私には 3 人の息子がいます。長男はゲームが大好きなので、毎年彼の誕生日には妻と私で最新の人気ゲームを贈ります。いつも同じ会社のオンラインショップから購入します。
今年の誕生日も、長男が欲しがっていたゲームを購入しました。オンライン決済の手続きでは、これまでの私の履歴が表示されなかったので、面倒ですが最初から入力しなければなりませんでした。その翌日のことです。まったく同じゲームのオンライン広告が表示され、前日に定価で購入したばかりの私に割引価格を提示したのです。
当然私はかなり気分を害しました。マーケターとして私はこのように考えました。「このブランドがマーケティングを見誤ってしまった理由は、ユーザーの行動を広い目で捉えることができなかったからだろう。ショッピング行動に関するリアルタイム データや過去のインサイトを活用しなかったことで、顧客との関係構築のチャンスを逃してしまった」
マーケターの最大の使命は、ユーザーを熟知して関係を築きあげることですが、そのためには統合されたユーザーデータが不可欠です。本記事では、それに役立つ 3 つのステップをご紹介します。ぜひ、データを統合してビジネスを拡大し、ユーザーが競合他社を選んでしまわないようにしましょう。
ステップ 1: 散らばったデータを 1 か所に統合する
競争の激しい今日のマーケティングで成果を出すには、組織やチャネルの壁を超えてデータを統合し、ユーザーの行動を大局的に捉える必要があります。さまざまなデータを1つにまとめることで、ユーザー行動を把握してニーズに対応できるようになり、ビジネスも拡大します。
しかし、すべてのユーザーデータを統合することは、容易ではありません。そこで、段階的に作業に着手しましょう。まずは小規模に、ウェブとアプリの分析ソリューションを顧客管理テクノロジーに関連付けます。そして、ユーザーと関わるその他のあらゆるチャネル(メール キャンペーン、課金システム、ポイント プログラムなど)で、データ統合する方法を考えます。次に着目すべきは、関連する外部データ (検索意図や視聴された動画からもたらされる明確なオーディエンス シグナルなど) です。これらのデータを Google Cloud 上などで 1 つに統合すれば、ユーザーに関する貴重なインサイトを簡単に発見できます。
インタラクティブ ソフトウェア会社の Electronic Arts Inc.(EA)は、これらの取り組みによって大きな成果を得ました。チームごとに保管していたユーザーインサイトを統合したことで、ゲームユーザーに関する明確なインサイトを得ることが可能になりました。さらに、変化の激しいユーザーのニーズにリアルタイムで対応できるようになったのです。EA では、マーケティング、パブリッシング、分析のすべてのチームがひとりのリーダーによって統括され、共通するユーザー インサイトに基づいて業務に取り組むようになりました。これにより、ゲームユーザーのエンゲージメントがこれまでになく高まり、新作ゲームでのコンバージョンも大幅に増加しました。
EA では、マーケティング、パブリッシング、分析のすべてのチームがひとりのリーダーによって統括され、共通するユーザー インサイトに基づいて業務に取り組むようになりました。
ステップ 2: カスタマー ジャーニー全体の測定・分析こそ戦略の核心
ユーザーを中心にしたデータ構築が完了したら、次はカスタマージャーニー全体を測定し、分析します。このステップこそがデータ戦略の真髄とも言えます。マーケティングが広告キャンペーンだけでなくビジネス全体に与える効果を正確に測定し、すべてのチームが重視すべき共通のビジネス指標を明らかにすることができるからです。
分析ソリューションを選ぶにあたって考慮すべきポイントは、以下の 2 点です。1 つは、カスタマージャーニー、チャネル、コンテンツ、キャンペーンなど、多様な要素を分析できるツールを選ぶことです。
成果を上げているタッチポイントに貢献度を割り振るアトリビューション モデルを採用することで、マーケティングの効果をさらに高めることができます。
もう 1 つは、複数のメディアがどのように連携しているか、そして成果の高いチャネルはどれなのかということが把握可能なアトリビューション モデルを選択することです。成果を上げているタッチポイントに貢献度を割り振るアトリビューション モデルを採用することで、マーケティングの効果をさらに高めることができます。また、価値の高いオーディエンスを把握し、そのようなオーディエンスに最も効果的なクリエイティブを特定することも可能です。
これらのソリューションを採用した Hertz の実例を見てみましょう。同社は価格設定からメディア ミックスに至るまで、全社的なビジネス戦略に、測定結果から得たインサイトを活用しています。具体的には、データドリブン アトリビューションと Google マーケティング プラットフォームを使ってカスタマー ジャーニーの全貌を把握し、特定のユーザー セグメントの価値を割り出しています。そして、自動化機能とオーディエンス ターゲティングを用いて、それらのユーザー セグメントでの収益目標を達成しています。このような取り組みが奏功して、Hertz の予約数は 10% 増加しました。
ステップ 3: 動的なユーザー エクスペリエンスを提供する
最後に、データから得られたインサイトをプラットフォームに適用して、動的なユーザー エクスペリエンスを提供します。ユーザー インサイトを活用することで、さまざまなオーディエンス セグメントの構築が可能です。そして、機械学習などの新しいテクノロジーを活用して、それぞれのセグメントのユーザーごとにエクスペリエンスをカスタマイズできます。
このようなメディア戦略によって、カスタマー ジャーニーのあらゆる段階でインテリジェンスを活用することが可能です。高度なプロセスを採用すれば、新たなプレイスメントやメディア タッチポイントでユーザーにリーチできるようになります。
競合他社より先を行くために
私が息子のゲームを買ったときのような違和感のあるユーザー エクスペリエンスは、誰もが体験する可能性があります。データを連携していないブランドがいまだに多いからです。そうしたブランドは重要なユーザー インサイトを得ることができないほか、カスタマー ジャーニーの全貌をつかむことも、すぐれたエクスペリエンスを提供することも不可能です。その結果、ユーザーを失うだけでなく、マーケティングにかかる費用を意味のないものにし、目標を達成することもできないでしょう。
そうしないためにも、ここで紹介したステップでデータを統合しましょう。そうすれば、さまざまな分野でユーザー インサイトを役立てることができます。ユーザー行動の全体像を把握することで、質の高いエクスペリエンスをユーザーに提供できるようになり、長期的にビジネスを拡大していくことができるでしょう。