本記事は、2018 年 11 月に Google が開催したイベント ThinkShopping で石橋氏にご講演いただいた内容をまとめてご紹介しています
セブン&アイ・ホールディングスは、コンビニエンスストア、総合スーパー、百貨店、レストラン、銀行、IT サービスなど幅広い業態を擁し、お客様のあらゆるニーズに応える総合流通グループです。国内グループ店舗への 1 日あたりの来店客数は 2,300 万人に上り、日本人口の約 20% に毎日来店いただいています。
グループの中核企業としてのセブン-イレブン・ジャパン(以下、セブン-イレブン)は、お客様にとって、「 もっと近くて便利なお店 」になるためのデジタル戦略として、1. 組織改革、2. デジタル改革、3. メーカー共同販促改革の 3 つの改革を行なっています。
1. 組織改革―デジタル戦略を徹底的に推進できる体制に
組織改革の背景として、今やお客様にとって、日常生活でデジタルの活用は欠かせないものであるという認識があり、もっと近くて便利なセブン-イレブンになるために、デジタルの推進を決定しました。その上で、デジタル改革をスピーディに推進し、セブン-イレブン社内のみならずグループ各社との連携を図るために専門の組織が必要だと考えました。そこで、私が兼務で管掌している商品本部と並列の組織として、デジタル・サービス本部を新設しました。従来は各部に分散していた販売促進、デジタル推進、オムニチャネル MD 、決済サービスを本部直下に統合することで、デジタル戦略を徹底的に強化しています。
2. デジタル改革―セブン‐イレブンアプリ・ネットコンビニ・セブンペイ・YouTube の活用
デジタル改革として最も力を入れているのが、『 セブン‐イレブンアプリ 』です。お客様との新しい絆を生み出すため、2018 年 6 月スタートしました。半年ほどで、650 万ダウンロード( 2018 年 12月時点 )を超え、小売業界のアプリとしてはトップクラスに成長しています。
現在、商品のお届けをご要望するお客様が増えている中で、ネットコンビニ施策を進めています。グループで連携する 7iD を活かし、スマホで注文して、最短 2 時間で商品をお届けするネットコンビニの実証実験を北海道で実施し、全国展開を視野に取り組んいます。
また、現金を持ち歩くのが煩わしいと感じるお客様も増えてきています。2015 年のキャッシュレスの決済比率を世界と比較すると、アメリカ は 45% 、中国は 60%、韓国は 90%とキャッシュレスが普及していますが、日本 はわずか 18% です。今後、2020 年に向けて日本もキャッシュレス化が進んでいく中で、セブン-イレブンも株式会社セブン・ペイを設立し、対応を進めています。
しかし、アプリを中心としたデジタル改革にはまだまだ課題は多く、「もっと」お客様のためのアプリになるために、Google と連携し、勉強会や共同プロジェクトを実施しています。例えば、ユーザビリティ調査を実施し、お客様の使いやすさやを追求することや、アプリマーケティングを強化し、新規ダウンロード数を増やし、さらに既存顧客のアプリ活用を増やすための施策を実施しています。そして、Google Cloud を活用し、さらに精度の高い効果測定を実施しています。
また、「他律的消費」と呼ばれる、他者が IT 等を通じておすすめしている情報を参考にしたいという消費行動に合わせて、新しい販促に取り組んでいます。具体的には、アプリ以外のデジタル改革として、各世代の方々が日常的に見ている、YouTube の活用を強化しています。
若い女性の生活をもっともっと応援したいという思いから、「カラダへの想い この手から」シリーズで、関ジャニ∞ を起用した YouTube 動画広告を制作・配信しました。関ジャニ∞ のメンバーがカラダに優しくておいしい「アレンジ飯」を作って紹介することによって、若い女性の認知と関心が高まり、動画広告配信を実施した週で売上前年比が 105% となりました。
おでんの販売促進では、YouTube のキャンペーンにも起用されている、ジャニーズJr. の SixTONES を起用した動画広告制作・配信しました。
その結果、動画広告配信を実施した週のおでんの売上前年比が、127% と驚くべき結果となりました。さらに、この動画広告を公開してからすぐに、YouTube のコメント欄や、SNS を通じて、お客様からたくさんのコメントをいただきました。「アプリをダウンロードした」「この動画をきっかけに初めてコンビニのおでんを食べた」「低カロリーで満足感がすごい」といった、とても大きな反響をいただくことができました。
若い方だけではなく、上の年齢層の方々に向けても、YouTube を活用しています。「カラダへの想い この手から」シリーズで、清水ミチコさんを起用したお客様の疑問に答える動画を制作・配信しています。
第 1 弾として、サンドウィッチ、おにぎり、お弁当の製造過程を紹介する動画広告を制作・配信しました。
第 2 弾として、保存料・合成着色料不使用について紹介する動画広告も展開しました。
第 1 弾については、クリック率 65 歳以上が 1 %以上となり、他の年齢層に比べて、とても大きな反響を得ました。加えて、来店率については、45 歳以上が 19.5% となり、65 歳以上のみだけではなく、さらに幅広い年齢層に来店いただけました。第 2 弾については、クリック率は第 1 弾と同様に 65 歳以上が 1% 、来店率については、45 歳以上が 31.9% となり、第 1 弾の 1.6 倍となりました。
前回の反響を参考にして、子どもを持つ方向けに、セブン-イレブンの取り組みをもっとわかりやすい表現やクリエイティブにしたことで、お客様に受け入れられた結果だと考えています。
3. メーカー共同販促改革―メーカーとの共同販促でセブン-イレブンならではの新価値を提案
「もっと近くで便利に」「もっとお客様のために」というテーマで、メーカーの皆様との共同販促の改革も行なっています。
1 つ目の事例は、健康需要の高まりで人気のセブンプレミアムのサラダチキンと、味の素のサムゲタンの共同販促です。
この動画は、単身で有職者の女性をターゲットにした YouTube の動画広告で、簡単に作れておいしいというメッセージを込めています。もともとは、味の素の営業部門と弊社の商品部門の2部門でこの動画広告を作りました。その結果、商品自体は売れたのですが、来店率などのデータが取れていませんでした。そこで、動画広告の効果を可視化するために、味の素も当社もデジタルマーケティングに精通した部門も入り、改めて YouTube で動画広告を配信しました。
その結果、この動画広告からの来店率 20.7% となり、サラダチキンとサムゲタンの併売率が実施前との比較で 111.1% となりました。
2 つ目の事例は、クリスマスに向けた「ななチキ」とコカ・コーラの共同販促です。子どもを持つ親をターゲットにした YouTube 動画広告で、クリスマスの家族団らんのひと時を演出しています。
この動画広告からの来店率は 22.8%、「ななチキ」とコカ・コーラ併売率は、200.0 % と、とても大きな成果となりました。もともと 12 月は揚げ物の売上が伸びる時期ですが、コカ・コーラとの共同販促によって、予想以上の売上増加となりました。
それぞれの商品のターゲットごとに、最適なタイミングで、最適なメッセージをお届けすることで来店につながり、かつメーカー商品との併売率も増加するという、お客様、メーカー、そしてセブン-イレブンの win-win-win の関係を築くことができました。
また、メーカー商品の継続購入につながる施策も強化しています。あるメーカー様の商品で、6 月のセブンイレブンアプリスタート時に、ダウンロードのプレゼント企画で、その商品の無料引き換えクーポンを配布しました。クーポンを利用いただいたお客様の 1 ヶ月前の購入経験を確認したところ、なんと 99% のお客様がその商品を購入していませんでした。そして今度は、そのクーポンをご利用いただいたお客様の 1 ヶ月後の該当商品の継続購入を確認したところ、6% の方が継続購入していました。
つまり、ほとんどのお客様がその商品を購入していなかったのですが、クーポン施策によってお客様にその商品の良さに気が付いていただき、その上で継続して選ばれるようになったのではないかと考えています。
まとめ
今回は、もっと「近くて便利」なお店であるための、お客様のためのセブン-イレブンのデジタル戦略として 3 つのポイントをご紹介いたしました。
1. 組織改革
セブン-イレブンは常にお客様と接し、お客様のご要望や利便性を追求するためにも、組織改革を行なっています。
2. デジタル改革
お客様のアプリやデジタル全般の利用状況などを理解し、よりお客様のご要望にお応えしていくためにも、デジタルマーケティングを推進していきます。
3. メーカー共同販促の改革
メーカー各社とさらなる連携強化を行ない、お客様により魅力的な商品を提供していきたいと考えています。
これからも、セブン-イレブンは、お客様に求められる「もっと便利なお店」を追求していきます。