生活者の 「 何かを知りたい 」 、 「 どこかに行きたい 」 、 「 何かのやり方を知りたい 」 、 「 何かを買いたい 」 と思った瞬間、すなわち Micro-Moments に必要とされている情報やメッセージを効率よく「届け」、ビジネス機会を拡大するには、企業にとってモバイルに最適化されたユーザー体験を提供することが欠かせなくなってきています。コレクションの第 1 回は、そうした背景について詳しく見てみたいと思います。
ユーザー行動の変化と Micro-Moments の出現
Google 検索では毎分 400 万回の検索が行われており、米国や日本をはじめとする 10 か国では、すでにスマートフォンからの検索件数がパソコンを上回っています 1 。スマートフォンの登場により、生活者は製品やサービスの購入を決定するまでに、モバイルを用いて様々な情報収集を行うようになりました。状況によっては、モバイルに加えて PC やタブレットなど複数のデバイスを利用したり、店舗やショールームに赴いたりと、購買行動が非線形化しています。
かつて生活者は、何かを欲した瞬間 ( たとえば 「 知りたい 」 、「 行きたい 」、「 やり方を知りたい 」、 「 買いたい 」と思った瞬間 )、それを解決するには誰かに聞いたり、店頭に行ったりするしかありませんでした。しかし現在では、何らかの欲求が生じた瞬間に、目の前にあるデバイスで瞬時に解決できるようになったのです。Google では、こうした瞬間を Micro-Moments(マイクロモーメント)と呼んでおり、マーケターが生活者の意図を読み取るうえでとても重要な瞬間だと考えています。
ビジネス機会の最大化には、生活者のマイクロモーメントを逃さず捉えることが重要です。マイクロモーメントを捉えるためには、「 見極める 」、「 届ける 」、「 測定する 」の 3 つのポイントが重要だとお伝えしましたが、今回のコレクションでは特に、生活者が探している情報やひらめきを効率的に 「 届ける 」 ことでビジネス機会を拡大する方法を考察します。
Micro-Moments を捉えて効率よく 「 届ける 」 ことで、ビジネス機会を拡大
現代のオンラインユーザーは、思い立ったその場でニーズを満たしたいと考え、スピーディーに決断を下します。67% のユーザーが、オンラインで情報収集できるようになったおかげで、数年前に比べ「 より速く 」 購入の意思決定ができるようになったと回答し、 59% のユーザーがモバイルサイトの表示速度が速く使いやすい企業から製品・サービスを購入する可能性が高いと答えています。このため、モバイルの画面サイズや利用シーンに合わせてデータ読み込み時間を短縮し、ユーザーインターフェースを最適化することで、ストレスなく情報にアクセスできる設計が非常に重要になってきます。
1 ) モバイルサイトの表示速度を高めることの重要性
情報をスピーディーに 「 届ける 」 には、サイトのデータ読み込み時間も重要な要素です。ある調査では 、サイトの表示が 1 秒遅れることで、下記の影響を受けるといいます2。
- ページビュー 11% 減少
- コンバージョン 7% 減少
- 顧客満足度 16% 減少
別の調査からは、サイトの表示に時間がかかるほど、離脱率も高まることが分かっています ( 下図参照 ) 。生活者の興味や関心を深掘りする重要なメッセージや情報をサイトに掲載していても、すべてのデータを読み込む前にユーザーが離脱してしまっては、大きなビジネス機会を失いかねません。
2 ) ユーザーインターフェースを最適化することの重要性
ユーザーインターフェースがモバイルに最適化されていないと、ユーザーはサイトの閲覧そのものをあきらめてしまったり、予約や購入の意図があっても途中で断念したりする可能性があります。「 購入までの手順が少ない 」、「 入力しやすい 」、「 手順がわかりやすい 」など、モバイルサイトやアプリで簡単に購入できる仕組みを構築している企業は、そうでない企業に比べ購入意向が高まると 58% の人が答えています。 3
ユーザーインターフェースを最適化してモバイルからのコンバージョンを大幅に増加することに成功した企業の例を見てみましょう。アルバイト求人サイト 「 ジョブセンス 」 を運営する株式会社リブセンスは、同サイトのユーザーインターフェースを見直すことで、モバイルからのコンバージョン ( アルバイト応募 ) 率を 56% 上昇させることに成功しました。
同社はコンバージョン数増加に向けて選任プロジェクトチームを立ち上げ、世界中の 100 以上の主要ウェブサイトを研究、さらに Google の提唱するモバイルサイト設計の指針を参考にしながら約 70 の改善策を考案しました。モバイル画面での操作性の向上、サイト内検索機能の提供、コンバージョン経路の再設計、フォーム入力項目の見直しなどがその一部です。
中でもコンバージョンに対する貢献度が最も高かったのが、モバイルサイトの応募フォームの簡略化です。求人を掲載するお客様と調整しつつ、同時に営業チームとも協力しあうなど社内外のサポートを得て、必須入力項目を可能な限り削り込み、応募フォームのボリュームを約半分に簡略化しました。その結果、ビジネス機会を拡大することに成功したのです。
生活者との接点として重要な役割を果たすモバイルデバイス。今ひとたび、自社が提供するモバイルサイトは生活者にとって真に使いやすいものなのか、下記の視点から見直してみませんか。
- サイトの表示速度は快適か
- 必要な情報が入手しやすく、ストレスなくサービスや製品の予約、購入手続きができるユーザーフレンドリーなインターフェースか
次回は、モバイルに最適化されたユーザー体験を創出するための実践的な内容について、いくつかの企業事例を取り上げながらご紹介していきます。