日本では子供の数が減少する一方、教育や学習に関連する検索数はむしろ増加傾向にあります。そして、通信教育や学習塾、家庭教師やオンライン学習など、学校外の教育サービス(「校外学習サービス」)に関する検索数も同様に増加しています。それらのサービスの利用意志決定において、インターネットはどのように活用されているのでしょうか
教育サービスを利用する際の購買行動におけるインターネット活用状況に関するキーポイント
- 母親の半数以上が教育サービスを検討する際の情報収集にインターネットを利用
- 母親の3人に1人は、インターネット上の情報だけで申し込みの意思決定を行う
- 子供本人も積極的に意思決定に関与(中学生の45%、高校生の63%)
(1)校外学習サービス利用の意思決定にはインターネットが与えている影響は
親や子供は「早い学齢から学習習慣を身につけさせたい」「受験に備えたい」「学校での成績を改善したい」といったきっかけで、校外学習サービスの利用を検討します。母親は“ママ友”の口コミを始め、企業からのダイレクトメール、テレビCMなど、様々な経路でサービスに関する情報を得ています。そして、母親の半数以上はインターネットでも情報収集をしていることが分かりました。12また母親の4人に1人は、インターネットを通じて現在利用しているサービスを知ったと答えています。
母親の中には、利用するサービスの候補を決めた後、実際に申し込みをするまでに、サービスに関する資料請求、無料体験授業や説明会への参加など、様々な事前確認プロセスを踏む人もいます。しかし母親の3人に1人はそのようなプロセスを踏まず、インターネット上の情報だけでサービスに申し込んでいることが分かりました。
教育サービスは経験財であり、利用前の情報収集段階ではサービスの品質を判断することが難しいため、母親の半数以上が2週間以上かけて慎重に検討します。3しかしインターネット上の情報を元に意思決定を行う母親は増えており、教育サービスの提供者にとっては、インターネット上でのユーザーコミュニケーションや申し込みへの動線を確保していくことが益々重要になると考えられます。
(2)意思決定者は誰なのか
ところでサービスの意思決定には決裁者である親だけでなく、実際の利用者である子供本人も関与しています。子供本人の関与度合いは学年が上がるに連れて高くなり、高校生においては6割以上の子供が意思決定に関わるようになりました。4また中高生のスマートフォン利用率は増えており、子供本人も学習サービスに関する情報をインターネットで検索するようになっています。教育サービスの提供者にとっては、決裁者である親だけでなく、子供本人に対するコミュニケーションもより重要になると考えられます。
次に、校外学習(教育)サービス自体のデジタル化トレンドを見ていきたいと思います。
オンライン学習サービスの利用状況に関するキーポイント
- 高校生の4人に1人がオンライン学習サービスを利用。中でも成績上位層や習い事にお金をかけていない層で利用率が高い
- 「オンライン学習」の検索数は急上昇。「学習塾」に関する検索数を上回る
学校外での学習手段は、これまで通信教育や学習塾のようなオフラインの形態が一般的でしたが、近年ではオンラインで学習できるサービスも登場し、ユーザーが受けられるサービスの選択肢は広がっています。例えば、学校の授業を予習・復習する時、学習塾の授業で分からない単元がある時に、手持ちのデバイス(通信機器)で解説動画を視聴するユーザーが出てきています。
現在、高校生においては4人に1人がオンライン学習サービスを利用しています。但し中学生以下の利用率は限定的であり、「学習習慣が身に付いていないうちは、PCやスマートフォンでの学習は子供の集中力を削ぐ5」などといった親の懸念が表れています。
また高校生の中でも、学校の成績が上位の層や、習い事にあまりお金をかけていない層などにおいて、オンライン学習の利用率が特に高い傾向が見られます6)。自分の好きな時間に、自分が分からない単元の解説授業だけを、低価格で視聴できる点が支持されているようです。他方で、都心部と人口密度が低い地方部では、利用率に大きな差は見られませんでした。
オンライン学習に対する関心の高まりは、検索トレンドからも見ることが出来ます。通信教育や学習塾などの主要な学習形態と比較しても、オンライン学習の検索数は対昨年比で倍以上に伸びており、学習塾に関する検索数を上回りました。
校外学習サービスにおいて、サービス利用を検討する際の購買プロセスにおいてもインターネットの利用が大きな役割を果たすようになると同時に、サービスのデジタル化が進み、既に一部のユーザーにとっては「オンライン学習」が校外学習の中心となっています。学習習慣に対する懸念を感じるユーザーも一方で存在していますが、様々な学習形態が並存する中で、教育サービス提供者は提供価値やサービスの内容をインターネット上でも訴求していくことが重要になります。
こうしたインターネットユーザーに対するアプローチには、検索広告、ディスプレイ広告、YouTube広告を始めとするオンライン広告も、ぜひ積極的にご活用ください。
なお、この記事は、2016年2月10日にInsideAdWords-Japan公開されたものです。