人々が「何かをしたい」と思い、反射的に目の前にあるデバイスで調べる、買うといった行動に出る瞬間をマイクロモーメントといいます。このマイクロモーメントを活かし、ビジネス機会につなげるためには、マーケティングの打ち手としてのモバイル広告が極めて重要です。この実態を分析することで、マイクロモーメントが発生するメカニズムを明らかにし、モバイル広告の価値について考察します。
調査から見るマイクロモーメントの実態
マイクロモーメントは、いつどのように発生するのでしょうか? 下のチャートは、2015 年 11 月に行なったマイクロモーメントが発生する頻度に関する調査結果です。スマートフォンを保有している男女 18 - 59 才の約 4,000 人が対象です。
生活者が自覚している場面だけでも、何かについて「知りたい」「したい」と思ったその時に調べるという行動は頻繁に起きていることがわかります。具体的には、90% 弱が 1 週間に 1 回以上、そのうちなかでも 70% の人が毎日のように行うと回答しています。さらにその中で 26% は、 1 日に 6 回以上調べているのです。
これは若年層だけに見られるケースなのでしょうか? 以下は性年代別に集計したブレイクダウンした結果です。
この調査結果から、「調べる」という行動の頻度は、性別や年代によってあまり大きく変わらないことが見てとれます。では、日々発生しているマイクロモーメントの「きっかけ」はどこにあるのでしょう。
上記のグラフから、マイクロモーメントは、様々なコミュニケーションの中で発生していることがわかります。
水色 (家族や知人との直接のコミュニケーション) や緑色(テレビ番組やウェブサイトなどの知らないことを見聞きすることが多いメディア接触)のシーンでマイクロモーメントが多く発生するようです。意外なようですが、黄緑色で示される、SNS 上で知り合いにおすすめされた内容に反応している人は比較的少ないということがわかります。
次にマーケターにとって最もコントロールしやすいメディアである広告について見ていきます。
広告をきっかけとして「何かをしたい」という気分になる人は、対面のコミュニケーションやテレビやネット広告以外のコンテンツに比較して少ないように感じられます。しかし実際はどうなのでしょうか。さらに詳しく分析してみました。
上記は先ほどのグラフのデータのクロス分析結果です。マイクロモーメントの発生頻度別に、テレビ・パソコン・スマートフォンで目にした広告が何かについて調べるきっかけになったか比較しています。
調べる頻度が 1 日に3 回以上の人は、より多く広告に影響されて調べていることがわかります。さらに、調べる頻度が 1 日 6 回以上の人は 25% 弱、つまり、4 人に 1 人は広告をきっかけにして調べているのです。
人々の「何かを知りたい」「何かをしたい」という気持ちは、どのように満たされるのでしょう?
マイクロモーメントが顕在化してきた背景は、多くの人がスマートフォンを持ち、気になったことについてすぐ確認できるようになったためでしょう。これは調査結果にも表れており、調査対象者の 80% がスマートフォンを使うと答えました。
マイクロモーメントを活かすために、なぜモバイル広告が重要なのか
このような調査から、マイクロモーメントが生じるメカニズムとして以下の事実が明らかになりました。
- 家族・知人との会話バイラルや、テレビ・ネット広告ではないメディア情報がきっかけになりやすい
- マイクロモーメントが生じやすい人ほど、広告によるきっかけが生じやすい
- 何かを知ろうと行動する人の8割は、スマートフォンを使っている
マイクロモーメントのメカニズムを図解化してみました。
オンライン広告やオフライン広告を含んだ様々なメディア情報が「刺激」となり、その多様な刺激から、何かをしたいという「欲求」が生じます。そして、調べるという「反応」の多くがスマートフォンで発生しています。
したがって、マイクロモーメントを見極め、適切な情報を発信するマーケティングコミュニケーションにおいては、スマートフォンの活用が極めて重要な施策となります。
さらに、マイクロモーメントのきっかけ (刺激) は「広告を含む」メディア情報だということもわかりました。それは偶発的なものではなく、マーケターがプランニングできるコントロール可能なモーメントです。
そうであれば、刺激もスマートフォンで与えることが効率的ではないでしょうか。マイクロモーメントに対する「反応」のほとんどがスマートフォンで発生しているからです。
しかし、テレビやパソコンに比べ表示画面も小さいスマートフォン広告は、本当に効果的なのかという懐疑的な見方もあるかもしれません。Google では、モバイル検索広告のブランディング効果の把握に代表されるように、モバイル検索広告が「マイクロモーメント」のきっかけに寄与するのかについての精緻な検証も進めています。