生活者のメディア接触時間の中におけるモバイルが占める比率は拡大しており、ある調査によると、既に日本国内の平均的なメディア接触時間の 1/3 がモバイルによるものです(*1)。また、そのモバイルとの接触に使われている時間の内、 87% をモバイルアプリの利用が占めています(*2)。
こうしたメディア環境の変化に合わせて、楽天市場でもお客様の購入回数を増やし、優良顧客を増加させるため、モバイルアプリの活用に力を入れています。
今回、事例としてご紹介する楽天市場はモバイルアプリからの売上を伸ばすため、楽天市場アプリの利用客に過去にモバイルアプリで閲覧した商品やサービスを含む広告を表示することでモバイルアプリの利用を促進する施策(動的リマーケティング)を実施しました。結果として、販売(コンバージョン)を大きく増加させることに成功しています。
楽天市場がモバイルアプリに注力する背景
インターネット通販が楽しめる総合ショッピングモールの楽天市場では、Web とアプリ両方の販路をもっており、両方を重要なマーケティングチャネルとして力を入れています。しかし、一般的にはそれぞれにそれぞれに下記の長所と短所があります。
モバイルアプリにはその表示速度、エンゲージメント、使い勝手などの長所から、一度獲得した顧客に何度も使ってもらうことで、優良顧客化という狙いがあります。
実際に楽天市場においても、アプリを保持するユーザーは、そうでないユーザーと比較して、年間販売金額が大幅に高くなる傾向が確認されており、アプリに対する投資がこのことから本格化するようになりました。
経緯と施策内容
前述の流れから、楽天市場ではモバイルアプリのユーザーインターフェース改善に継続的にに取組み続けています。実際に、Google Play 上での評価は 2016 年の 1 月に 4.0 だったものが、2019 年 2 月現在で 4.2 まで落ちることなく継続的に向上しており、それに伴いダウンロード数も順調に増加しています。
しかし、これまで既存ユーザー向けの販売促進のための Google ディスプレイ ネットワークで行われたリマーケティング施策は Web 上で完結しており、アプリ領域の活用には至っていませんでした。
そこで、質の高いモバイルアプリの利用客に過去にモバイルアプリで閲覧した商品やサービスを含む広告を表示することでモバイルアプリの利用を促進する施策(動的リマーケティング)を実施することで、このリマーケティング施策をアプリ面にも拡大させることにしました。
また、技術実装の上では、ユーザーが広告をクリックした時に、速やかに楽天市場のアプリ内の関連商品ページに簡単に移動できるよう、App LinksとUniversal Links (*3) に対応し、Webとアプリの両面でのリンクに対応するランディングページの整備を行いました。
結果
結果として、2018 年の Google ディスプレイ ネットワークにおける広告展開においては、Web 領域のディスプレイキャンペーンが昨年に対して、CPA(目標コンバージョン単価) や ROAS(目標広告費用対効果) などは自動最適化機能の活用によって同水準を保ちながら、モバイルアプリからの販売(コンバージョン)数の増加によって全体の販売を昨年対比で 35% 押し上げるとに成功しています(下図)
図:Google ディスプレイ ネットワーク経由販売の増加
今後ー今回の施策を担当した楽天 野本氏より
楽天市場では、顧客に良い購買体験を提供するために、今後もより一層モバイルアプリを通じた販売促進に注力する考えです。またこれからは、インストールの獲得という従来の施策に加えて、以下のようなアプリを利用している既存ユーザーに対する施策を強化します。
- 検索結果から直接モバイルアプリの商品ページに移動を可能にすることで、(モバイル)Web の長所であるユーザー数の多さとモバイルアプリの長所である体験を組み合わせる
- モバイルアプリの利用状況に応じた広告配信(モバイルアプリの休眠復帰を目的とした広告配信など)
(左から)
近谷 康 氏 マーケットプレイス事業 マーケティング部 チャネルマーケティングセクション シニアマネージャー
野本 翼 氏 マーケットプレイス事業 マーケティング部 サーチエンジンマーケティンググループ ディスプレイ広告チーム アシスタントマネージャー
杉山 勇人 氏 マーケットプレイス事業 マーケティング部 サーチエンジンマーケティンググループ ディスプレイ広告チーム