2018 年の世界のゲーム人口は 23 億人を超え(出典: Newzoo 2018)、ゲームを楽しむ人、e スポーツを観戦する人、ゲームのイベントや交流会に参加する人はますます増加しています。ゲームはもはやニッチな文化ではなく、世界のポップ カルチャーの中心になってきており、男性だけでなく女性でも、ゲームやゲーム カルチャーを日常生活の一部にしている人が増えてきています。しかし、ゲームをプレイする女性の多くは、ゲームの世界が他のエンターテイメントに比べて男性向けと感じています。つまりダイバーシティの面で遅れており、もっと多様性が受け入れられるようにするべきことがたくさんあると考えているのです。
ゲーム業界の関心は伝統的に、一部の熱狂的なプレーヤーたちに向けられてきました。プロのゲーマー、実況配信するストリーマー、生粋のゲーム機派など、すでに地位が確立されたゲームタイトルに熱中する人々です。一方で、さまざまなジャンルのゲームを複数のプラットフォームで、一日に数時間や、週に数時間といったペースで楽しむ女性も増えてきています。必ずしも自分を「ゲーマー」とは認識していない新しいプレーヤー グループです。
より多くのプレーヤーが受け入れられるゲームやゲーム文化を育むには
Google Play では、その手がかりを探るため、The Future Laboratory と共同で 3 か月間の詳細な消費者調査を実施し、ゲームを楽しむ女性たちについて理解を深めることにしました。1 日に数時間や週に数時間、さまざまなジャンルのゲームを複数のデバイスで楽しむ若い女性たちから話を聞いた結果、好まれるゲーム、プレイスタイル、ゲーム コミュニティとの関わりについて多くのことがわかりました。
ここではこの調査結果に基づいて、ゲームの世界で多様性を受容し帰属意識を育むための 4 つの原則を示し、新たなプレーヤー グループを取り込んでゲームビジネスをさらに拡大するための方策について検討します。
原則 1. 多様なニーズに応じてゲームを設計する
ゲームを楽しんでいる女性の多くは、ゲーム業界の関心が、パソコン用やゲーム機用のタイトルに偏っていると感じています。この種のタイトルは、プレイできる場所が自宅などに限られ、ある程度まとまった時間を確保しなければなりません。多くの人がこのスタイルでゲームを楽しんでいる一方で、もっとフレキシブルにゲームを楽しみたいという人も増えています。複数のデバイスを使い分け、「隙間時間」をうまく使って、さまざまなジャンルのゲームを自分らしく楽しみたいという人々です。
では、現在リリースされているタイトルは、1 日の中のさまざまな「空き時間」に必要とされるゲームでしょうか。退屈な通勤電車を楽しくするゲーム、忙しい1 日から自分を解き放つゲーム、難しい商談の前に自分を奮い立たせるゲーム、といったニーズに応えられるでしょうか。このように実用性からゲームの位置づけを検討し、1 日のどんな場面にマッチするかを提案することで、新しいユーザーにリーチしてさらなる需要を喚起できる可能性があります。
調査に協力してくれた女性たちは、さまざまな動機に基づいてゲームをしており、その時々のニーズに応じて複数のタイトルを使い分けていました。自分だけの「ゲームカタログ」を作り、たとえば休憩時間にちょっと楽しむなら「タップ系カジュアル ゲーム」、頭をリフレッシュしたいときや友だちと楽しみたいときは「頭の体操系」のように、目的に応じてタイトルを分類しています。こうしたカテゴリを見ると、彼女たちが実際に楽しんでいるゲームがわかるだけでなく、彼女たちが次に探しそうな新しいタイトルも浮かび上がってきます。
ゲームを開発するにあたって、こうした女性たちの動機に注目し、彼女たちのプレイスタイルに合うタイトルを提供することを検討してみましょう。新しいゲームを設計するとき、最初から特定のジャンルやカテゴリを想定するのではなく、プレーヤーがそのゲームをプレイしているときや、プレイした後にどう感じるかを想像してみるのです。このような「感情のレンズ」を通して見ることで、思ってもみなかったマーケティング機会が明らかになり、新しいプレーヤー グループの関心を引き付ける独創的なゲームを開発できるでしょう。
原則 2. 多様性に満ちたストーリーとキャラクターを考案する
映画や舞台などゲーム以外のエンターテイメントで、オリジナリティーあふれるストーリーやキャラクターに慣れているプレーヤーは、ゲームにも相応のストーリーやキャラクターを期待します。しかし、多くの女性プレーヤーは、ゲームのストーリー展開やキャラクターはもちろん、ゲーム関連の広告やイベントでさえも、性別や民族的な固定観念から抜けきれない時代遅れのものと感じています。
ゲームを楽しむ女性たちが求めているのは、本物のストーリーと、感情を表に出し欠点もある人間味あふれたキャラクターです。共感し、親しみを覚え、ゲームの世界に引き込まれたいと感じているのです。ストーリーやキャラクターを考案するときは、ありがちなストーリー展開やキャラクターの種類を安易に採用せず、現実の世界と同じように、人それぞれの物の見方や性格上の欠点を表現することを恐れないようにしましょう。
最低でも、ゲーム内キャラクターをカスタマイズできるようにして、ゲームに多様性を反映できるようにしましょう。性別を選択できるようにするだけで満足せず、さまざまな身体的特徴(肌の色、顔の形、髪質、体型など)や外見的魅力(服やアクセサリー)を選べるようにし、プレーヤーがキャラクターを自由に表現することを楽しめるようにします。
ゲーム内の体験だけでなく、広告やパートナーも再検討しましょう。女性プレーヤーたちは、ゲーム コミュニティにおいてもっと多様な人々にスポットライトが当たることや、もっと多様な声が反映されることを望んでいます。このようなニーズを満たすには、多様なプレーヤーがもっと親近感を抱くことのできるインフルエンサーやストリーマーが必要です。そうしたロールモデルがコミュニティにいれば、既存のプレーヤーが自分を重ねられる存在になるだけでなく、より幅広いユーザーにリーチできる可能性が高まります。
原則 3. 多様で寛容なゲーム コミュニティを育む
ゲーム コミュニティに帰属意識を抱いている女性は少数です。多くの女性は、コミュニティの中で形式化されてきたルール、言語、慣習、そして伝統的なゲームスタイルのみが尊ばれる傾向に、古くささと気まずさを感じているのです。彼女たちは、ネット上の「荒らし」に巻き込まれないために目立たぬように行動しており、メッセージ アプリやオフラインで少人数の気楽なコミュニティを作り、コンテンツを共有したりゲームの進み具合について話したりしています。
では、プレーヤーたちがもっと気楽につながることのできる、親しみにあふれた場所を作るにはどうしたらよいのでしょうか。ぎすぎすした雰囲気がなく、どんなレベルのプレーヤーも快く受け入れ、上手にプレイできるようになるための情報やアドバイスが手に入り、誰もが楽しく過ごせる場所を作れないものでしょうか。オフラインのイベント、大会、交流会などを開催すると、あらゆるレベルのプレーヤーがつながりを持ち、ゲームへの情熱を楽しく共有できることにつながります。大きなオンライン コミュニティだけでなく、地域ごとのプレーヤー グループもあるとよいでしょう。
女性プレーヤーの中には、「そのゲームスタイルをプレイするのに慣れていない」という理由でプレイしていない人もいます。特にそれが顕著なのが、昔から男性プレーヤーたちを魅了してきたジャンルや、すでにプレイスタイル、カルチャー、共通の言語が確立してしまっているゲームです。
ゲームタイトルをリリースするときには、そのゲームジャンルに精通したベテラン プレーヤーだけでなく、初心者プレーヤーがいることも頭に入れておきましょう。わかりやすい言葉を使い、初心者が夢中になれるような仕組みを作ることが大切です。たとえば、「練習場」を用意してまったく経験がない人でも物怖じすることなくいろいろ試せるようにすれば、ゲームの魅力がしっかり伝わり、誰もが新たな体験を楽しめるようになります。
原則 4. 開発チームの多様性を高める
最後に、オフィス内を見回して開発チームのメンバーを見てみましょう。幅広いバックグラウンド、さまざまな経験、それぞれに異なる視点を備えた多彩な人材が揃っているでしょうか。リーチしようとしているさまざまなプレーヤー グループを代表するメンバーがチームにいれば、それぞれの声やニーズを代弁してくれます。
最後に
ゲームをする理由、プレイスタイル、夢中になっているタイトルに関係なく、ゲームは女性たちの生活の一部となり、人生やアイデンティティにおいて重要な役割を担うようにさえなってきています。ゲーム業界にとってこの状況は、「女性」という新たなプレーヤー グループとのつながりを深める大きなチャンスです。女性ならではのニーズを理解し、彼女たちを念頭に置いてゲームを設計することで、ゲーム コミュニティをもっと大きく、魅力的な場所にできるはずです。女性たちがどのようなゲームやプレイスタイルを好み、どんなゲーム コミュニティに魅力を感じるかについては、詳細な調査レポートをご覧ください。
Google Play では、よりインクルーシブでオープンなゲーム カルチャーを実現するための取り組みとして、ゲームを真にすべての人のものにすることを目指す「Change the Game」プログラムを推進しています。このプログラムでは、女性のプレーヤーやクリエイターを紹介し、ゲームやプレーヤーの多様化を促し、次世代のゲーム制作者を支援し、ゲームの世界に変化をもたらそうとする女性たちを応援しています。Change the Game プログラムのこれまでの活動や今後の取り組みにぜひご注目ください。また、ゲーム業界に向けたGoogleの製品やサービスを紹介するGoogle for Gamesウェブサイトもご覧ください。