2022 年の調査(*1)によると、日常的に 5 つ以上のアプリを利用するスマートフォン利用者は 60% を超えます。業種やカテゴリを問わず、多くの企業がアプリを提供し、たくさんの人がそれらを使っているのです。
その分、自社のアプリを使い続けてもらうには、そのアプリが利用者にとってどのような役割を果たして、どういった価値を与えるのかを理解することがますます重要になっています。
アプリがサービス利用にどのような影響を与えているのか、企業がアプリ利用者を獲得するために何をすべきなのか。こうした点を探るため、Google では 2022 年に実施した調査や 2020 年以降のデータをもとに分析。これまで何となく感覚的に理解していたアプリに関する認識を、利用者の声やデータからも裏付けようと試みました。
EC、家具・家電、銀行、旅行サービスの 4 カテゴリにおけるアプリと Web のサービス利用を比較
今回は、「EC」「家具・家電」「銀行」「旅行サービス」の 4 カテゴリにおけるアプリと Web のサービス利用者を対象に調査を行い、各カテゴリにおけるアプリと Web 利用者の特徴を比較分析しました。
アプリや Web の利用といった日常的な行動の場合、調査対象者が自身の行動について無自覚であることも少なくありません。そのためまずは、調査会社のインテージが保有する i-SSP パネルを利用した実際の行動データを基にログ分析を実施。その後アンケート調査を通じてアプリ利用に対する態度を聴取しました。さらに、行動の動機をより深く理解するために、各カテゴリのアプリ利用者 2 人ずつ計 8 人に対してインタビュー調査も行いました(*2)。
では、ここから実際の調査結果を見ていきましょう。
まずアンケート調査とログ分析からアプリと Web の利用を年代別に見てみると、Web と同じくらいもしくは年代やカテゴリによっては Web よりもアプリを利用していることがわかりました。若年層に偏っているわけではなく、幅広い年代でアプリの利用が浸透しているのです。
次にログ分析からアプリと Web の利用率を見ると、下図のようになりました。
旅行カテゴリでは Web がアプリの利用率を上回っているものの、EC、家具・家電では、アプリと Web がほぼ同率、銀行ではアプリが Web を上回っています。EC、家具・家電、銀行カテゴリでは、サービス利用の方法として、アプリが Web に匹敵する手段になっていると言えるでしょう。
アプリ利用が、サービスの新たな可能性を開く
利用時間と頻度も分析しました。利用時間はいずれのカテゴリでもアプリが Web を上回る結果に。また旅行を除いた 3 カテゴリで、アプリの方が Web よりも高頻度で利用されていました。
(*3)
ここで注目したいのは、Web のみの利用者と比べて、アプリと Web を併用する人はサービスの利用時間が伸びる傾向にあり、また多くの場合、利用頻度も高いという事実です。つまり、これまで Web のみでサービスを利用していた人であっても、アプリの利便性を理解してもらえれば、サービス自体をより長時間、高頻度に利用してもらえる可能性があることを示しています。
とはいえ、アプリの利用者は Web のみの利用者と比べてよりサービスへの興味関心が高いと言われることも多いので、ある意味では当たり前のデータのようにも思えるかもしれません。
そこで次の記事では、こうした指摘に対して、さらなる分析を通じて答えます。
調査を通じて、新たに以下の 3 つの事実を裏付けることができました。
- アプリを利用し始めることで、サービスの利用時間が純増する
- アプリ利用が購入を後押しする
- アプリを通じてサービスの利用が習慣化する
次回は、これらの事実を調査結果と合わせて取り上げるとともに、アプリの利用は Web の利用とどう性質が異なるのか、利用時間の長さや頻度の高さがどう企業の利益につながるのかなどを見ていきます。
Contributor:朴 ヨンテ コンシューマーマーケットインサイトチーム マーケティング リサーチ マネージャー