人工知能(AI)と機械学習は、かつてマーケティングの世界にテレビやインターネット、スマートフォンが果たしたのと同様のインパクトを与えるかもしれません。先進的な企業はすでにマーケティングに機械学習を導入しており、データ処理を効率化したり、ユーザー インサイトの把握や顧客対応の向上に役立てています。
先進的な企業はすでにマーケティングに機械学習を導入しており、データ処理を効率化したり、生活者インサイトの把握や顧客対応の向上に役立てています。 ボストン コンサルティング グループ の調査によれば、企業幹部の 85% が「AI は競争力の強化または維持に役立つ」と考えています1。
機械学習を取り入れることで、アプリのマーケターやデベロッパーは従来のビジネスモデルやカテゴリから脱却し、マーケティングに対する認識を改めつつあります。 では、機械学習の優れた点を見てみましょう。
膨大なデータを掘り起こすことが可能
現在、人々は PC、スマートフォン、タブレットなど、複数のデバイスを利用して、さまざまなメディアに触れています。 顧客にとって、モバイルアプリは価値を提供するものですが、マーケティング担当者にとっては、顧客との関係を深めてくれる重要なツールだといえます。
しかし、マーケターが最も知りたい「最高の収益性をもたらす顧客」や「流入経路」、「リピーターづくりの仕掛け」などを突き止めるには、膨大なデータを処理する必要があります。
膨大なデータ量に加え、その分析方法もかつてないほど増えており、投資効果を最大化する方法を特定するのは一筋縄ではいきません。 マッキンゼー アンド カンパニーの調査によれば、米国内のすべての職種において、勤務時間の 3 分の 1 をデータの収集と処理に費やしています2。
データ処理に時間とリソースを取られてしまうと、マーケティング戦略の最適化や顧客体験の向上といった、より重要な業務に割り当てる時間が限定されてしまいます。
様々なデバイスの普及によって飛躍的に増加した顧客接点からのデータをリアルタイムで分析し、業務の改善に向けた意思決定に役立つ機械学習を活用することで、より効率的かつ正確な意思決定、また戦略的な業務への注力が可能になります。
アプリのマーケティング プロセスの簡素化にも機械学習は有効です。 機械学習を活用すれば、マーケターは目標を設定し、ターゲット ユーザー(たとえば「自社開発のゲームでレベル 10 に到達する可能性が高いプレイヤー」、「自社のアプリから毎月一定金額以上購入する可能性があるユーザー」など)を指定するだけでよく、目的のユーザーにどのポイントでどうアプローチすべきかはシステムが分析します。
顧客価値を重視して最適化
マーケターの重要な課題は、自社ブランドに興味を持ち、リピートしてくれる可能性が高い顧客の発掘です。しかし、それ以上に重要なのが高い生涯顧客価値を持つ顧客の見極めです。 機械学習を用いることで、従来見極めることが難しかった高い生涯顧客価値の顧客を容易に探り当て、コミュニケーションすることができます。
機械学習によるターゲティングでは、「35~54 歳の女性」といった、従来のデモグラフィックなどの条件で絞り込むかわりに、売り上げやアプリ内購入、ゲーム内でクリアしたレベルなど、期待するビジネス成果をもとに幅広くターゲティングできます。そして無数のデータを通じて、コミュニケーションしたい顧客を特定することができるのです。
アプリ マーケティングで機械学習を使用するにあたり、最初にすべきことは、高い顧客生涯価値を持つユーザーの割り出しです。 そのあとは、機械学習が類似のプロフィールを持つ顧客を自動的に見つけてくれます。 たとえば旅行アプリをマーケティングしたいのであれば、他の旅行アプリの購入履歴があったり、旅行関連動画を視聴していたり、航空券とホテルを探しているユーザーなどがターゲットになるかもしれません。
オンライン旅行会社 Trivago は、価値の高いユーザーのアプリ内でのコンバージョン(予約など)を増やすことを目的に、Google の機械学習によるユニバーサル アプリ キャンペーンを実施しました。アプリ内におけるコンバージョンを重視して最適化した結果、iOS と Android の両方で価値の高いユーザーを 20% 増加させることができたのです。
適切な文脈でアプローチ
機械学習は、価値の高い顧客を見つけてくれるだけではなく、それらの顧客にコミュニケーションするための最適な方法も教えてくれます。 具体的には、最適なユーザーに向けて最適なタイミングで、最適なクリエイティブを用いてメッセージを届けることが可能になります。
モバイルゲーム会社 Pocket Gems は、動画アプリ広告を使用してプロモーションを展開しました。 同社は、「ファッショニスタ」、「美容マニア」、「恋愛映画やドラマ好き」といった関連性の高いアフィニティ カテゴリを指定して、アプリのターゲットを絞り込むという戦略を立案しました。 最適なユーザーに向けて最適なタイミングで、最適なクリエイティブを用いてメッセージを届けることが可能になった結果、YouTube 経由でアプローチしたユーザーの生涯顧客価値が 50% 向上しました。
マーケターにとって新たなチャンス
マーケティング プロセスが簡素化できるとはいえ、全てを機械学習に任せることができるわけではありません。 機械学習を活用したマーケティングの成否は、入力する情報次第です。 マーケターは、顧客の生涯価値など、最も重視すべき目標をデータから特定し、カスタマー ジャーニー全体を継続して最適化しなければなりません。 これには、アプリストアのランディング ページ、アプリのウェブサイト、ユーザー導線、アプリ内イベントを改善する作業なども含まれます。
デジタル広告代理店 Incipia は、クライアントのアプリ ビジネスの拡大支援に向けて機械学習を導入しました。 その結果、ゲームアプリ WordScapes は 7 日間のユーザー維持率 60% を達成することができました。 価値の高いユーザーに向けて入札単価を最適化しつつ、クリエイティブを改善して Google のユニバーサル アプリ キャンペーンでさまざまな動画広告を配信した成果です。
マーケターにとって、技術の進化はビジネス チャンスです。 これをうまく活用したマーケターは、データに基づいた的確な意思決定、収益につながるユーザーの特定とアプローチ、より効果的なクリエイティブの配信を実現しています。
これからの時代のマーケティングで優位に立つのは、積極的に最新技術を導入するマーケターだと言えるでしょう。