アジア太平洋地域(APAC)版 Think with Google が 2023 年 6 月に公開した記事を基に日本語に翻訳し、編集しました。
初めての街を訪れる、知らなかった文化を体験する、未体験の料理を味わう——。人々が旅行に求めるのは、忙しい日常から抜け出すことです。
Google と Kantar が日本を含む APAC 6 カ国で実施した調査によると、旅行の最大の動機はリラクゼーションやくつろぎ、ストレスの解消でした(*1)。しかし、実際に旅行に行くまでのプロセスは、たいてい面倒で時間がかかるものです。
生活者行動に関する Google の調査「Messy Middle research(英語)」では、商品サービスについて調べ始めたり、具体的に検索したりする「目的のある瞬間」に適切なメッセージを伝えることで、生活者の行動を促せることがわかっています(日本における同様の調査は「バタフライ・サーキット」としてまとめました)。
旅行関連企業が予約と収益を拡大するにあたっては、旅の体験と同じくらい、旅行実現までのプロセスをスムーズにすることが重要なのです。
新型コロナウイルスの感染拡大によって、生活者は旅行における不確実性を経験しました。それによって人々は、以前よりも旅行の計画に時間をかけ、決定までのあらゆる段階で熟考を重ねるようになっています。
81% の人が、旅行計画の各段階で感染拡大前と同じかそれ以上の時間を費やしていることがわかりました。旅行したいと思ってから実際に手配するまでに、3 ~ 4 カ月かかる人が多いようです(*2)。
またその間に、Google 検索、Google マップ、YouTube、旅行代理店のウェブサイト、旅行レビューサイトなど、少なくとも 7 つのタッチポイントに触れています。そして平均すると、航空会社やホテル、旅行中のアクティビティなど、合計 16 のブランドを検討しているのです(*1)。
人々は、自分が決めた予約に自信を持つと安心できます。そのため旅行関連企業は、情報を提供し、より少ない労力で自信を持って意思決定できるようサポートすることが重要です。商品選択に対する自信(肯定度)を高めることで、さらなるビジネス成長と利益拡大を見据えることができます。
たとえば、AI を活用した新しいウェブアプリ「Travel Planner」は、旅行の計画をより簡単で楽しいものにします。まるで旅行に慣れた友人が、計画するのを手伝ってくれるかのようです。旅行の興味や好みについて話した後、Google Partner Innovation Team が開発した(英語)チャットボットが、パーソナライズされた旅行プランを生成します。
Google AI を活用したマーケティングによって、企業は旅行者の商品選択に対する肯定度を素早くかつ大幅に高めることもできます。これ以降では、APAC の大手 3 社の事例を取り上げます。Google AI の活用が、インサイトの分析や有力な顧客の予測、旅行者にとって最も関連性の高い情報の生成に、どのように役立ち、旅行に関するカスタマージャーニー全体でどのようにビジネス機会につなげていけるかを事例と共に紹介します。
さまざまな広告チャネルで旅行者のニーズに対応する Scoot
シンガポールに拠点を置く格安航空会社の Scoot は、旅行者にタイムリーな関連情報を提供することでニーズに応え、コンバージョン数の増加につなげたいと考えていました。
旅行者がそもそも何を探しているのかを理解するために、Scoot は Google AI を活用した P-MAX キャンペーンと検索広告を組み合わせ、旅行者の検索動向と好みを分析しました。これにより Scoot は、既存のキーワードではカバーできていなかった新しい検索クエリを特定し、検索、YouTube、ディスプレイ、Discover、Gmail など Google ネットワークサービス全体で、新たな顧客層にアプローチできるようになったのです。
このように Google AI を活用することで、Scoot は旅行者の検索動向に関連した広告クリエイティブを配信し、自信を持って予約できるよう支援しました。さらに、価値ある潜在顧客がどのチャネルにいようとも、配信する広告クリエイティブを最適化することで、コンバージョンを大きく拡大できるようになりました。
P-MAX キャンペーンと検索広告の組み合わせによる段階的な成功を受け、Scoot はさらに 11 の地域で P-MAX キャンペーンの展開を検討しています。
P-MAX キャンペーンで予約を促した Minor Hotels
オーストラリアやニュージーランドの Oaks Hotels や Avani Hotels など、6 大陸に 500 軒の宿泊施設を展開する Minor Hotels は、旅行者の検討と直接予約を伸ばすためのシンプルなマーケティング施策を求めていました。
Minor Hotels は、旅行関連の目標達成のための P-MAX キャンペーンを利用して、さまざまな宿泊施設の広告を効率的に作成し、Google マップ、検索、YouTube など、あらゆる Google ネットワークサービスと広告枠を通じて、適切な潜在顧客に広告を配信できるようにしました。
Google AI を活用して、ホテルチェーンの既存の検索広告からクリエイティブ素材を抽出し、各宿泊施設を宣伝するためのメッセージや素材、各施設の予算を最適化するための推奨事項に関して提案を受けました。Minor Hotels のマーケターはこの提案を参照しながら、専門知識を活かしてキャンペーンに最適なクリエイティブ素材と、最も戦略的な予約目標、予算を決定したのです。
その結果、Google の広告チャネル全体で、同社のホテルと似た宿泊施設を探している潜在顧客を特定することができました。そしてその潜在顧客に対して、最もパフォーマンスが高く、ビジュアル的に優れた広告を、適切な頻度で大規模に配信し、旅行者が自信を持って予約できるよう支援したのです。
旅行者の検索動向に合わせた広告配信で、ニーズに応える Virgin Australia
航空会社の Virgin Australia は、旅行者とつながり(英語)、旅行者が探しているものに合わせてカスタマイズした情報を提供したいと考え、Google AI を活用した検索広告を利用しました。
Virgin Australia は検索広告のマッチタイプとして部分一致を採用することで、検索がキーワードと完全に一致する顧客だけでなく、関連した検索をしている潜在顧客に対しても自社の商品を届けることに成功。またレスポンシブ検索広告を使い、旅行者の検索クエリにより一致したメッセージを含む広告を配信できるようになりました。
Virgin Australia はさらに、価格に基づく入札戦略(Value Based Bidding)を使って、より価値ある顧客とつながり、広告と入札戦略をタイムリーに最適化して収益を伸ばしたのです。
旅行関連企業は、生活者が旅行のあらゆる段階で自信を持って決定できるように支援することで、生活者に対して計画段階から安心感のある旅行体験を提供することができます。そしてそのために Google AI を活用することで、予約と収益を大きく伸ばすチャンスがあるのです。
Contributor:サム・ヤティシュ (She / Her), Marketing Manager, Travel Ads APAC, Google