YouTube CTV 広告のトレンドや事例を紹介しました。CTV の特性や生活者の視聴動向をよく理解して、新たな配信面へトライしてみてください。
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