US 版 Think with Google が 2022 年 4 月に公開した記事を基に日本語に翻訳し、編集しました。
EC 企業は、主に利用者による購買で利益を得る一方、自社サイトやアプリの広告枠を他社に販売することで得られる収益の可能性については見過ごしがちです。しかし、ニュースやメディア、ゲーム関連企業などは、自社サイトやアプリに他社の広告を掲載し、顧客の購買体験の向上と収益源につなげています。広告の掲載をためらっている EC 企業は、こうした新たな収益源と顧客を獲得する機会を逃しているとも言えます。
アジア太平洋地域(APAC)の EC 企業が、他社の広告掲載をためらう理由としてよく挙げるのは、広告が自社のビジネスを毀損するのではないかという危惧です。広告が UI を乱し、ユーザーの閲覧や購買意欲を下げてサイトから離脱させるため、売り上げが減ると思い込んでいるのです。しかし最新の調査によると、むしろこうした誤解が、EC 企業の新たな収益機会を逃していることがわかっています。
広告掲載と EC における買い物体験の真実
Google は Kantar に調査を委託し、他社の広告掲載が EC での買い物体験に与える影響について調べました。また、アジア太平洋地域(APAC)の EC 企業が、主な販売先であるブラジルや米国の人々により良いサービスを提供する方法、さらには EC サイトが他社の広告を掲載しない場合に失う可能性についても調査しました。
生活者は購入を決めるまでに、複数の EC サイトに何度もアクセスします。Kantar の調査によると、EC 利用者の 93% が、購入までに 2 つ以上の EC サイトにアクセス。91% が、ショッピングカートに商品を入れた後、購入手続き完了前に 2 回以上そのサイト内をブラウジングしていました(*1)。EC サイトに他社の広告を掲載することで、これらの購入に至らないトラフィックを収益化できるのです。
重要なのは、他社の広告が EC 利用者のカスタマージャーニーを妨げたり、EC サイトの購入を阻害したりしないということです。EC サイトで広告が表示された人々とその対照群の人々を比較したこの調査では、広告の有無が人々の行動に影響しないことがわかりました。
ホームページと商品ページの閲覧時間は、広告が表示されたグループと対照群でほぼ同じでした。またショッピングカートへの商品の追加に関しても、2 つのグループに有意差はありませんでした。これは、広告の有無が、買い物中の行動や企業にとっての販売機会には直接的に影響しないことを意味します(*1)。
またこの調査では、広告が生活者の買い物体験を損ねたり、EC 企業との関係に悪影響を与えたりしないことも判明しました。90% 以上の人が「広告がサイト閲覧の邪魔になるほど多いとは感じなかった」と回答し、広告を見た記憶がある EC 利用者の 85% が「広告によって買い物体験は損なわれなかった」と答えました(*1)。
実際、EC 利用者は、広告が自分にとって関連性があり、有益で興味深いものであれば好意的に受け止めています。EC 利用者の 58% は「興味のある製品の広告であればクリックする」と答え、50% が「魅力的なプロモーションやオファーがあればクリックする」と答えています(*1)。これは、関連性のある広告を表示すれば、EC 企業は人々の買い物体験を向上させると同時に、収益源を拡大できる可能性があることを示しています。
EC サイトの価値を広告掲載により高める
他社の広告を掲載した EC サイトは、広告がビジネスの成長に貢献し、同時に顧客体験も向上させています。たとえば香港のクーポンサイト「HotDeals」は、サイトの広告枠を販売することで収益源を多様化させ、2021 年の広告収益を前年比で 6.1 倍増加させました。
HotDeals は、コンテンツ向け AdSense を使った興味・関心に基づくディスプレイ広告と、検索向け AdSense を使った検索広告でテストしました。その結果、訪問者が商品を探している時に、関連性の高い広告を表示できるようになりました。たとえば、訪問者がコンピュータ関連のクーポンを検索すると、その訪問者が興味を持ちそうなコンピュータ関連の検索広告を表示します。さまざまな広告フォーマットをテストした結果、HotDeals は広告掲載による収益を大幅に増加させました。検索向け AdSense の収益が、コンテンツ向け AdSense の収益を 90% 上回ったのです。
自社サイトやアプリに広告を掲載することは、EC 企業にとって新たな収入源になり得ます。こうした方法をいち早く導入した企業は、広告を掲載することでビジネスが成長し、顧客の買い物体験が向上するのを体感しています。テストと学習を通じて、広告を自社サイトやアプリにシームレスに統合していくことで、多くの EC 企業が同様の成功を収められるでしょう。
他社の広告掲載を通じて EC ビジネスの価値を最大限に引き出す方法についての詳細はこちら(英語、要登録)で説明しています。