モバイルサイトのダウンロードスピードは、きわめて重要な要素で、ある調査によれば、53% の生活者が「読込みに 3 秒以上かかるモバイルサイトからは離脱する」と回答しています(1)。読み込み速度の遅いウェブサイトは、顧客を失うリスクの潜在要因を抱えているとも言えるでしょう。
2018 年、Google はアジア パシフィック全体におけるトラフィック上位 700 のモバイルサイトを対象に、大規模なユーザー エクスペリエンス調査を実施しました。調査の結果、日本の課題として顕著だったのが「サイト スピード」でした。
スピード評価のため、3G 回線の仮想環境を用意し、各サイトの TOP、商品一覧、商品詳細、応募・購入ページの速度を一日に 3 回計測。アジアパシフィック全体の平均の 8.7 秒と比較して、日本は 10.2 秒となっています。
今回ご紹介するバイトルは、ビジネスにおいてサイトスピードの重要性をいち早く認識して、その対応に取り組んだ企業です。サイトスピードの改善を経営アジェンダとして掲げ、複数の部門が連携して改善に取り組んだ結果、モバイルサイトからの応募 (コンバージョン) を大きく増加させることができました。
サイト改善に取り組んだ背景
従来からバイトルは、「日本で最もユーザーファーストを追求するサービスを」という運営指針のもとに、更新頻度と情報量を提供してきました。しかし、サイト表示速度という観点からは、この強みが足かせとなりかねない状況でした。
そこで、「速度面でも最高の体験を」という経営判断により、表示速度向上プロジェクトを発足。「9 か月後にベンチマークである競合他社のウェブサイトの速度を上回る」という、高い目標を設定しました。
経緯と詳しい施策の内容
プロジェクト開始後は、速度状況を毎日モニタリングできるよう、Lighthouse を自動的に取得する環境を整備しました。これにより、速度状況の可視化に加え、プロジェクトに関わるメンバー全員がサイトの速度に対する意識を共有できるようになりました。今回のプロジェクトは、大規模な課題から優先的に改善するという方針だったため、速度における一番の課題であったファーストビューへコンテンツが表示完了する時間( First Meaningful Paint ) とそのコンテンツが如何に早く描画されるかを示すスコア( Speed Index ) への注力を決定しました。
First Meaningful Paint の速度を押し下げる要因としては、数多くの問題が想定できますが、それらを 1 つずつ洗い出し、個別に対策を実施しました。以下はその具体的な内容です。
具体的な成果
表示スピードが 3.6 倍向上した結果、モバイルサイトのからの応募率(コンバージョン)を 14% 押し上げることができました(下図参照)。
今後の展望とプロジェクトの手応え
今回のプロジェクトを振り返って、ディップ株式会社の笠松利旭氏はこのような感想を述べています。「企画側のディレクターとエンジニアによるチームが緊密に連携したことで、非常に高い目標を達成することができました。しかし、速度改善に終わりはありません。現在は、より難易度の高いベンチマークを設定し、チームは新たな課題の解決に注力しています。求人サイトだけではなく、それ以外の DB 検索関連サービスについても、どこよりも表示速度が早く、優れたユーザー体験を提供できるサービスを目指しています。さらにその先の課題として、AMP や PWA なども視野に入れながら、どうすればこれらの手法を活用できるのか、またユーザー体験をさらに高めることができるのかという点を見定めていきたいですね」
また、ディップ株式会社の山下ロルミス氏はこう語ります。「仕事を探すということは、とても大変なことだと思います。バイトルでは、お仕事探しの負担をできるだけ軽減した上で、それぞれの方に合った仕事に出会っていただけるよう運営に努めています。サイトの表示速度の向上は、迅速に必要な情報を見つけるために非常に重要であり、求職者の体験を高めるものです。今回は First Meaningful Paint と Speed Index を集中的に改善しましたが、他の指標についても改善が必要な部分がまだいくつもあります。今回改善に成功した表示速度についても、これからも維持していかなければなりません。このプロジェクトを引き続き実施していくことで、ユーザーの皆様の体験を今後もいっそう高めていくことができればと願っています」