Google はプログラマティック広告を、どのようにマーケティング戦略に組み込んでいますか?
この 2 年間、 Google のグルーバルマーケティングチームは、プログラマティック広告の大々的な導入を推し進めてきました。2015 年にはブランディング目的のディスプレイ広告は、ほぼ 100% がプログラマティックによるものだったほどです。
プログラマティック広告は、人々の Micro-Moments を捉えつつもリーチを犠牲にすることなく、広告メッセージを発信することが可能です。したがって最も効率的かつ効果的な手段の 1 つ。検索広告と並んで重要な広告手法です。
例えばアメリカの Google 検索アプリの広告キャンペーンでも、ユーザーの位置情報や時間帯など 25 種類のライブデータを活用し、それに合わせて訴求内容が動的に変化するモバイル広告を展開しました。
その結果は、Google がこれまでに実施したモバイル キャンペーンの中でもトップクラスを誇ります。Google が提供する ブランド効果測定のブランドリフト調査では 12.5% の上昇を示し、広告エンゲージメント率(広告の表示回数に対する、広告が展開された回数の割合)は業界ベンチマークの 5 倍に達しました。2
プログラマティックバイイングへの全面移行を振り返り、何が最大の課題でしたか?
最も難しかったのは、メディアとメッセージとの親和性を保つことです。プログラマティック広告というと、テクニカルな面にばかり目が向けられがちですが、マーケターにとって最も重要なミッション「顧客に対する付加価値の提供」を見失ったら、すべては台無しです。 たとえ世界一高度なプログラマティック広告だったとしても、訴求内容に魅力がなければ人々には響きません。
もうひとつ、私にとって重要だったこは常に学び続けることです。テクノロジーは日々進化し続けます。 この分野では、ひとたび知識を身に付ければ一生安泰とはいきません。他のブランドがこの分野でどういったことを実現しているのか、常に学び続け知識のアップデートが求められます。
プログラマティック広告に対する認識は、 2 年前と比べてどう変化しましたか?
長い間プログラマティック広告は、なるべく安価でコンバージョンを獲得することを望むダイレクト レスポンス型マーケターに好まれる手法でした。このため業界内では「RTB(Real Time Bitting =リアルタイム入札 )」は「 Race to the Bottom (底辺への競争)」になってしまうと懸念されたほどです。しかし今では、ダイレクト レスポンス型のマーケティングだけでなくブランド マーケティングにおいても、戦略的に活用され、世界トップクラスのパブリッシャーと組んで大きな成果を上げています。 例えば、 Google は ニューヨーク・タイムズ と協力関係を築き、同紙ウェブサイトにおけるトップページ マストヘッド広告枠に、初となるプログラマティックバイイングによる広告を掲載しました。プログラマティック広告が、パブリッシャーのビジネスモデルにとって脅威だと思われていた数年前には考えられなかった出来事です。今ではプログラマティック広告は、広告主側にも媒体側にも相互に利益のある技術と見なされるようになりました。
その上、プログラマティックバイイングでは、ビューアビリティ( 視認性 )指標により、さらにブランディング効果を高めることを狙えます。
プログラマティック広告は、今後のマーケティング業界の進化にどんな影響を与えると思いますか?
現時点でこの市場は 150 億ドルの規模を誇り、いまだ拡大の一途を辿っています。なぜならプログラマティック広告は人々にとってきわめて関連性の高い広告を掲載できる、価値ある技術だからです。その訴求力の高さは、優れた成果として現れています。 L'Oréal のあるキャンペーンの事例では、プログラマティック広告によって、 2,000% 以上の収益アップを達成しました。こればずば抜けた成果です3 Google 検索アプリのキャンペーンでは、前年比で 30% 多いユーザーに、 3 倍以上の頻度で広告を表示し、有効インプレッション単価(eCPM)を約 30% 削減できた、という結果も出ています4
2016 年に最も楽しみにしている取り組みは何ですか?
年内に実現したいことが 3 つあります。
1 つ目は、広告メッセージとそれを受け取る人との関連性をさらに高めること。そのためにプログラマティック広告では「位置情報、ユーザー属性、時間帯」などのデータを駆使し、きめ細やかに人々の Micro-Moments にピッタリなメッセージの発信を試みます。これを突き詰めると、通常の広告では規模が小さくなってしまいますが、プログラマティック広告であれば規模を維持したままの展開が可能なはずです。
2 つ目は、ユーザーにとってさらに有益で魅力的な広告クリエイティブを生み出すこと。
最後に、プログラマティック技術をウェブの外でも展開すること。たとえば OOH でのリアルタイム広告。そういった試みを推進するために、すでに東京とロンドンではテストも行っています。交通広告や屋外広告といった物理的な広告枠に、関連性の高い広告を掲載していく取り組みには、大きな可能性を感じています。