今回は US 版 Think with Google が公開した記事を基に日本の読者向けに再編集しました。
Google と Boston Consulting Group(BCG)が 2021 年にアメリカとカナダで実施したアンケート調査(英語)によると、「自分に関係がある、役に立つ広告しか見ない」と回答した人は 74% という結果が明らかになりました。ユーザーに関連性の高い広告は、広告主の皆さまにとって良い広告効果をもたらし、広告を表示するパブリッシャーの皆さまにもより多くの収益をもたらします。世界中の何十億もの人々が利用する重要な情報源であるオープンな Web は、ユーザー、広告主、パブリッシャーの皆さまが参加するエコシステムによって構成されています。
一方、オープンな Web におけるユーザーのプライバシー保護に対する関心は高まっており、ユーザーは、自分の情報がどのように利用されているのかを知りたいと考えています。これを受けて、テクノロジープラットフォーム、各国の政府、規制当局それぞれが、広告によるオーディエンスへのリーチや、その効果を測定する新たな方法を検討し始めています。
Google ではこの流れに対応し、ディスプレイ広告におけるユーザーのプライバシー保護に対する信頼性を高め、同時に関連性の高い効果的な広告手法を提供しようとしています。私たちは、ユーザー体験を損ねたり、広告主の皆さまの作業を増やしたりすることなく、こうした変更を実現していきたいと考えています。
ここでは、ユーザーのプライバシーや興味関心、個人に関する情報を重視しつつ、ディスプレイ広告製品のパフォーマンスを維持するための 3 つの取り組みを紹介します。
広告効果をさらに高めるための自動化の強化
ここ数年、Google のディスプレイ広告の技術は、キャンペーンの設定から広告フォーマット、アトリビューションに至るまで、自動化や機械学習によって進化してきました。これにより、ユーザーの詳細な個人情報を必要とせずに関連性の高い広告を配信できるようになりました。
私たちが広告パフォーマンスの最適化のために使っているデータの多くは、すでにプライバシーに関する高い基準を満たしています(英語)。たとえば、ディスプレイ広告を表示させる Web ページとユーザーの関連性を把握するとき、ユーザーのメールアドレスや氏名などの個人データは必要ありません。Google 広告で設定したキャンペーン全体の結果を自動的に分析することで、広告が表示される Web サイトとユーザー行動の関連性を学習しています。コンテクスト的なシグナル(時間帯や表示中の広告クリエイティブ、あるいはユーザーのデバイス、所在地、ブラウザ、OS など)は、これまで以上にますます重要になっています。
広告主の皆さまにとっては、サードパーティ Cookie の廃止により、コンバージョンの計測に変化が生じるのではないかとの心配もあるかもしれません。ユーザーのプライバシーをより重視しながら、引き続き広告効果の計測を続けられるよう、ユーザーの同意を得たうえで計測できるようにする「同意モード」によるコンバージョン モデリングの導入(英語)を進めていく方針です。
こうした取り組みは、ここ数年にわたるものです。自動化に力を入れつつ、キャンペーンや広告クリエイティブの最適化などに活用することで、広告パフォーマンスをより向上できるように注力しています。
ユーザーのプライバシー保護をより強化する新たな技術
Google がオーディエンス管理や計測のために構築したこれまでのフレームワークは、既存のデータを前提にしていますが、一方で Google では、プライバシー サンドボックスの一部として設計した、新しいデータを組み込むためのツールも構築しています。
たとえば、Chrome では先日 Topics API を発表しました。Google は 2022 年、この API のテストを広告パートナーの皆さまと共に行う予定です。
Topics API は、ブラウザが、閲覧履歴に基づいて、たとえば「フィットネス」や「旅行」などといった、その週に関心の高いトピックを選びます。ます。これらの項目は、 3 週間だけ保存され、古い項目は削除されます。項目の選定は、Google や他の外部サーバーは一切介さず、完全にユーザーのデバイス上だけで実行されます。Topics に参加するサイトにアクセスすると、過去 3 週間のそれぞれの週から項目を 1 つづつ、計 3 つ選び、そのサイトおよび広告主様に共有されます。
これは、ユーザーの興味関心に基づきつつ、プライバシーを重視しながら関連性の高い広告を配信するための新たな提案です。たとえば、現在ディスプレイ広告で「アウトドアファン」など特定の趣向を持った人を特定できるアフィニティ カテゴリでオーディエンスにリーチしている場合、私たちが新たな広告技術を採用しても、キャンペーンは引き続き同様のオーディエンスにメッセージを届けることができます。
もう 1 つは「FLEDGE(英語)」と名付けられた API です。これは、ユーザーのインターネット上の行動履歴を追跡しない一方で、リマーケティングによるパーソナライズされた広告を配信する設計となっています。ユーザーにリーチする方法として、Topics API はユーザーの Web ブラウザによって生成されたトピック(興味関心のグループ)を使いますが、FLEDGE は、広告主の皆さまが作成するリマーケティング グループを使います。
ディスプレイ広告でよく見られるユースケースとして、自社のビジネスに最も興味を持っている可能性の高いユーザーと再度エンゲージメントを図ったり、潜在顧客である可能性の高い類似ユーザーの発見があります。現在、リマーケティングはサードパーティ Cookie に依存しているため、ユーザーと広告主の皆さまの双方のニーズを満たす新たな方法の構築に取り組んでいます。
また、パブリッシャーの皆さまがファーストパーティ データを使うための新たな方法も提供しています。PPID (パブリッシャー指定の識別子)は、パブリッシャーが匿名化されたファーストパーティ識別子を Google アド マネージャー 360 と共有できるようにすることで、オーディエンスに基づく各種デバイスへの広告配信管理の向上につながります。
このデータは、パブリッシャーの皆さまがより多くの収益を得られるようにするだけでなく、ディスプレイ広告を運用する側でもサードパーティ Cookie を使用せずに、たとえばクロスデバイスリーチ、フリクエンシー管理、広告クリエイティブの最適化などの主要機能を活用できるようにするものです。このソリューションにより、パブリッシャーのファーストパーティ データは匿名化された状態で活用でき、同時に広告主の皆さまは自社商品やサービスに関連性の高い広告が配信可能となります。私たちは同様の取り組みをさらに続けていきます。
業界関係者の皆さまと共に発展
私たちがディスプレイ広告製品でユーザーのプライバシー保護をより高めるための準備を進める中、「何が」変わるかだけでなく「どのように」変わるかに関心があるという声をもらうことがあります。私たちは、今後の変化に対応するために必要な準備と調整を計画している業界関係者の皆さまに、私たちの設計理念の理解や、日常的に使うことになるであろうツールを開発段階から、β テストなどを通してフィードバックしてもらいたいと考えています。
2021年に Google は、一部の広告主の皆さまと、サードパーティ Cookie を使用しない興味/関心に基づくオーディエンス ターゲティングの初期段階のテスト(英語)を行いました。今年は、同様の実験をより幅広い層に向けた配信や効果測定の機能に拡大し、より多くのパートナー企業の皆さまと共に進めていきたいと考えています。
また、前述の 2 つの API の公開トライアルについても、主要なテストの結果やフィードバック内容を順次公開、共有する予定です。
私たちはオープンなインターネットのような重要なエコシステムに貢献することに大きな責任を感じており、ここでご紹介した取り組みが示すように、私たちはその未来を守ることに尽力しています。これからも、ユーザーのプライバシー保護と広告効果の両立を実現するため、業界関係者の皆さまと共に新たな製品の開発やテスト、改良を続けていきます。