YouTube 動画広告の新しいフォーマット、6 秒動画のバンパー広告。モバイルユーザーへのリーチを最大化し、効果的に広告メッセージを届けるように設計されたこのフォーマットは、日本でも急速に活用が進んでいます。
2018年5月に開催されたアドバタイジングウィーク・アジアの Google セッションでは、テレビ CM から デジタルまで、広告制作全般に渡って前線で活躍しているクリエイター 3 名が、これまでの経験をもとに広告キャンペーンにおけるバンパー広告の制作および活用方法を解剖し、そのエッセンスを紹介しました。
クリエイターとしておさえておきたい
YouTube の魅力と特徴
バンパー広告について詳しく説明する前に、私たちが感じる YouTube 広告そのものの魅力を再確認しておきます。まず、ビューアビリティが 95% (*1)と高く、「見られてなんぼ」を体現しているプラットフォームならではの表現が追求できること。そして、オーディビリティが 95%(*2) と、音声をオンにして視聴されることが多いために、音声も活かせること。最後に、視聴の 7 割がスマートフォン(*3)であることから、生活者のメディア接触環境に密着しているという 3 点が特徴です。
6 秒という長さこそが重要
動画広告の方法論や作り方がさまざまに論じられていますが、「広告表現と広告プラットフォームという複眼的な視点から考えることが 2018 年的」だと認識しています。まずは、バンパー広告の仕組みについて知ることが大切です。
3 人のクリエイターが考えるバンパー広告の作り方
皆川 壮一郎氏: 嫌われ者を、人気者に。
1. 嫌われない広告枠:バンパー広告
そもそも広告は嫌われ者であることを前提にすると、バンパー広告は最適なフォーマットではないでしょうか? 実は、6 秒までというバンパー広告の背景は、動画を楽しむ視聴者が広告を受け入れやすい「長さ」だからだそうです。クリエイターとしては、その特徴を活かしつつ、視聴者に好まれる広告を制作できる可能性が高いフォーマットだと言えます。
2. 嫌われないキャスティング
嫌われている広告を通して生活者の時間にお邪魔するわけなので、「この人だったら見てくれる」という好感度の高いタレントをキャスティングすることも重要です。「知っている人だ!」というスピード感だけでなく、これまでに見たことのない新鮮な組み合わせも意識することで、さらに視聴者の心をつかむキャスティングになります。
3. 嫌われないタイミング
YouTube は、曜日や時間帯を指定して広告配信することが可能です。視聴者に嫌われない時間帯を選び、同じ動画クリエイティブのフォーマットで、曜日ごとに異なるメッセージを繰り返し配信することで、視聴者に好かれる可能性を高めることができます。
中村 洋基氏: 動画広告のアジャイル開発
従来の広告制作では、広告主に事前にプランを提示し、「この内容で撮影します。撮影後は変更できません」と確認を取ってから制作するウォーターフォール型が一般的でした。
しかし、6 秒でインパクトのある動画広告を開発する場合、「まず撮影してみて、よかったら採用する」というアジャイル型が向いていると考えます。たとえば、マッハバイトの事例では、 基本のフォーマットを踏襲しながら、6 秒という限られた時間の中で、1 発ネタとも言えるアイデアによってサービスの特性をストレートに伝える動画を複数展開しました。特に、ブランドの純粋想起がコンバージョンにつながるサービスでは、このようなアプローチが有効になります。
アジャイル型での動画広告の開発にあたっては、戦略は広告主の意志決定者とすり合わせつつ、面白さについてはクリエイターに一任してもらうことが望ましいです。初めから「臨機応変に変えていきましょう」という合意の下で開発を進めていくことで、「実際に制作してみたら、こちらのほうが面白かった」、「思いつたので、これもやってみたい」というようなアイデアが出てきます。これはある種のセレンディビリティとも言えるもので、左脳的にコンテに表現しきれないクリエイティブを生み出すことができます。
開発したクリエイティブは、表現を客観的に分析し、クレーム等を防ぐための検証プロセスも入れるとよいでしょう。6 秒というバンパー広告の時間を活かすためにも、制作手法を考えることが新たなクリエイティブにつながっていきます。
柴田 愛氏: グラフィックを作る気分で
バンパー広告は新しい広告フォーマットですが、あえてオーソドックスな思考で整理するとうまくいくのではないでしょうか。具体的には、 6 秒という短い動画の情報整理の中で、キャッチーな言葉を最初に提示し、ロゴと最後のメッセージをタグラインとして位置づけ、 1 ビジュアルで展開する。それを視聴者に飽きさせないようにたくさん作るというアプローチが有効だと思います。グラフィック広告を作成するような、一見すると逆転の発想のアプローチも効果的だと考えます。
また、YouTube のターゲティング機能や特定の視聴グループに配信する設定を活用することで、動画広告の「ストーリーテリング」も可能になります。あるバンパー広告を見た人だけに、さらに別のバンパー広告を配信することで、6 秒という短い時間でもストーリー性を持たせることができるのです。また、バンパー広告を見た人に向けて、長尺のTrueViewを配信することで総集編を楽しんでもらうなど、配信を丁寧に設計することで、新たなストーリーテリングの手法が期待できます。配信設定はメディアプランナーの判断だと思われるかもしれませんが、クリエイターにとっても大切な視点になります。
Video Ads Sequencing についてはこちら
まとめ
広告キャンペーン全体を考慮した場合、バンパー広告だけに限定せず、他の広告フォーマットとどう組み合わせ、キャンペーン全体の価値を高めることができるかが重要になります。その前提でバンパー広告を考えると、無限の可能性を秘めていると言ってもいいでしょう。「 6 秒に限定した動画広告を作るべき」と固定的に捉えてしまうと、アイデアが停止しがちですが、作り方を見直す、配信ターゲティングを踏まえて企画する、など柔軟に考えることで、多様なアプローチが可能になります。今後もさまざまに発想のチャレンジを続け、ブランドと視聴者双方にとって、もっともいい形でメッセージを届けていきます。
*初出時に掲載していた各動画は現在、表示期限が過ぎているため掲載を取りやめています。