第 1 回の 2018 年 生活者と商品・サービスの絆を築くマーケティングへの示唆では「最新の生活者像」について分析しました。第 2 回目では「生活者との間に商品やサービスの絆を築き上げるマーケティング」について考察します。
第 2 回目は、現代の生活者の高まる期待に応えることで、業績を大きく高めた大手カタログ通販ベルーナの戦略を 3 つの観点から分析します。ベルーナは本来、紙のカタログ経由の販売が中心でしたが、生活者のオンラインシフトに従い、現在ではインターネット販売が堅調に伸びています。役員が率先して海外に出向き最新のマーケティングを学び、さらにインターネット広告代理店である株式会社メディックスと協力することで、大きな変革に舵をとることができました。
カスタマージャーニーを包括的に捉える - 販売に直結した投資への偏重から、広告投資を全体的に最適化
これまでベルーナは、販売に直結した広告に注力して投資を行っていました。しかし第 1 回目で見たように、空き時間を使ってスマートフォンで情報収集する現在の生活者とブランドの接点は、飛躍的に増加し、変化を続けています。これに対応し、機械学習テクノロジーを活用することでマーケティングを加速させるべく、ベルーナは以下の 5 つの施策を実施。これにより、人力では不可能だった、広告投資全体を包含した自動最適化を実現することができました。
- 分散していた 7 つの広告データを 1 つに統合し、より多くの情報を機械学習に活用(AdWords 基本推奨設定)
- 販売商品のページから自動的に効果的な訴求キーワードを抽出し、広告出稿に反映
- 販売に直結した広告だけでなく、最終的に販売に至るまでのオンライン接点をすべて把握
- それぞれのオンライン接点を公平かつ即時に評価 (AdWords とGoogle Analytics 360 の連携)
- 接点の評価に合わせて、投資を自動で最適化(目標広告費用対効果に基づく自動入札)
広告投資の全体最適化を行ったことで、Google AdWords からの売上金額は +132% と上昇しました1。これを可能にしたのは、広告のバリエーションの増加です。従来は、販売に直結する購入意向の高い生活者にのみを対象に、限定されたキーワードで広告を出稿していましたが、機械学習によって生活者のカスタマージャーニーを検討段階から包括的に捉えることできるようになったため、キーワードの種類は約 4 倍に拡大しました。
コミュニケーションをパーソナライズ
現在の生活者は、無意識のうちに自分に最適化されたコミュニケーションを求めています。Google による調査では、個人用スマートフォン保有者の半数近くが、スマートフォンで興味のないサービスや商品の広告が表示された場合、その商品やサービスの印象が低下すると回答しています2。
このような状況を踏まえ、ベルーナはすでに自社サイトを訪問した顧客や、商品を購入した顧客に似た特性を持つ見込み顧客に向けた、効率的な広告出稿を行いました。これにより、ブランドイメージの悪化を避けるだけでなく、最適な見込み顧客を対象に投資を行うことが可能になったのです。今後も同社は、より多くの情報をもとにパーソナライズしたコミュニケーションを強化すべく、自社データと広告データをクラウド上で統合し、機械学習による分析を進めていく方針です。
快適なブランド体験を提供
現在の生活者は、「何かをしたい」と考えたとき、簡単に解決できることが当たり前だと認識しています。ベルーナは、このように期待値が高まっている生活者に対し、より快適なブランド体験を提供するために下記の 2 つの施策を行いました。
1) ページ表示速度の平均を 0.62 秒まで高速化
ウェブサイトの表示速度を高速化するために、モバイルサイト表示高速化技術 AMP(Accelerated Mobile Pages) に完全対応しました。さらに、快適なブランド体験を提供するために、従来のGoogle 検索等のオーガニック流入ページに加えて、広告のランディングページにも AMP の対応を完了しました(現在、AdWords アカウント上からも[有効な AMP のクリック率]として確認できます)。
図:高速化に対応したベルーナのモバイルページ
2) モバイルサイトに「ホーム画面に追加」、「プッシュ通知」機能などを導入し、リピートユーザーの利便性を向上
また、PWA (Progressive Web App)を導入することで、ベルーナのモバイルアプリをインストールすることなく、リピートユーザーが快適に買い物を楽しむことができる機能を追加しました。当初は 6 ページから導入し、現在は 27 ページまで効果を見極めながら段階的に増やしました。ユーザーの目線に添った体験を提供したことで、PWA のホームスクリーン経由での売上は約 6 倍と順調に拡大しました3。
図:スマートフォンの「ホーム画面に追加」や「プッシュ通知」が可能なベルーナのモバイルページ
本記事では、ベルーナが実施したマーケティングについて、第 1 回目で分析した生活者の特徴である「なんでも知りたい」、「自分に合った答えがほしい」、「ストレスなく行動したい」という切り口をもとに、「カスタマージャーニーを包括的に捉える」、「コミュニケーションをパーソナライズする」、「快適なブランド体験を提供する」という 3 つの観点から検証してみました。
いよいよ速度を増す技術の進化により、生活者とマーケター双方にとって、よりそれぞれの期待に沿った世界を実現することが可能になり、それは今や現実のものとなっています。御社のマーケティングと照らし合わせてみてはいかがでしょう。