これまでも Googleは、顧客の期待価値に応じたマーケティングの事例をご紹介してきました。近年の技術の進歩に伴って、広告効果測定の精度はますます高まっており、従来の効果検証では顧客行動に基づく真の効果が測定しづらいという問題意識を持つマーケターも増えています。
今回は、デジタル広告の直接効果と間接効果を可視化し、最適な広告投資のPDCAサイクルを回す取り組みに関して、通信講座などの多彩な学びによって生涯学習を支援するユーキャンの事例をご紹介します。
間接効果を可視化しキャンペーン全体の評価を把握
ユーキャンは、生活者がマルチデバイスを利用することで、メディアへの接触方法が変化している状況を受け、「情報収集や購買のマイクロモーメントを適切に捉えきれているか」という問題意識を持っていました。従来は、テレビCMを中心としたマスメディアがユーキャンの主な広告投資の対象でした。この施策は一定の成果を挙げていましたが、テレビ離れが進んでいる近年の若年層の行動特性を踏まえると、潜在的な顧客にリーチするためにも、広告投資の比重を再考する必要があることも認識していました。
これらの背景には、広告効果の評価の方法論の課題がありました。これまでユーキャンは、テレビCMや新聞広告などのマスメディア、そしてデジタル広告など、チャネルごとに広告を評価する手法を採用していました。この手法では、各チャネルでの広告評価の把握はできますが、広告キャンペーンを起点とした成果の全体像の把握は困難でした。
また、デジタル広告の評価から、動画広告が検索数の増加、そして資料請求や申し込みなどのコンバージョンにある程度寄与することもわかっていました。しかし同社は、これまでデジタル広告の投資判断を、直接的なコンバージョンへの貢献度で測ってきたため、検索広告やリマーケティングなどの施策に対する投資に偏っていました。そのため、申し込みや資料請求の意向がまだ高まっていない潜在的なユーザーに向けたアプローチを、どのような指標で評価すべきか、またどの程度の投資が妥当なのか、判断に悩んでいたのです。
データドリブン アトリビューション (DDA) モデルを活用し、
フェアなコンバージョン貢献度評価から投資比率を決定
そこで、Google マーケティング プラットフォームを活用し、アナリティクス 360 とキャンペーン マネージャーで広告効果を検証することで、デジタル広告を横断してコンバージョンへの貢献度を明らかにするアトリビューション分析を実施しました。アトリビューション効果の分析にあたっては、アナリティクス 360 のデータドリブン アトリビューション (DDA) モデルを用いることで、ラストクリックやファーストクリックを基準とした評価ではなく、機械学習を用いたアルゴリズムによって、コンバージョンにつながった施策と、つながらなかった施策をともに評価して、貢献度の高い接点を特定しました。
さらに、キャンペーンマネージャーの固有の機能を用いて、動画広告とディスプレイ広告のインプレッションも加味することで、潜在顧客に対してコンバージョンを促す間接効果も確認できました。たとえば、インプレッション効果やアシスト効果などの「間接効果」を加味した場合の動画広告とディスプレイ広告のコンバージョン数は、加味しなかった場合に比べ、約 2.5 倍も多かったことが判明しました。コンバージョンへの直接的な貢献度だけで評価した際には可視化できなかった間接的な広告効果を把握することによって、各デジタル広告の目的や位置づけを再設定することができました。
これらの取組みを通じて、広告のコンバージョンへの直接効果と間接効果の双方の数値を踏まえ、コンバージョン貢献度に基づいて各広告施策ごとに適切な投資比率を決定することができるようになりました。具体的には、各広告施策における従来のラストクリック評価と DDA モデルを用いた評価とのコンバージョン比率の変化を計算することで、より事業への貢献度が高い広告施策への予算アロケーション案を検討しました。
たとえば今回のキャンペーンでは、DDA モデルを用いた評価によって Google 検索広告が従来のラストクリック評価の約 1.12 倍、動画広告・ディスプレイ広告が約 4 〜 6 倍のコンバージョン比率を占めていたことが分かりました。
今後に向けて
ユーキャンは現在、次回のプロモーションに向けて、デジタル広告の目的ごとに予算配分を行い、仮説を検証しながら投資効果を高めるために PDCAを回しています。アナリティクス 360 を起点にした広告評価のプラットフォームを整備できたことで、デジタル広告の全体像を把握しつつ、投資の意思決定を行うことで、ビジネスの構造を踏まえた広告投資を進めることができています。これにより、従来のメディアや広告施策を起点としたマーケティングではなく、接点をもった顧客起点でのマーケティング活動を推進することが可能になります。今後は、ターゲティング精度向上やクリエイティブの最適化を図りながらデジタル広告の投資対効果をさらに高めていこうと考えています。
同社はさらに、デジタル広告だけでなくテレビCMも含む、チャネルを横断したアトリビューション効果の分析も進めていく予定です。テレビCM 出稿データとサイト訪問データ/Google 検索データに基づく時系列の統計分析を行うことで、テレビCM視聴の Google 検索への影響なども特定することが可能になります。テレビCM とデジタル広告を包括した広告評価の基準を定め、評価を可視化することで事業にとって最適な広告投資の在りかたを追求しようと考えています。