日本の EC 市場規模は、2016 年に 15 兆円を超えました。オンラインで買い物をする頻度が高まっているという感覚がある一方で、他国と比較すると「 店頭 」 での買物が多くなっています。店頭で商品購入する 「 手前 」 でオンライン上の情報がどのような影響をおよぼしているかをみていきましょう。
2016 年に、日本の EC 市場規模は 15 兆円を超えました。2010 年と比べ、約 2 倍の規模に成長しています1。日常生活において、オンラインで頻繁に商品やサービスを購入する機会が増えたと実感している人も多いのではないでしょうか?事実、オンライン店舗で消費財・耐久財の購入経験がある日本人は 83% まで増加しています。2
しかし実際は、EC が全体の小売市場に占める割合はまだ 5.4% にとどまるというデータも公表されています。 「 電化製品 」 や 「 書籍 ・メディア 」 など EC 化が進んでいると想定される業種 においても、オンラインの購入比率は 3 割程度です3。 「 食品 」 や 「 化粧品 」 といった日用品カテゴリーでは、5% 以下に過ぎません。英国では小売市場の EC 化比率が 15% を占めていることを考えると 4、日本は 「 店頭 」 での買物が多いと再認識させられます。
店舗での購入がいまだ大多数を占めているものの、私たちはオンラインで買い物をする頻度が高まっていると感じています。それは、店頭で商品を購入する 「 手前 」 の段階で、オンラインの情報に大きく影響を受けているためではないでしょうか?
例えば、EC 化が進んでいる 「 電化製品 」 のカテゴリーに入るノートパソコンでは、3 割近くがオンラインの情報のみで購入を決定しています。オンラインとオフライン両方の情報を参考にしている人まで含めれば、実に 4 人に 3 人がオンラインの情報を購入の参考にしていることになります。購入時点における EC 化率が低い 「 アパレル商品 」 や 「 化粧品 」 においても、購入前の参照情報源の 4 割がオンラインです5 。
購入前にオンラインの情報を参考にする比率が高い理由としては、スマートフォンの普及と増大するマイクロモーメントが大きな影響を与えているためと考えられます。事実、15 歳 - 69 歳の日本人 8,500 人 を対象にしたスマートフォン利用ログ( プライベート利用 )の分析によると、スマートフォンを触る回数は 1 日 48 回( ロック画面を解除せずに通知や時計チェックのみも含む )。そのうちロック解除をするのは 23 回で、アプリ総利用回数は 90 回。利用時間は 3 時間 14 分です6。日中、頻繁にスマートフォンを手に取っているとわかります。
さらに、Google データでスマートフォンからの 「 検索 」 を深掘りしてみましょう。日本で 2016 年に検索されたすべての検索語句のうち、 65% がスマートフォンによるものです。興味深いのは、購入における EC 化率が低いカテゴリーである 「 化粧品 」の 81% 、そして 「 アパレル 」 の検索の 75% がスマートフォンからという点です。スマートフォン普及が、これらのカテゴリーの検索数を増加させたと想定できます 7。
さらに、 「 何かを買いたいと思った瞬間 」 の行動では、72% がまずはスマートフォンで検索すると答え、 「 何か不安や問題が生じた時 」 には、80% がまずスマートフォンで検索すると答えていていることからも、このデバイスが買物行動に大きな影響を与えていることがよくわかります8。
多くの業種において 「 購買 」 の大半は、いまだ従来通り 「 店頭 」 で行われています。しかし、ここまで見てきた通り、購入に至るまでの情報参照源としては、スマートフォンの定着とともにオンラインの比率が高まっています。
この時点で必要なのは、オンライン広告投資を、インプレッションやコンバージョン単体で評価するのではなく、 「 来店 」 に寄与したのかどうかという視点で捉えることです。
いかにオンライン投資を来店に結びつけ、それを可視化してビジネスの成長につなげるか。次回の記事では、この問いに答えるデータやケースを紹介しながら、解決に結びつくヒントを考えていきます。