US 版 Think with Google が 2023 年 11 月に公開した記事を基に日本語に翻訳し、編集しました。
広告業界は大きな転換期を迎えています。
生活者が自身のデータに対する透明性と管理する権限を求める中(英語)、規制の拡大でプライバシーを取り巻く状況は変わりつつあります。Chrome でもサードパーティ Cookie の段階的な廃止を進める中、企業はマーケティング目標を達成し、ビジネスの成長を促進するためのより持続可能な方法を採用する必要に迫られています。そしてこれらの変化に加えて、AI など新たなテクノロジーも急速に進化しています。
マーケターにとって、こうした転換期を迎えるのは初めてではありませんが、今回は特に重要な局面だと言えるでしょう。マーケティングの基本は変わりませんが、目標を達成する方法が劇的に変化しているためです。
Google は、マーケターがこの転換期を乗り切るための製品やサービスを提供しています。その中で基礎となるのは、マーケティングの効果測定に関するものです。マーケティング目標を達成するためのシグナルを把握しないのは、地図を持たずに運転するようなものです。適切なデータと強固なマーケティング測定の土台があれば、何がうまく機能しているのかを明確に把握し、調整できます。
現状では、転換期を乗り越えるのは難しいと感じる人もいるかもしれませんが、朗報があります。マーケティング効果を測定する強固な土台があれば、同時に AI の活用も進められるようになるのです。両者を組み合わせることで、マーケターは自信を持って意思決定を下し、ビジネスの長期的な成長を実現できるでしょう。そのためにもまずは、適切な問いかけから始めると、行動を起こしやすくなるはずです。
ここからは、効果測定の土台とAI の活用に関する 3 つの重要な問いについて考えます。これらを参考に、自信を持って今後に備えてもらえることを願っています。まずは、サードパーティ Cookie 廃止についての問いから始めましょう。
サードパーティ Cookie のない世界で、キャンペーンの成果を適切に測るには?
最近まで、サードパーティ Cookie やその他の識別子は、顧客をより深く理解するためのシグナルを自動的に取得していました。しかし、これらの機能はユーザーのプライバシーを重視して設計されたものではなかったため、廃止に向かいつつあります。
マーケターとして、サードパーティ Cookie の廃止に対する最適な対応策は、ファーストパーティ データを適切に収集すること(英語)です。顧客との有意義なつながりに基づいたファーストパーティ データは、Google 広告のような デジタル広告にとって決定的な情報になります。一度基盤を構築できれば、Web サイトでのインタラクションや購入履歴、利益などあらゆるデータを基に、Google AI が新規顧客の発見をサポートします。つまり、AI に効果的な学習データを与えながら、精緻にコンバージョンを測定できるようになるのです。
まずは目標を設定します。インサイトを発見して調整を加えていく中で、Google AI がそこから学習します。またこのデータは広告を運用する企業が保有しているため、収集や活用の方法も完全に管理できます。データの収集は何よりも、顧客からの信頼を第一にしながら、顧客のニーズを満たすためのものでなければなりません。
しかし残念ながら、ファーストパーティ データは、顧客管理(CRM)システムやデータストレージ、顧客データプラットフォームなど、企業内の複数のシステムに分散しており、断片的で構造化されていないことが多いようです。2021 年の Google と BCG の共同調査では、マーケターの 90% が、デジタルマーケティングにとってファーストパーティ データが重要だと回答しましたが、それを効果的に活用していると回答したのは 3 人に 1 人にとどまりました(*1)。
ファーストパーティ データを適切な方法で収集し、特定の目的に合わせて整理するにあたって、それを単独で行うには難しい場合があります。そこで Google では、2023 年 10 月に Google 広告 データ マネージャーの提供を始めました。データ管理を簡略化し、コンバージョンを測定したり広告を関連性の高いユーザーへ届けたりすることが、より容易になるでしょう。
ファーストパーティ データ戦略のために、採用すべきプライバシー保護ツールは?
ファーストパーティ データを適切に測定する土台として欠かせないのが、サイトワイド タグです。これにより、マーケターは質の高いファーストパーティ データを取り込み、顧客がオンラインで自社とどのように関わっているかを理解できます。
これまで、Web サイトのタグを設定、管理するには、技術的な専門知識や Google タグ マネージャーのようなタグ管理のプラットフォームが必要でした。これを簡略化するために Google は、再利用できる単一の Google タグを導入しました。これを使えば、マーケターは Web サイトのコードを変えることなく、さまざまな Google サービスやアカウントで、より多くのことが実行できるようになります。Google タグの導入以来、Web サイトの設定をより簡素化し、測定範囲をより詳しく把握するための追加のタグ付け機能(英語)を展開してきました。
Google タグを使うか、Google タグ マネージャーを使うかにかかわらず、データを正しく測定し、それに基づいて処理するには、適切なサイトワイド タグ設定が必要です。以下では、タグ付けによる効果測定で優れた成果を実現したアパレルブランド「The North Face」の例を紹介します。
The North Face は、タグ マネージャー 360 を利用して生活者の行動の全体像を把握し、それらのシグナルをインサイトに変換して、行動を測定しています。これにより同社はタイムリーにマーケティング施策を調整し、顧客により良いサービスを提供できるようになり、コンバージョンと売り上げも増加しました。
なお、同社が利用したタグ マネージャー 360 は、タグ マネージャーに比べてより複雑で大規模な広告運用にも対応したタグ管理ツールです。
The North Face のベサニー・エヴァンス氏(VP of Americas marketing)は、タグ マネージャー 360 を導入したことで、販売する商品に関する最新の検索クエリを常に把握し続けることができるようになったと話します。タグ マネージャー導入で得た情報に基づいて、生活者がオンライン上で探しているものを確実に見つけられるように商品名を変更したそうです。「私たちはすぐに商品名を変更し、Web サイトの検索クエリが正しく動作して必要な情報を提供できるようにしました。商品を見つけやすくなったことで、コンバージョン数と売り上げがいずれも、一晩で実質 3 倍に伸びたことを確認できました」。
Web サイトのタグ以外にも、Google ではすぐに使えるツールを用意しています。ツールの一覧は「AI の基本」を参照してください。
ファーストパーティ データと AI の関係とは?
AI の性能は、与える情報によって決まります。入力する情報の質が高いほど、より良い効果を発揮するのです。ここでいう情報とは、ある企業にとっては Web サイトでの滞在時間やアプリのインストール数かもしれませんし、別の企業は売り上げや購買履歴に重点を置くかもしれません。自社の顧客とキャンペーン目標について最も理解しているのはマーケター自身ですから、それらのインサイトに基づいて AI に学習させることは、コンバージョンの増加であれ LTV の高い顧客の獲得であれ、ビジネスにとって最も重要なシグナルを結びつけることを意味します。
つまり、ファーストパーティ データは AI ツールにとっての優れた燃料となります。質の高いインプットが、より良いアウトプットを生み出すのです。ファーストパーティ データで AI を強化すると、その両方を制御できなくなるのではないかと懸念している声も聞こえてきますが、そうではありません。
その理由を説明しましょう。Google では、たとえば顧客がコンバージョンする可能性が高いかどうかを理解するなど、広告主全体の利益になる場合に限り、集計されたコンバージョンデータを使用しています。この集計データは、そのほか入札の改善やスパム、不正の検出にも重要な役割を果たしています。Google では、個々の広告主のデータは完全に保護しながら、長期的に広告効果を高めるための基盤を採用しているのです。
すべての AI アルゴリズムは大規模なデータセットで学習を行うため、適切な情報があれば、AI の信頼性は高まります。ただし、AI の学習には時間がかかることを忘れないでください。AI の導入が早ければ早いほど、ビジネスへの貢献も早まります。すでに多くの企業が、自社のビジネス目標を慎重に評価し、特定のビジネスニーズに対して柔軟に素早く対応できるように、戦略的に組織作りを始めています。
企業が AI とファーストパーティ データの強みを併用して成功した例として、オランダでレンタル自転車を展開する Swapfiets のケースを紹介しましょう。サブスクリプションモデルを採用している同社の最大の課題は、新規顧客の拡大です。そのために Google AI を活用し、P-MAX キャンペーンの「新規顧客の獲得」目標とオンラインおよびオフラインでのカスタマー マッチのデータを組み合わせた結果、新規顧客の取引が 36% 増加しました。Swapfiet ではオランダ以外の市場でも、「新規顧客の獲得」目標を導入しています。
今から始める明日への備え
今日のマーケティング エコシステムに、時に圧倒されそうになるのも無理はありません。しかし、質の高いデータと、持続可能なタグソリューションを活用し、AI を取り入れることで、より良いビジネス成果を実現できます。まだ Google AI をマーケティングに導入していない場合は、サードパーティ Cookie のない未来に備えて、「AI の基本」でも紹介している長期的な広告パフォーマンス向上のための基盤を構築しましょう。