企業のマーケティング事例と関連するキーワードを手軽に学べる連載「事例で学ぶキーワード」。今回は、株式会社NTTドコモが「Ads Data Hub」を活用して、精緻に広告効果を測定した事例を基に解説します。
事例:アンケート調査の「広告を見た」という誤認をどう解消する? NTTドコモの解決策
昨今は、生活者のプライバシーへの配慮から、広告効果の測定は難しくなりました。
代替手段としてインタビューやアンケートによる測定も増えましたが、生活者の記憶に頼ったこれらの手法では、一定のバイアスは避けられません。NTTドコモでも、記憶違いの回答によって媒体別の正確な効果を測れないことが課題でした。
そこで同社が導入したのが「Ads Data Hub(ADH)」です。ADH は、プライバシーに配慮した環境下で、ログデータに基づいて精緻に広告効果を計測できる Google のソリューションです。
調査会社インテージの協力のもと、インテージが保有するテレビ CM の接触ログデータと調査データ、そして Googe 広告の接触ログデータを、ADH の環境下で紐づけました。これにより、広告接触者と非接触者それぞれの接触前後のデータを分析することで、バイアスを取り除いた広告効果を測定できるのです。
同社は、2022 年に実施した若者支援のプロジェクトの広告に関して、15 回にわたり ADH の環境下でブランドリフト調査を実施しました。その結果、認知や興味については、YouTube 広告とテレビ CM の双方で有意なブランドリフトを確認。さらに YouTube 広告に関しては、「若者へのチャレンジの場を提供している」というブランドイメージの理解促進にも大きく貢献していました。
そのほか、世代やデバイス別の分析や、テレビ CM と YouTube 広告に重複接触した場合の効果なども明らかとなり、その後のメディアプランニングやメディア投資にも分析結果を反映できるようになりました。
用語解説:Ads Data Hub(ADH)
Google が事業者向けに提供している ADH は、ユーザーのプライバシーに配慮しながら効果測定できるクラウドベースのソリューションです。
企業が保有する顧客情報などのファーストパーティ データと、Google のサービスに蓄積された広告データを、プライバシーに配慮した安全な環境下で統合して分析することで、単一のデータだけでは実現できないより詳細なインサイトを抽出できます。なお、ADH から返されるのは、集約したデータであり、ユーザー ID など個人を特定できる情報は含まれないようチェック機能や一定の制限を設けています。
また上の事例で NTTドコモが、インテージが保有するテレビ CM の接触データを統合したように、ファーストパーティ データだけでなく、位置情報や購買データなどの外部データも統合して分析可能です。
ADH を活用することで、例えば広告に接触したユーザーがどのような興味関心を持っているのかを分析したり、YouTube 広告とディスプレイ広告などプロダクト横断での計測も可能になります。