来店コンバージョンのソリューションを活用した 49 社の検索広告において数万にもおよぶ広告テキストの要素を徹底分析した結果、来店効果の高い広告の傾向がはっきり浮かび上がってきました。
1.Store Visit 活用の新たなフェーズへ
2015 年秋に、Google がオンライン広告経由の店頭への来店効果を可視化する来店計測のソリューションを日本で発表して2 年以上が過ぎました。当初は小売業の広告主の導入が進んでいましたが、現在はさまざまな業種で導入されています。
* 1 業界に 5 社以上ある場合に表示
日本に来店コンバージョン が導入された時点では、来店効果を高めるためにオンライン広告を活用するという手法はまだ根付いていませんでしたが、現在では店頭送客を目的としたケースも増えています。しかし、縦割りの企業組織では、店頭送客向けのオンライン広告(O2O)に継続的に取り組み、改善を重ねることは容易ではありません。
特に改善の余地が大きい領域が広告クリエイティブです。現在、来店計測を行っている検索広告の大半が自社オンライン通販向けの広告などであり、来店が目的ではありません。そこで今回は、日本で来店コンバージョンを実施している企業から 49 社を選択し、広告テキストのどのような要素が来店に寄与したのか分析しました。
2.機械学習を活用して来店寄与度を可視化
49 社が運用している、数万にもおよぶ検索広告のテキストを人力で各要素に分解・分析することは困難を極めますが、機械学習なら可能です。Googleが提供する機械学習のテクノロジーを活用して、広告テキストを自動で単語レベルに分解し、各単語の広告経由の来店率への寄与を可視化することにしました。(参照リンク)
3.来店に寄与する検索広告の 4 つの要素
8 つの業界 (レストラン・車 [ディーラーを含む])・テレコム・家具小売・専門店・百貨店・不動産・教育) に対象を絞って分析した結果、すべての業界に共通する要素が判明しました。
地名や距離の近さを強調
効果的だったのは、具体的な駅名・店名や、最寄り駅やそこからの距離など、「地名」や「距離の近さ」の強調です。さらに、ユーザが自分に合った店舗を選択できることを想起させる要素も、来店率を高める傾向がありました。
来店モチベーションを高める
「セール」「緊急値下げ」「限定値下げ」等、値引きに関する単語や、「今日だけの」「期間限定」「週末」といった来店モチベーションを喚起する単語も効果的でした。もちろんこれらはオンラインでの購入を促す上でも効果的な単語ですが、「すぐに店舗で買いたい、店舗で確認したい」という生活者の欲求を確実に高めていることが数字からも読み取れました。
店舗でしか味わうことができない価値
さらに「体験サービス」「無料体験」「試乗」といった店舗ならではの体験を示す単語、また「販売員」のような店頭でのパーソナルなアドバイスや相談を連想させる単語の寄与度も高いことが分かりました。オンラインのサービスが数多く提供されている昨今でも、実際に店舗に足を運ぶことの価値はいまだに健在です。
店舗まで足を運んで実物を確認したい商品
生活者が店頭で確認したいと思うような商品の来店率は高く、今回分析した業界では、ベビーカーやこたつ・学習机などの大型商品や、お中元・お歳暮・多彩なギフトなど、贈答品が目立ちました。
4.車業界におけるケーススタディ
上記では、来店に貢献する要素を複数の業界にまたがって分析しましたが、ここからは車業界を具体例として、ディーラーや販売店に来店するユーザの関心について探ります。
Googleが過去にアメリカで実施した車購入に関する生活者の行動調査 (英語)では、ある女性が車購入に至るまでには、3 か月間で約 900 ものデジタルとの接点があり、それらは「漠然とした検討フェーズ」「モデル検討フェーズ」「購入可否判断フェーズ」「購入場所検討フェーズ」「契約詳細調査フェーズ」という 5 フェーズに分かれています。各フェーズにおいて、検索が意思決定に重要な役割を果たしています。
自動車業界の広告を分析すると、来店にポジティブな影響を与えていたのは広告本文の 81 の単語等の要素でした。なかでも特に来店への寄与度が高かった 10 の要素が、「契約詳細調査フェーズ」という、最も購入に近接したフェーズに関連するものでした。購入に近いフェーズであることから、これらの要素が来店に貢献しているのは当然のようですが、視点を変えてみれば、購入の後半においてもなお生活者は検索を続けており、企業がアプローチする余地は十分残されているといえます。
なお、今回分析した 81 の要素のうちの約 8 割が「漠然とした検討フェーズ」「モデル検討フェーズ」に該当することから、購入初期のフェーズでまずディーラーに来店し、製品を確認するケースが多いと推定できます。
一方、検索広告のテキスト内では「購入可否判断フェーズ」「購入場所検討フェーズ」「契約詳細調査フェーズ」に該当する要素はあまり考慮されていない可能性もあります。上記の 5 フェーズは直線的ではなく、生活者は各フェーズを行き来していることを考えると、企業はそれぞれのフェーズにおける生活者のインテントに応える広告を用意してアプローチすることが効果的だと考えます。
5.今回の分析により得られたインサイトの活用
今回の分析により、来店に寄与する効果が高い広告のテキストには、特定の要素 (単語やフレーズ) が含まれていることが数値的にも明らかになりました。
ビジネスによりインパクトを与える施策を実施するには、店頭送客数に責任を持つ部署が広告予算を拠出し、広告経由の来店数・来店単価をKPIとして広告の効果を測定すること、そして測定結果に基づいた広告テキストのアップデートが欠かせません。来店計測の活用にあたっても、現在運用中の「オンラインでの購入・予約等のアクションを獲得する検索広告」に加えて、試験的に「店頭送客を目的とした検索広告」を実施してみるのはいかがでしょう。