小売業は、カスタマージャーニーの変化を敏感に感じる業態かもしれません。 Google では、生活者の変化を捉えながら、オンラインと実店舗双方のマーケティングに役立つツールやサポートを提供しています。
今回は、小売業におけるデジタルマーケティングに関する 4 本の記事を紹介します。これからの小売業の成長のヒントを探ってみてください。
1:「セブン‐イレブンアプリ」は UX とデータ基盤をどう整備したのか —— POS データとも連携で One to One マーケティングの起点に
株式会社セブン-イレブン・ジャパンでは、画一的なマスマーケティングが限界を迎え、地域や立地、個店別のきめ細かな対応が求められていました。
そこで、2018 年にローンチした「セブン‐イレブンアプリ」を通じて生活者の興味関心やインサイトを把握し、より精緻なマーケティングにつなげようと試みました。
まずはアプリの継続的な利用を促すために、ユーザビリティを改善。 Google が自社プロダクトの UI/UX 改善に使っている「Design Sprint」というフレームワークを活用し、Google とともに社内でワークショップを開催。アプリの評価を大きく改善させました。
ユーザビリティ改善と同時に、マーケティングに活用するデータや施策基盤の整備、構築も進めました。同社の ID-POS データ(顧客 ID と紐付いた購買データ)基盤と Google 広告のアカウントを連携することで、顧客の購買データに基づいたデジタル広告の配信や、広告接触ログと購買データを加味した効果検証も可能になりました。
これらの基盤整備により、同様の興味関心を持つ一定数のスモールマスに対してデジタル広告やクーポンを個別に配信したり、ID-POS データを機械学習で分析したりすることで、購入回数や単価を高めて LTV の最大化を図れるようになったのです。
2:明治は本社主導のマーケティングで海外進出に挑戦、トライアルの知見を現地にも展開
次に紹介するのは、株式会社明治によるベトナム進出の事例です。現地でのチョコレート菓子の販売拡大に取り組みました。
明治は、海外進出強化の一環として Googleと連携。現地の代理店ではなく、国内の本社主導でマーケティング戦略をマネジメントしました。これにより、国を越えて社内のコミュニケーションが円滑になり、またこのトライアルが成功すれば、ノウハウを現地の代理店などにも展開できると考えたのです。
東南アジア 5 カ国と中国を対象とした調査によると、ベトナムは YouTube の利用率が高い地域の 1 つ(*1)で、視聴時間の長さも世界の上位 5 カ国に入ります(*2)。そのため明治では、 YouTube 広告を活用したブランディング施策を実施しました。
6 秒のバンパー広告と、より長尺の TrueView インストリーム広告を併用し、前者ではリーチを広げ、後者では小売店への送客を促すメッセージを組み込みました。これを小売店の半径 5km 以内に滞在すると想定される YouTube 視聴者へ配信することで、小売店への送客を促したのです。
店舗の POS データで送客効果を検証したところ、一部商品では、施策前後での売り上げが最大 310% 伸長。また Google の「ブランドリフト調査」では、当該エリアのブランド認知は業界トップレベルの伸びを確認できました。
3:マーケティング担当者に聞いた、Google 広告をゼロから始めてわかったこと —— 三栄電子と井野屋の事例
Google のサービスを利用して初めてのデジタルマーケティングに挑戦した中小企業を取り上げました。
革製品を製造販売する井野屋は、以前は他社への卸売が売り上げの中心でした。しかし自社でもより良い商品を作りたいとの思いから、2019 年に EC サイトをリニューアル。自社商品の販売拡大を検討する中で、コロナ禍の影響もあり、EC により力を入れるべく Google の検索広告を始めました。
広告で EC の売り上げが上がるのか、社内からは懐疑的な声もありましたが、結果的に EC サイトでの売り上げは 2 倍(広告開始前の年間比較)に成長。EC だけではなく、広告を見て店舗に足を運んだ人もいるなど、成果を実感できたそうです。
またマーケティング担当者によると、Google 広告を運用する中でデータを分析し、キーワード選定などを試行錯誤することで、社内で新たな商品開発への提案をしたり、過去に廃番になった商品を再販できないかといった相談を持ちかけたりできるようにもなったと言います。
記事では井野屋の他に、電子部品の専門商社である三栄電子の事例や、Google が中小企業向けに提供しているツールやサポート内容を紹介しています。
4:調べる、検討する、買う時の Google とのタッチポイント:2022 小売業界向けデジタルマーケティングガイド
ここまで、小売業界における各社のデジタルマーケティング事例を取り上げてきました。最後は、生活者の情報探索や購買行動について紹介します。US 版 Think with Google の記事を翻訳、編集したこの記事では、Google の各種サービスとのタッチポイントの分析から、小売業がビジネスを成長させるためのヒントを探ります。
生活者は、YouTube 動画や Google の画像検索で新しいブランドや商品を見つけ、検索やレビュー動画で商品を比較し、候補を絞っていきます。日本を含む 16 カ国での調査では、実店舗あるいは EC サイトで購入予定の商品を検索するときに、40% 以上が Google を使うと回答(*3)。また米国の消費者の 80% 以上が、YouTube クリエイターが「製品とブランドについて最も役に立つ情報を提供する」と答えました(*4)。
さらに、実際に購入する段階では、購入手順のわかりやすさなど「便利さ」が鍵です。人々は Googleマップで最寄りの実店舗の在庫の有無を確認したり、Google のショッピングタブで EC での商品価格を比較したりします。16カ 国対象の調査では、31% の人が、在庫や配送の問題を避けるために、事前にインターネットで調べると答えました(*5)。
このように、オンラインか実店舗かを問わず、生活者へ適切なタイミングと場所でアプローチすることが重要になっています。ここ数年で大きく変化したカスタマージャーニーに合わせて、適切な買い物体験を提供できるように、アプローチすることが大切です。
この記事を収録した「2022 小売業界向けデジタルマーケティングガイド」では他にも、EC の整備やデジタル広告による実店舗への集客など、US 版 Think with Google の 6 本の記事を翻訳しました。小売業のマーケティングに役立つ示唆をまとめています。
マーケティングは、生活者の行動と共に進化し続ける必要があります。今回紹介した 4 本の記事を参考に、自社のデジタルマーケティングに活かせるポイントを探ってみてもらえればと思います。
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