US 版 Think with Google が 2022 年11月に公開した記事を基に日本語に翻訳し、編集しました。
現在の不確実な経済状況下においては、メディア投資の効果測定がマーケティング担当者にとっての優先事項の 1 つになるでしょう。効果測定を重視すれば、短期的および長期的な成長を実現できる可能性はありますが、効果測定の手法はさまざまで、その成否は適切なメディア戦略と手法を選択できるかにかかっています。
目先の成果に集中したくなるものですが、優れたマーケティング担当者は、短期的なビジネス目標と長期的なビジネス目標を両立させることの重要性も理解しています。そしてそのための方法の 1 つが、YouTube を活用したカスタマージャーニー全体へのアプローチ(英語)です。Nielsen の最近の調査(英語)によると、興味関心を持っている見込み顧客に向けたキャンペーンに認知施策などを追加したブランドは、 ROI (投資収益率)を 70% 向上させることに成功。また同様に、興味関心、検討段階にある顧客に対して、認知施策を打ったブランドは、ROI を 13% 向上させました。
動画広告を活用したカスタマージャーニー全体への戦略を成功させるには、それぞれの目標が相乗効果を生み出すための、測定ツールの選定と戦術が必要です。そのときに効果的な 3 部構成のフレームワークがあります。このフレームワークは、「tried-and-new(英語)」メソッドと、最新の効果測定方法とを両立させたものです。フレームワークの 2 つのパート「アトリビューション分析」「インクリメンタリティの測定」は、短期的なビジネス目標の達成に役立ち、3 つめの「マーケティング・ミックス・モデリング(MMM)」は、長期的により賢明な意思決定を行うのに役立ちます。
以下では、そのフレームワークについて詳しく見ていきましょう。
アトリビューション分析で短期的な成果につなげる
最近では、カスタマージャーニー全体のさまざまな場面で接触する多様な広告にコンバージョンへの貢献を割り当てるアトリビューションモデルを使うことが一般的になっています。適切なアトリビューション分析を行えば、広告戦略を簡単に最適化できます。Google のデータドリブン アトリビューションモデルは、検索広告や YouTube 広告、ディスプレイ広告におけるカスタマージャーニーを分析し、最も効果的なタッチポイントを特定するのに役立ちます。
しかし大切なのは、アトリビューション分析を唯一の測定ツールとして扱わないことです。アトリビューション分析のインサイトにのみ最適化すると、短期的な成長は見込めても、次第に顧客のニーズを生み出すためのより上流のブランディング戦略に投資しにくくなるというリスクが生じます。またプライバシーへの配慮から、効果測定がより複雑化しているため、アトリビューション分析のみに依存するのではなく、信頼できる複数の計測手法を持つことが重要です。そこで、アトリビューション分析を次のレベルに引き上げるために、インクリメンタリティの測定と組み合わせましょう。
インクリメンタリティ測定で、カスタマージャーニー全体への影響を評価する
アトリビューション分析を補完し、効果測定を次のレベルに引き上げる強力な方法の 1 つが、広告の純増効果であるインクリメンタリティ(英語)を測定することです。インクリメンタリティとは、広告施策がなければ発生しなかったであろう、一連の施策から生じるビジネス成果で、広告による KPI のリフトを理解するのに役立ちます。インクリメンタリティを測定することで、キャンペーン全体の影響をよりよく理解し、長期的な成長への道を切り開くのに役立つのです。
インクリメンタリティを測定する主な方法として、さまざまなリフト指標を使ってカスタマージャーニー全体における動画広告のパフォーマンスを測定することが挙げられます。Google は、ブランド効果の測定やサーチリフトの測定(英語)、コンバージョンリフトの測定など、カスタマージャーニー全体のリフトを測定するためのさまざまなソリューションを提供しています。
インクリメンタリティは、結果にかかわらず、1 回限りのものとして扱うべきではありません。テスト & ラーン(実験を繰り返しながら学びを得る)の考え方を取り入れることで、ブランドのレジリエンス(回復力)と長期的な成長をより確実にする(英語)ことができます。Harvard Business Review によると、テストを繰り返したマーケティング担当者は、広告のパフォーマンスを最大 30% 向上させています(*1)。得られた結果に合わせて、メディア投資を最適化します。テストを繰り返してインサイトを集め、戦略を改善し続けることが重要です。中長期的な効果測定計画の中に、定期的なインクリメンタリティ測定を組み込むことで、継続的な最適化と改善が可能になります。
MMM で投資を最適化する
MMM は、プライバシーに配慮した方法でカスタマージャーニー全体におけるYouTube 広告のインパクトを測定できる方法です。マーケティング投資の短期的および長期的な影響を把握できます。オンラインとオフラインを横断したデータを使うことで、MMM は各メディアチャネルの投資利益率(ROI)を測定できるのです。これにより、過去のメディアチャネルのパフォーマンスを測定できるのはもちろん、今後のメディアごとの予算配分を最適化するのにも役立ちます。
MMM では複数の変数の組み合わせを考慮しているため、できれば YouTube 広告を他の動画広告プラットフォームから切り離して測定することが重要です。Nielsen の調査によると、MMM で動画プラットフォームをまとめて評価した場合と、個別に評価した場合では、広告の費用対効果が 48% も異なることがわかりました(英語)。
また、特にカスタマージャーニー全体へのキャンペーンの場合、広告フォーマットレベルのインサイトは実用的なレベルの粒度で提供します。このように MMM で統計モデルを作成するには、インプットするデータが重要な点も理解する必要があります。
経済の見通しが不確実な状況でも、カスタマージャーニー全体に向けた動画広告の戦略を採用し、短期と長期のバランスの取れた効果測定方法を選べば、継続的なビジネスの成長を促すことができます。こうした戦略の有効性を高めるためにも、アトリビューション分析やインクリメンタリティの測定、継続的なテストを重ねて短期的なパフォーマンスを向上させながら、MMM を活用して包括的なブランディング目標も同時に達成してみませんか。