「ディーラーに行かなければサービスを受けられないという固定観念は、もはや時代遅れです」。世界最大規模のホンダ認定中古車ディーラー Paragon Honda のゼネラル マネージャー兼副社長 Brian Benstock 氏はこう語ります。「来店を希望しないお客様は、わざわざお越しいただく必要はありません」
自動車のディーラーとしてはかなり大胆な発言ですが、顧客の期待に応えているという意味では、あらゆる業界のマーケティングにも応用できる新たな考え方です。
他の分野と同じく、デジタルとモバイルの技術は、生活者とディーラーの関係を大きく変えました。従来店頭で行われてきた、車のモデルの比較や、整備や修理の予約などが、実質的にすべてオンラインでできるようになりました。その結果、車の購入前後ともに、ストレスのない迅速なサービスが求められるようになったのです。「今の時代の通貨は時間です」と、Benstock 氏は語ります。「お客様のスピードに合わせて変化していかなければなりません。もしも私たちが変化しないなら、お客様のスピードに取り残されてしまうでしょう」
Paragon Honda は顧客の期待に応えるために、特に負担が大きな「車のメンテナンスとサービス」の煩雑さを取り除くことで、顧客へのサービス提供の形を一変させました。
「お客様は生活のペースを崩したくはありません。ディーラーに出向いて車を預け、整備が終わるまで待っている時間はないのです。テクノロジーの発展によって、お客様の期待するものは変化しました。それに応えるには、サービスとマーケティングのアプローチを変えるべきだと気付いたのです」こう Benstock 氏は述べます。
そこで Paragon Honda は、Team Velocity と提携して、顧客へのサービス提供のアプローチを変える 3 段階の対策を講じました。 それは、生活者との接点すべてにおいて顧客のニーズを汲み取るということです。
1. 顧客のストレスをなくす
定期点検や問題発生時のカーメンテナンスは、顧客が仕事中にディーラーまで足を運ばなければならない場合、極めて煩わしいものです。Paragon Honda は、今の時代の生活者は何でも即座に解決できることを望んでいると考え、アプリ「Paragon Direct」を開発しました。これにより、顧客は 24 時間以内の車の引き取り、サービスの実施、車の返却を依頼できるようになりました。これさえあれば、もうディーラーまで行く必要はありません。特に、Paragon Honda が拠点とするニューヨーク州クイーンズ郡ではこのアプリが多用されており、アプリ経由の修理の依頼は、アプリ以外の手段からの依頼に比べて倍増しています。
2. 新たな技術の導入
サービスとメンテナンスの予約をより簡素化するために、Paragon Honda は自動車ディーラーとして初の Google アシスタント向けのアプリ開発に着手しました。まもなく、生活者が話しかけるだけで、定期メンテナンスやオイル交換、タイヤの位置交換といった定期的なサービスを予約できるようになるでしょう。
3. マーケティングと測定を最適化
調査では、ドライバーは今すぐ情報がほしいとき、まず最初に検索を利用することが判明しています1。Paragon Honda は、同社の 24 時間サービスに対するオンラインでの認知度を高めようと、ニューヨーク エリアで「ホンダ オイル交換」や「ホンダ メンテナンス」というキーワードが検索された際、同社の情報が表示されるよう予算を追加しました。その結果、Paragon Honda の修理サービスの注文が、過去 12 か月で 5 倍に急増しました(同社発表)。
また、口コミ、テレビ広告、ディーラー訪問などを含む車の購入時のすべての情報収集ソースのうち、最もよく使われているのも検索です2。そのため、Paragon Honda は検索広告も活用して新車と中古車の販売を促進していましたが、効果を実証しなければなりませんでした。そこで同社は、問い合わせフォームからのコンバージョン数の増加だけに着目するのではなく、検索広告が来店促進にどの程度役立っているかを測定するため、Google の来店コンバージョンを利用しました。これにより、来店に結びつくキーワードやキャンペーンを把握することが可能になり、車 1 台の販売あたりの費用対効果が他のメディアに比べ 5 倍近く高いとわかりました(同社発表)。
Paragon Honda は、自ら主導することにより、顧客へのサービス提供のアプローチを変化させました。「生活者にとって、何がベストかを考えることが結果的にビジネスにおけるベストに繋がります」とBenstock 氏は言います。