マーケティングにおける効果測定手法の発展に伴い、長期的な顧客価値の重要性が改めて認識されています。Google のパフォーマンス広告部門のマーケティング担当ディレクター Matt Lawson が、あるべき効果測定手法のための 3 つの考え方を説明します。
デジタル マーケティングの大きなメリットはその効果を測定できることです。これまで長い間、デジタル測定は比較的わかりやすいものでしたが、モバイルの登場により状況は一変しました。現在、効果測定はかつてないほど複雑化し、示唆に富んだものとなり、重要性が増しています。というのも、モバイルの普及によってデジタルが生活の一部となり、オンラインとオフラインの垣根を越えて、店舗や商品に関する情報を手軽に入手できるようになったからです。一方、マーケティング業界はというと、モバイルによって分断された購入経路への効果を正確に測定する準備が十分に整っていません。
このモバイル ファーストの世界で成功するには、測定戦略と KPI を見直すことが重要です。ここでは、これからの時代のマーケティングに必要な 3 つの考え方をご紹介します。
「クリック」ではなく、「顧客」に注目する
クリックから生じる 1 件ごと売り上げも大切ですが、それ以上に重要なのは、「どのような顧客が購入したのか」を把握することです。
以前のように、ブランドと顧客をつなぐチャネルが 1 つだけで、購入経路が「一本道」だった時代は、測定対象を絞り込むことができました。しかし、多くの顧客が複数のデバイスを使い分けている現在、これまでと同じ指標ではマーケティング活動の真の効果を測定できません。
「これからのブランドに必要なのは、実際に試しながら改善していくアプローチです。クリックやコンバージョンをチャネル単位で捉えるのではなく、ビジネス全体の KPI に目を向けてください。」- John Grudnowski 氏(FRWD 社 CEO)
米国ミネアポリスを拠点するデジタル向け広告代理店 FRWD の CEO、John Grudnowski 氏は、「これからのブランドに必要なのは、実際に試しながら改善していくアプローチ」だと言います。「クリックやコンバージョンをチャネル単位で捉えるのではなく、ビジネス全体の KPI に目を向けてください。そうしてはじめて、ビジネスの成果をリアルタイムで大局的に捉えることができ、なおかつ、マーケティング戦略を適切なタイミングで最適化して、その効果を最大限に高めることができます。」
マーケティングの現場では、顧客の生涯価値(CLV)など、顧客中心の長期的な指標が注目されつつあります。これらの指標の重要性を認識し、効果測定に取り入れることで、マーケティング予算をより効果的に配分できるようになります。
メディア指標をビジネス成果につなげる
残念ながら、メディア指標では、ビジネス成果に対するマーケティングの直接的な貢献度、たとえば「どの程度利益が増えたか」などを知ることはできません。
この状況を何とかしようと、主要マーケターを中心に、新たな測定手法を開発し、最も影響力のあるリアルタイム指標を特定する取り組みが始まっています。
リアルタイムのメディア指標(来店数、コンバージョン単価など)をビジネス成果(CLV、利益、収益)と結びつける方法を考え、テストし、導入することで、より的確かつ迅速に意思決定を行えるようになりました。
たとえば、米国のレストランチェーン Red Lobster は、近隣店舗への集客にモバイルがどの程度貢献しているかを把握するため、モバイル キャンペーンの効果測定に代わる方法として Google の来店計測を導入しました。その結果、モバイル端末で Red Lobster の広告を見たユーザーは見なかったユーザーに比べ、その日に来店する確率が 31% 高く、翌日に来店する確率も 17% 高いことがわかりました。これは明らかに、売上に直結する指標です。
細かい最適化より、思い切った戦略
デジタル マーケターは最適化が得意ですが、効果が実証されていない戦略に優先的にリソースを投資するのは勇気がいることです。しかし、測定戦略を飛躍的に前進させるのは、こうした思い切った戦略なのです。少しずつ段階的に調整する方法では、わずかな向上しか望めません。
「テストの成功率は 10% 程度ですが、毎回必ず、何かしら得るものがあります。」- Jesse Nichols 氏(Nest 社、成長戦略責任者、ウェブおよびアプリの分析担当者)
Google が Econsultancy と共同で調査したところ、主要マーケターの 56% が戦略的実験の準備と実施に多くの予算、時間、リソースを投じていることがわかりました1。実際の経験に基づく独自の戦略は、大きな価値をもたらします。それは、単なる最適化とテストでは決して得られないものです。目先の失敗を恐れることなく、長期的な成功を目指しましょう。
Nest 社で、成長戦略責任者としてウェブやアプリの分析を手掛ける Jesse Nichols 氏は、「テストの成功率は 10% 程度ですが、毎回必ず、何かしら得るものがあります」と話しています。
効果測定の新たなアプローチ
マーケティング業界にとって大きな転換期がやってきました。広告キャンペーンとその測定の時間差がなくなり、実験的に新たなアクションを取っていくことが当たり前のようになってきています 。今回ご紹介した 3 つの考え方を徹底することで、測定手法は画期的に進化します。ビジネス全体の成果を把握する新たな効果測定手法によって、価値ある顧客を識別し、その顧客に重点的に注力することが可能な時代になりました。これらを活用しない手はありません。