さまざまなネットビジネスの中でも、モバイルのゲームアプリは世界に展開しやすいビジネスと言えるでしょう。海外向けマーケティングを実施するゲームアプリは増加しており、海外市場で成功する日本発のアプリも続々と登場しています。
国内はもちろん、海外ではなおさら、ユーザーにアプリを認知してもらい、インストールにつなげるためにプロモーションは欠かせません。言語や文化、市場ニーズが異なる海外でプロモーションを成功させるには、何が必要なのでしょうか。
今回は、アプリのインストールなどを促進できる Google のマーケティングツール「アプリキャンペーン」を利用して、モバイル ゲームアプリ「イケメン戦国◆時をかける恋」(以下「イケメン戦国」)の米国でのプロモーションを成功させた株式会社サイバードの事例を紹介します。
「イケメン戦国」日本でアプリキャンペーン成功、米国展開へ
サイバードは、モバイルゲームやメディアを軸に事業展開しており、数多くのスマートフォンアプリを提供しています。中でも「イケメンシリーズ」は、女性向け恋愛ゲームとして全世界で累計 2,500 万人以上のユーザーに支持されるヒットシリーズであり、「イケメン戦国」はシリーズの人気タイトルの 1 つです。
(c)CYBIRD
戦国時代にタイムスリップし、戦国武将との恋愛を楽しむというゲームで、多くのファンを獲得しています。イケメンシリーズとして初めて、プロ声優による音声を導入したアプリで、基本プレイは無料のアイテム課金制です。
ローンチ後はあまりプロモーションをしなくても順調にユーザーを伸ばしていましたが、半年ほど経つと、自然流入によるユーザー増が鈍化してきました。そのため、アプリキャンペーンを活用したプロモーションを行い、ユーザーを拡大しました。
アプリキャンペーンとは、アプリのインストールや有料ユーザーを増やすためのキャンペーンを簡単に展開できる、Google の機械学習エンジンを活用したツールです。数行の広告文と入札単価などを設定するだけで、Google 検索、Google Play、YouTube、Google ディスプレイネットワークなどを通じてターゲットユーザーにリーチできるよう、キャンペーンが自動的に最適化されます。
サイバードは、「イケメン戦国」のさらなるユーザー拡大を目指し、米国向けの英語版も開発。米国でも、アプリキャンペーンを活用したプロモーションを行うことに決めました。
米 Google のチームも戦略策定に参加 アプリキャンペーンを最適化
サイバードは以前から、他のゲームアプリを海外でマネタイズした実績がありました。日本の歴史を背景にした「イケメン戦国」では、アプリのクリエイティブを米国のユーザーのテイストに合わせて作成しなおすなどの調整を行いました。
プロモーション戦略については、日本 Google チームに加え、米国 Google のゲームアプリスペシャリストもサポートに加わり、米国マーケットの動向や最近のトレンドの紹介、米国での成功事例を基にした新機能を提案。広告の配信パフォーマンスを確認しながら、アプリキャンペーンの最適化に共同で取り組みました。
サイバードのマーケティング統括部広告宣伝部の藤原部長(左)と森下氏
米国向けのプロモーションは、低いインストール単価で多くのユーザーを獲得することを目的にスタートし、課金状況などのアプリ内行動のデータを集めながら展開しました。
次に、費用対効果(ROAS)を向上させるため、アプリキャンペーンの広告配信の主力を、特定のアプリ内アクションをコンバージョンとした目標獲得単価(tCPA)に最適化する設定に変更しました。
また、Google からアドバイスを受け、ユーザーが初回課金するまでの日数に合わせてコンバージョンの計測期間を 90 日から 14 日に変更するなど、機械学習による効果をさらに改善するための細かい調整も実施しました。
約 5 か月で ROAS が 30% から 90% に向上
サイバードではユーザーの LTV(Life Time Value)基準を課金率に置いています。現在は国内外ともに ROAS を重視したプロモーションを実施しており、獲得当月の ROAS が国内では 50%、海外では 70% に到達することを広告評価の基準としています。米国でのプロモーションも開始当初は ROAS は 30% ほどでしたが、機械学習の最適化やクリエイティブ最適化によって 5 か月ほどで 90% まで向上しました。
サイバードでは「イケメン戦国」の知見を活かして、「イケメンシリーズ」アプリはもちろん、他のさまざまなアプリでも、アプリキャンペーンを活用したプロモーションを検討しています。
サイバードの森下 恵氏(マーケティング統括部 広告宣伝部)は、「Google からのアドバイスも含め、機械学習を最適化させるための調整によって、アプリキャンペーンで質の高いユーザーを効率的に獲得できるようになりました」と語ります。
同統括部長の藤原 健太氏は、「今後はさらにアプリ内イベントの分析などを進め、さらに獲得ユーザーの質と量を継続的に向上させていきたいと考えています」と述べています。
左から Google のユゥ、サイバードの藤原氏と森下氏
ウィリアム・プランク
アプリ ソリューション チーム グローバルゲームビジネスリード