コレクションの最終回は、モバイルサイトでアプリ体験を提供するための最新ソリューション、PWA についてご紹介します。その中で、サイトとアプリの位置づけ、PWA のマーケティングメリット、そして効果を、既にビジネスの成功につなげている最先端の導入企業事例からご紹介します。
サイトかアプリかの二者択一ではなく、サイトとアプリを並列してモバイル戦略を考える
マーケターの皆さまから、「 モバイルサイトとモバイルアプリのどちらを優先してリソースを配分すべきか 」という質問をしばしばいただきます。
確かにアプリは機能的であり、かつエンゲージメント力も高いため、ユーザーがモバイルに費やす時間の 87% をアプリが占めているという実情があります1。
しかし、アプリに使う時間の 70% がゲーム、エンタメ、ツールであることから、アプリは開発やメンテナンスのコストを要する割には、リーチできるユーザーが限定的という側面もあります。このため、アプリ利用頻度が高いカテゴリー以外の企業にとっては、サイトのほうが効率がよいケースもあるのです。
すでに、 think with Google「 モバイルアプリの利用実態とアプリマーケティングを考える 」 コレクションの「 第 2 回:日本のアプリ利用の実態 」で説明したように、日本では明確な目的を持って情報を検索 / 閲覧する際、モバイルアプリよりウェブサイトを活発に利用する傾向があるため、利用してもらいたい目的に応じてアプリとサイトを使い分ける必要があります。
上記を踏まえつつ、モバイルサイトを軸にモバイル戦略を考えた場合、プッシュ通知やオフライン利用などアプリの強みをモバイルサイトでも提供することができれば、ユーザーエンゲージメントの強化やビジネス機会の拡大といった大きなメリットにつながります。これを目的として、 Google はPWA の提供を開始しました。PWA とは、「 プログレッシブ ウェブ アプリ 」 の略で、ウェブサイトとアプリの両方の利点を併せ持ったウェブ機能です。
PWA のメリットとは?
PWA の採用により、ウェブとアプリ双方の強みを兼ね備えたモバイルサイトを構築することができます。
- ウェブの利点:
- どこからでもワンクリックでアクセス
- ダウンロードしなくても、すぐにコンテンツが見られる
- プラットフォームに依存しない
- アプリの利点:
- ホーム画面アイコンからのアクセス
- オフラインでも使える
- プッシュ通知でユーザーをエンゲージできる
PWA のメリット
- ローカルキャッシュによる高速表示
- オフライン使用が可能
- アイコンをホーム画面へ追加できる
- プッシュ通知が可能
- 決済の簡略化
- オートまたはワンタップでのログイン
- Payment Request API
- Credential Management API
PWA のマーケティング効果
1) モバイルサイト起動時間が 75% 減少、プッシュ開封率が 31% 上昇した SUUMO
株式会社リクルート住まいカンパニーが運営する、住宅・不動産購入や売買をサポートする情報サイト 「 SUUMO 」では、「 ホーム画面に追加 」 「 オフライン キャッシュ 」の 2 機能を Android の Chrome ブラウザに追加しました。またホーム画面にブックマーク情報を置くことで、オフライン環境下でも当該ブックマークのウェブページ閲覧や、バックグラウンドでの同期が可能になりました。この結果、同社のモバイルサイトの起動時間は 75% 減少、プッシュ開封率は 31% 上昇しました。こうしたマーケティング成果を受け、同社では、今後プッシュ通知などさらなる機能の追加も予定しています2。
2) ホーム画面からのコンバージョン率を 213% 増加させたタウンワーク
同じリクルートグループである、株式会社リクルートスタッフィングが運営するアルバイト ・ パート情報サイト 「 タウンワーク 」 では、通知やホーム画面からのアイコンを導入( 参考動画 )することで、ホーム画面アイコンからのコンバージョン率( アルバイト応募など )を 213% 増やすことに成功しました。
さらなるビジネス機会の拡大に向けて、モバイルに最適化されたユーザー体験を提供すべく動きだしている企業の例をご紹介しました。皆さまの会社や部門が提供しているモバイルサイトの対応状況はいかがでしょうか。