マーケターの最も重要な役割のひとつとして、顧客を深く理解し、関係を築き上げることがあります。あらゆるものがデジタル化され、ユーザーのデータやインサイトのシグナルに簡単にアクセスできるようになった今、これは比較的容易に実現できるようになりました。
とはいえ、「データを読み解く」ことは必ずしも簡単ではありません。膨大な情報からノイズを除去し、価値ある情報を探り当てるために苦心することもあるでしょう。また、あまりにもシグナルが弱いため、全体像をイメージしづらい場合もあるかもしれません。
たとえ世界中のすべてのデータにアクセスすることができたとしても、インサイトを正しく見極めないことにはビジネスを成長させることはできません。そのために不可欠になるのがスマートなデータ分析、さらにそれを実現する適切なアプローチとツールです。
分散したデータを 1 つにまとめれば、ユーザーが真に求めているものを把握し、提供することが可能になります。このことはビジネスの成長にもつながります。
統合し、測定する
競争の激しい今日のマーケティングで成果を出すには、組織やチャネルを超えてデータ統合し、ユーザーについて大局的な視点から捉える必要があります。分散したデータを 1 つにまとめれば、ユーザーが真に求めているものを把握し、提供することが可能になります。このことはビジネスの成長にもつながります。
具体的なアプローチとしては、一定のプロセスを繰り返すことをおすすめします。最初に、ウェブとアプリの解析ソリューションを CRM テクノロジーと連携させます。マーケティング分野におけるリーダーは、そうでない人に比べ、テクノロジーの統合を 1.6 倍重視しており、また高度なテクノロジーを 1.2 倍使いこなしています(*1)。ビジネス リーダーは、重要なマーケティング指標やダッシュボードを頻繁に見直しており、さまざまなタッチポイントを捉えてユーザーにアクセスできるよう、統合的なテクノロジー プラットフォームを重視しています。
モバイル チームとアプリ チームの一体化
タッチポイントの活用に加え、アプリ担当チームとモバイル ウェブ担当チームを統合することもおすすめします。今日の生活者は、魅力的なものを「発見する」ことを期待しています。このため、ショッピングにおける情報収集の重要性はいっそう高まっています。最高の商品やセール、役立つレビューなどを求めて、さまざまなアプリやモバイルサイトで情報収集を行った結果、最終的な判断を下すのです。
これまで、ロイヤルティの高い顧客に対するプラットフォームとして、最も有効だと考えられてきたのがアプリです。しかし、どれほど熱烈なユーザーでも、スマートフォンにアプリをインストールしてもらうことは容易ではありません。最近 Google が行った調査では、回答者の 87% が好きなブランドであってもアプリをインストールするとは限らないと答えています(*2)。また、ユーザーの 53% が、お気に入りのブランドのアプリをインストールしていないと回答しています(*3)。
アプリとモバイルサイトの区別も曖昧になるいっぽうです。モバイルでの平均的なショッピング セッションでは、アプリとモバイルサイトを合わせ、最低 6 回アクセスが行われます。そして全セッションのほぼ半数で、モバイルサイトとアプリ間の移動が発生しています(*4)。
このような生活者の行動に応えるには、アプリ チームとモバイル ウェブ チームが緊密に連携する必要があります。プラットフォームをまたいでシームレスに情報収集や商品の購入ができることが期待されているためです。しかし現実には、それぞれのチーム内で完結している組織がほとんどで、完璧にシームレスなユーザー エクスペリエンスを提供できていない状況です。
無駄を見直し売上を増やす
どのような組織でも、マーケターの 90% 近くが、目的を達成するにはチャネルやデバイスをまたいだユーザー ジャーニーの把握が不可欠だと認識しています(*5)。想定するターゲットを理解し、適切なタイミングでアプローチするために、データとテクノロジーの統合を進めている企業として、バイエルやスプリントが挙げられます。
バイエルは、コンテンツ管理システムと解析システムを連携させ、単一の顧客 ID でさまざまな顧客行動を記録・分析できる、マーケティング インサイト プラットフォームの構築から着手しました。次に、マーケティング、データ、およびテクノロジーに詳しいメンバーを集め、デジタル測定に特化した専門チームを設けました。その結果、不要な支出を 30% 削減し、さらに顧客エンゲージメントを 50% 以上も改善することができました(*6)。
スプリントは、実店舗への集客に有料検索が及ぼす効果を調べるテストを行いました。デジタル広告への投資が、オンラインのコンバージョンだけでなく、小売店のトラフィックや売上向上にも役立っているのか測るためです。8 週間にわたり有料検索への投資を増額した結果、デジタルでの売上は 20%、店頭売上は 32% 増加していたことがわかりました(*7)。
テクノロジーを味方につける
ここで紹介したスプリントやバイエルなどに共通するのが、機械学習などの最新の技術をうまく活用しているという点です。
組み込まれた AI や機械学習により、有益なインサイトを迅速に得ることが可能になり、具体的な施策に時間を振り向けることができます。効果的なクリエイティブ メッセージの策定や、オーディエンスに応じた広告の使い分けについても、機械学習は強みを発揮します。さらに、プラットフォームを統合することにより、チーム間の連携も深まります。部門や地域を問わず、誰もが同じインサイトを共有することができるからです。
今の時代のマーケティングでは、適切なタイミングで、的確なオーディエンスに向けて有用なアプローチを行うことが欠かせません。これを実現し、利用可能なデータを最大限活用するために、意欲あふれるマーケターは最新のデータ分析テクノロジーを積極的に導入していくことでしょう。