日本国内のスマートフォンゲーム市場の競争は、海外メーカーの相次ぐ進出によって厳しさをましています。そんな中、人気ゲームをどう作るか、中長期的にユーザーをどう増やすかなどの模索が、ゲーム業界では続いています。
株式会社バンダイナムコエンターテインメントのスマホゲーム「テイルズ オブ ザ レイズ」は、2017 年のリリースから順調にユーザー数を増やし、現在では 260 万ダウンロードを超えています。しかし次々に新しいゲームが登場する競争激しいゲーム業界では、ユーザーのニーズに応えるコンテンツを提供し続けることで、ゲームを深く長く利用してくれるユーザーを効率的に獲得する必要がありました。
そのために同社は、「テイルズ オブ ザ レイズ」の有料ユーザーにはどんな特徴があるのか、 Google Cloud Platform(GCP)を使ってユーザー分析を行い、その結果をベースにした広告施策で、Google 広告経由で獲得したユーザーによるアプリ内でのLTVを 1.7 倍に増やすことに成功しました。
高LTVユーザーを増やし、売上を拡大するという難しい取り組みを、どのように成功させたのか、バンダイナムコエンターテインメントの取り組みをご紹介していきます。
「7 日以内に有料ユーザーになりそうな人」を機械学習で予測
Google Cloud Platform(GCP)とは、Google 社内で使われているものと同じテクノロジーやインフラを使用したクラウド コンピューティングサービスです。クラウド環境での効率的データ管理、低コストでのアプリケーション開発、 機械学習を活用したビジネス分析から需要予測など、多様なサービスが利用できます。
バンダイナムコエンターテインメントでは、機械学習を活用した GCP の 機械学習分析・需要予測を使って、同社の「テイルズ オブ ザ レイズ」有料ユーザーデータを分析。その分析を基に同ゲームをダウンロードしてから 7 日以内に有料利用する可能性の高いユーザーの属性を予測し、広告配信対象にしました。
獲得ユーザーの支払額、通常のアプリキャンペーンの 70% 増に
広告の配信には、Google 広告の アプリキャンペーンを利用しました。アプリキャンペーンは、数行の広告文や入札単価などを設定すれば、対象ユーザーにリーチできるようにキャンペーンを自動で最適化し、Google 検索、Google Play、YouTube、Google ディスプレイ ネットワークなど Google の各サービスで広告を配信します。
今回は、ユーザーを「テストグループ」と「コントロールグループ」に分け、効果を検証しました。前者は、機械学習で予測した「 7 日間以内に有料利用する可能性が高いユーザー」向けにアプリキャンペーンを配信。後者には、これまで実施してきた通常のアプリキャンペーンを配信しました。
広告配信後 2 か月間の有料ユーザーの支払額を 2 グループで比較した結果、テストグループ向け広告が、コントロールグループの 70% 増という結果になり、機械学習によるターゲティングが成果を上げたことが分かりました。
図:OS 別広告配信後 2 か月間の有料ユーザーの支払額
(グレーがコントロールグループ、青がテストグループ)
今後の展望について
バンダイナムコエンターテインメントの宮本 奈津子氏( NE 事業部 NE マーケティング部 マーケティング 2 課)は、今回の取り組みの手応えを次のように話します。
「日本のスマホゲーム市場は成熟期とも言われ、競争は年々厳しくなっています。そんな中、当社のテイルズ オブ ザ レイズはお客様の支えあって順調にユーザー数を増やしてきました。今後中長期的な目線でタイトルの成長を目指すためには、本タイトルを魅力と感じて頂ける可能性があるお客様に、効率的に広告をお届けし利用して頂く必要がありました。
今回の施策では、機械学習、自動最適化など、最新の技術をフル活用したことが成功の鍵だったと思います。機械学習で有料ユーザーを予測し、アプリキャンペーンで自動最適化しながら広告を配信したことで、効率的に想定以上の成果が得られたと感じています。施策の導入にあたっては Google のサポートもあり、スムーズに実行できたのも良かったです。
今後は、今回の経験や得られたデータを活かし、他のスマホゲームでも同様の施策を導入していきたいと考えています」
バンダイナムコエンターテインメント 本プロジェクト担当のみなさま。前列左から 3 人目がコメントを寄せた宮本奈津子氏。後列左から内堀環樹氏、清野 健太氏、田村雄也氏、岡野昌洋氏。前列左から東村遥氏、奥智美氏、宮本氏、加藤美優子氏
Contributor
山根美紀 アカウント マネージャー / 高橋ちひろ アカウント マネージャー