US 版 Think with Google が 2024 年 10 月に公開した記事を基に日本語に翻訳し、編集しました。
この記事の筆者、Google のレイラ・マブラク(Senior Engagement Manager)とケイシー・ヘンドリックス(Global Marketing Manager)は、Google の広告主がよりインクルーシブな広告を作成するためのプログラム「gAccessibility」を設立しました。また、2 人は World Federation of Advertisers(世界広告主連盟)の Digital Accessibility Alliance のメンバーでもあります。今回は、2 人が主導したユーザー調査に基づいて、広告のアクセシビリティを高めるヒントを探ります。
米国では、50% の人が日常的にテレビを字幕付きで視聴しており(英語)、Z 世代に限るとその割合は 70% に上ります。

字幕やキャプションは、もともとは聴覚障害者のためのアクセシビリティ技術でしたが、ミュートした動画を見たことのある人なら誰でも、その副次的なメリットを知っているでしょう。多様性を尊重したインクルーシブな取り組みは、思いがけない形で社会全体に恩恵をもたらします。
もちろん、アクセシビリティが何を意味するかは、ニーズや好みによって人それぞれです。聴覚障害者にとっての字幕や、視覚障害者にとっての音声ガイドなどは、ほんの一例にすぎません。アクセシブルなキャンペーンを成功させるには、できるだけ多くの障壁を排除し、障害者コミュニティと連携して意見を取り入れるなど、多様性のあるチームを築くことが重要です。
当事者コミュニティに直接聞き、ニーズを理解する
広告のアクセシビリティについて調査するために、Google は、調査会社の Kantar、Eye Square と連携しました。今回の調査では特に、全盲や弱視を含めた世界中に 22 億人いる視覚障害者(*1)の広告体験について調べました。
全盲、弱視、色覚異常などの視覚障害がある人を対象に、一連の詳細なインタビューを実施。調査の参加者には 4 本の YouTube 広告を見てもらった上で、デジタル広告の肯定的な側面と否定的な側面を掘り下げました。広告のアクセシビリティに関するインサイトについて直接フィードバックを受ける機会を得たことで、実際の変化につながったのです。
あらゆる人にとっての広告体験をより良いものにするには、調査プロセスの初期段階から最後まで、障害者に参加してもらうことが重要です。今回の調査に参加した弱視者の 1 人は「あるグループのために広告をアクセシブルにすると、すべての人の利益になります。字幕や音声ガイドは、障害者コミュニティのためだけのものではありません。高齢者や、英語を母国語としない人々にとっても役立ちます」と話してくれました。
こうしたユーザーからのフィードバックを基に、広告のアクセシビリティを高めるための 3 つのベストプラクティスを明らかにしました。以下で、それぞれ解説します。
1:聴覚と視覚に訴えて、ブランドと製品の認知度を高める
非常に多くの人が、動画を見るときに字幕や音声ガイドを利用していることを考えると、今回の調査で扱った YouTube 広告の多くが、情報を伝えるために視覚的な手掛かりにのみ頼っていたことは驚きでした。ほとんどの場合、ナレーションではブランド名や製品の説明が省略されていました。これにより調査に参加した人の多くは、こうした広告のメッセージや企業が意図する行動(商品の購入、ウェブサイトへのアクセスなど)を理解できなかったと答えています。
したがって、広告はロゴだけに頼るのではなく、ブランド名や製品名について音声で明確に伝えることが重要です。こうした固有名詞は、特にブランド名や製品名になじみのない人々にも文脈が伝わるように、順番に読み上げられる必要があります。
Google の広告を例に見てみましょう。この広告では、盲目の主人公ハビエルが、Google Pixel スマートフォンの「ガイド付き自撮り」機能を使って日常生活を撮影する様子を描いています。監督を務めたのは視覚障害のあるアダム・モース氏です。この「Javier in Frame」という広告は、2024 年のスーパーボウル中継で放映するテレビ CM 用に制作したものですが、別バージョンとして字幕と音声ガイドを加えたものも制作しました。広告の最後の 10 秒で、機能とブランド名の両方を音声ガイドで言及しています。
2:できる限り音声ガイドと字幕を提供する
あらゆる人にとっての広告体験をより良いものにしたいと考えている先進的なブランドと連携することで、私たちはさまざまな分野にわたって幅広いインサイトを得ました。調査に参加した企業の 1 つが、「スニッカーズ」などで知られる米大手食品会社の Mars です。
同社のグローバル CMO で、スナック部門の CGO(最高事業成長責任者)も務めるギュレン・ベンギ氏は「Mars では、明日の理想的な社会を実現するのは、今日の自分たちの仕事への取り組み方だと考えています。そこには、私たちが大切にしているブランドが提供する価値を、すべての人々が享受できるようにすることも含まれます」と述べます。
「Google と Kantar との連携を通じて、よりアクセシブルになるための、実行可能なインサイトを得られました。それらはすでに、私たちのマーケティング戦略と計画に影響を与えています」
今回の調査から、多くの人々が音声ガイドを頼りにして、登場人物やその行動、シーン、画面上のテキストなどの情報を含め、広告で何が描かれているのかを理解していることがわかりました。音声ガイドを利用している人にシームレスな体験を提供するためには、画面に描かれている物の説明とストーリーの説明を、音楽や効果音とのバランスを考慮して加える必要があります。
視覚情報は、聴覚情報と同様にアクセシビリティにとって重要です。2023 年 9 月の米国での調査(英語)によると、動画広告に字幕を追加することで、多くの場合ではリーチが拡大し、広告のパフォーマンスが向上することがわかっています。
3:製品エンゲージメントと行動喚起を最適化する
今回の調査では、広告内でブランド名やスローガンを複数回繰り返した場合に肯定的なフィードバックを受けました。しかし多くの人が、広告からの具体的な行動喚起を期待していたにもかかわらず、それがなかったり、あったとしても聞き取れなかったりしたと回答しました。
調査の参加者の 1 人は「製品を手に入れて使うのがどのくらい簡単かを知りたいのです」と話しました。
広告に接した人が行動を起こすためには、URL や電話番号を読み上げるなど、明確で聞き取りやすい行動喚起が必要です。動画の最後を製品のクローズアップで締めくくることは、それを見ることができる人にしか効果的ではありませんが、一方で製品の機能や特徴を強調する広告ストーリーを構築すれば、広告に接するすべての人に訴えかけることができます。これらを考慮して音声ガイドのスクリプトに組み込むことで、潜在的に関心を持つ人々を取りこぼさないようにできます。
私たちは、あらゆる人が尊重される多様性のある世界へ向けて、AI を活用しながら、広告を通じて貢献し続けたいと考えています。こうした広告はすなわちアクセシブルなものであり、企業のビジネスにも寄与します。
アクセシブルマーケティングの事例は、Google Belonging(英語)で確認できます。また、よりアクセシブルな広告を作成する方法は、All in with Google 内のガイド(英語)を参考にしてください。