モバイル端末、動画コンテンツ、プログラマティック広告。いずれもブランディングに携わるマーケターが、関心を寄せるプラットフォームです。しかし、そこで展開されるコンテンツの制作方法については後回しにされがちです。実際にはこれが非常に重要です。Google BrandLab のグローバル ディレクターを務める Kim Larson(キム ラーソン)が、動画マーケティング戦略を改善、合理化し、コンテンツに対する消費者の飽くなき欲求を満たす秘訣をご紹介します。
Google BrandLab は、デジタルファーストなマーケティング戦略の発展と普及に取り組むチームで、その注力分野は「モバイル」「動画」「プログラマティック広告」の 3 つです。Mary Meeker の予測によれば、2017 年までにインターネットの全トラフィックの 74% を動画が占めるようになります。YouTube の総再生時間にいたっては、既に 2015 年の時点でモバイルが PC を上回り、日本では総視聴時間の65%に達しています1。今こそモバイルで注目される動画を発信していかなければなりません。
モバイル時代の到来とともに増大する動画コンテンツのニーズにどう対応すべきでしょうか。Google BrandLab には大きく分けて 2 つの質問が寄せられています。1 つは「ブランドを利用し続けてもらうには、どのような動画コンテンツを作成すべきか」という質問。もう 1 つが 「動画コンテンツを継続的に制作するノウハウとは」です。
ブランドが YouTube 動画を創るにあたって最も大切にすべきこと
まずは以下のチャートをご覧ください。
•私たちのブランドが持つもの
• 私たちのブランドと他との決定的な違い
• YouTube 上で選ばれ、見てもらえる理由
図の中に答えを入れ、円の重なりあった部分が、動画コンテンツの戦略を練る上での鍵となります。
ブランドとターゲットの共通項
ターゲットの興味関心を把握するには、そこにあるマイクロモーメント ( Micro-Moments )に着目します。マイクロモーメントとは、人々が「何かをしたい」と思い、反射的に目の前にあるデバイスで調べる・買うといった行動に出るその瞬間です。
Johnson & Johnson Consumer が、 CLEAN & CLEAR® の動画コンテンツに関する戦略を策定する際も、ターゲットのマイクロモーメントを出発点としました。「10 代の友情」を軸としてマーケティングを行っている CLEAN & CLEAR® は、対象年代の少女に調査を実施。その結果、彼女たちが動画を視聴するのは、アイデアやアドバイスがほしい、つながりたいという瞬間であることを突き止めました。そこで、自信を持つことの大切さを訴える「SEE THE REAL ME®」(本当の私を見て)シリーズを中心にYouTubeチャンネルを作成することにしました。
動画のブランデッドコンテンツを継続的に発信し続けるには
実のところ、動画に対する視聴者の飽くなき要求に応えることは困難です。携帯端末という小さなスクリーンでは尚更です。 重要になるのが、コンテンツを少しずつ増やし、手間と時間をかけた魅力的なライブラリの構築です。従来のコンテンツ制作に比べると気が遠くなりそうですが、大量のコンテンツを揃えるためには、制作過程を見直して、誰かのサポートを受けることは欠かせません。
ここで 3C 「Create(クリエイト)、Collaborate(コラボレート)、Curate(キュレート)」というコンテンツのフレームワークを考えます。この狙いは、コンテンツ制作に対するハードルを下げ、視聴者の「動画に対する果てしない欲求」に応える速度を上げること。このフレームワークのそれぞれの「C」を実際に使って制作フローを合理化し、モバイル ユーザーへのアプローチで成功をおさめた Mountain Dew® の事例もご紹介します。
Create(クリエイト)
最初の C である Create コンテンツとは、ブランドが「生みだすもの」です。各ブランドは独自の世界観を踏まえつつ洗練・発展させ、視聴者を喜ばせ、導き、新たな発見を与える物語を創り上げます。Create ではユーザーを楽しませる動画や、前述のマイクロモーメントに向けて人々が「何かをしたい」と思った瞬間のために発信する HowTo 動画などを用います。
Mountain Dew では、同ブランドの Kickstart™ を宣伝するテレビ CM「Come Alive」の番外編を YouTube で公開。CM よりも長尺かつ臨場感にあふれた内容が評判となりました。 さらに Mountain Dew は Google が実施した初のUnskippable Labs テストにも参加。ここでモバイル ユーザー向け動画の改善点を見極めて、思わず最後まで見てしまうようなコンテンツをつくりあげたのです。
Collaborate(コラボレート)
Collaborate コンテンツは、ブランドとデジタル インフルエンサー(ネットで影響力のある人々)のコラボレーションで生まれます。たとえば YouTube クリエイターのチャンネルと提携してブランドメッセージを発信します。Collaborate コンテンツの目標は、クリエイターの豊富な知識やセンスを生かすことで、ブランドと人々との親和性を深めるだけでなく、クリエイター本人のファンともよい関係を構築することです。
Mountain Dew では、YouTube のチャンネル登録者数が 300 万人を超える Devinsupertramp と連携して、#DEWroadtrip で公開しているスタント動画シリーズを制作。このシリーズは、Devin と Mountain Dew の両方のチャンネルで公開され、Devin のファンにも大人気でした。
Curate(キュレート)
最後の Curate コンテンツですが、これは視聴者がブランドからのメッセージに応え、自身で動画を作成、アップロードするというもの。ここでは動画が「ブランドがメッセージを伝えるツール」としてだけでなく、「視聴者がメッセージを発信する手段」としても活用されています。
視聴者の参加によってメッセージの信頼性は増大し、ソーシャル メディアでも拡散します。そして人々は、お気に入りのブランドともっと関わりたいと感じています。brandshare 2014 では、ブランドとリアルタイムで交流し、意見を伝えたいと感じているユーザーは 87% に上りました。このデータを参考に、 Mountain Dew では動画シリーズ「Art of Dew」 における重要なコンテンツ戦略として、ファンがつくるストーリー展開を設定したのです。
戦略を考えすぎて時間を無駄にしない
人々が オンライン 動画を当たり前のように視聴するようになったこと。それはブランドにとって、オンライン動画の活用が優先課題になっていることを意味します。2015 年 5 月に Mary Meeker が指摘したように、モバイルにおけるデータ トラフィックの半分以上は動画が占めています2人々はあらゆる瞬間に目の前にある端末に向かいます。楽しむ、学ぶ、購入する。そのためにオンライン動画 を利用します。しかし Meeker は、そうした人々の動向とは異なる場面で、広告費用が使われていると主張します。人々がコンテンツに触れる時間の約 4 分の 1 はモバイル端末によるものですが、広告費用に占めるモバイルの割合は全体の 8% にしか過ぎません2
人々はモバイルで動画を楽しんでいます。 難しく考えず、こうした3C フレームワークを活用しながら、まずは動画を制作し、効果的に活用していく方法を考えてみてはいかがでしょうか?