第 1 回では、日本のアプリ利用の特徴をアジア諸国と比較してまとめました。第 2 回では、日本ではどのようなアプリが利用されているのか、その内側を更に詳しく見ていきたいと思います。
Nielsen の調査によれば、日本のスマホユーザーは利用時間のうち 83% をアプリに費やしており、さらにそのバランスは非常に偏ったもので、利用時間の 3 分の 2 以上をトップカテゴリーが占めているといいます。今回の調査からはどのような利用実態が見えてきたのでしょう。
最初に、どのアプリが頻繁かつ長時間利用されているのか、カテゴリー別に見ていきます。下の図は、横軸を利用頻度(毎日利用するスマホユーザーの割合)、縦軸を利用時間(分)としてマッピングしたものです。利用頻度と利用時間の双方が高いのは、「検索」「ゲーム」「ソーシャルネットワーク」「メッセージング / コミュニケーション」の 4 カテゴリーでした。
毎日のアプリ利用頻度と利用時間
第 1 回で見たように、日本のユーザーは、非常に積極的に 「 検索 」 を利用します。時間は少なくても利用率がとても高いことがグラフからわかります。1999 年の i モードの登場により、世界に先駆けてモバイル ・ インターネットの世界がいち早く実現した日本では、ケータイを使って情報にアクセスするという行為が日々の生活にあまねく浸透しました。これが、いまスマホの時代になっても引き継がれ、人々は「何かをしたい」とひらめく生活の中のさまざまな瞬間 ( Google ではこれを Micro-Moments と呼んでいます ) に、すぐスマホを手に取り検索アプリを使って情報を得ようとしているのではないでしょうか。
また、日本のアプリ利用を利用時間から見ると、動画や音楽などの 「 エンターテインメント 」 アプリが、前述した 「 ゲーム 」 アプリに匹敵するほど長い時間利用されていることがわかります。例えば YouTubeは、視聴時間のモバイル比率が 65 % まで伸びています。アプリの普及により、人々はさらに長時間モバイルで動画を視聴するようになっています。
2015 年と比較して、1 年でどのカテゴリーのアプリがより多く使われるようになったのかを見てみましょう。次のチャートは、当該カテゴリーの利用率 ( 毎日利用する( 1日最低 1 度は使う )スマホユーザーの割合 ) について、2015 年と 2016 年 の数字の差を比較したものです。一番利用頻度が伸びたのは、「 メッセージング / コミュニケーション 」 のカテゴリーです。これは、LINE に代表されるメッセージングアプリの急速な普及によるものと思われます。それに続いて利用頻度が伸びたカテゴリーは、「 エンターテインメント 」 です。これも前述のように、YouTube を始めとした動画視聴アプリの急速な普及が牽引しているものと思われます。日本におけるアプリの利用頻度は、今回調査した全てのカテゴリーにおいて昨年よりも高まっており、日本の人々の生活のなかにますますアプリが深く浸透してきていることが如実にうかがえます。
カテゴリー別の毎日利用するアプリ利用率の差分 ( 2015 年 - 2016 年)
さらに IPSOS の調査では、スマホを使う際の目的別に、アプリを使うか、それともモバイルサイトを利用するかという質問に答えてもらいました。下のグラフはその比率を示したものです。コミュニケーションや、日常生活で定期的に行う活動 ( ゲームや音楽鑑賞等 ) ではアプリが優先的に利用されているものの、はっきりと目的がある情報を検索 / 閲覧する際には、ウェブサイトも活発に利用されていることがわかります。ユーザーに利用してもらいたい目的に応じて、アプリとサイトの特性を使い分ける必要があると考えられます。
スマートフォンにおけるアプリとモバイルサイトの利用比率
日本のアプリユーザーの利用実態についてまとめ
- 最も利用頻度が高く、利用時間も長いカテゴリーのトップ 4 は 「 検索 」 「 ゲーム 」 「 ソーシャルネットワーク 」 「 メッセージング / コミュニケーション 」
- アプリを使って動画や音楽などのエンターテインメントを長時間楽しむ傾向
- 目的に応じた情報収集の場合、ユーザーはアプリよりもウェブサイトのほうを活発に利用する場合もある
第 3 回では、膨大なアプリマーケットの中から、ユーザーはどのように興味のあるアプリを「探し」、インストールするアプリを「選択」しているのか、その決断までに至る道筋をデータとともに見ていきたいと思います。