変化するニーズに対応するために、機械学習などを活用したデジタル広告の自動化は、強力な武器になります。しかし自動化のメリットは単に効率化だけではありません。事業を成長させ、ビジネス全体の KPI を達成するためのトリガーにもなるのです。
今回取り上げた 4 つの記事では、デジタル広告の配信や運用の自動化が果たす真の価値を、実例を交えながら解説しています。
1:広告運用の自動化が持つ可能性ーービジネス成長につなげる顧客分析、KPI 設定、UI/UX の工夫
自動化は、デジタル広告を支える重要な機能の 1 つです。これまでの運用の積み重ねによって築き上げてきた広告効果の効率化のみならず、ビジネスの成長に必要なプロセスの最適化に貢献するポテンシャルを持っています。広告に触れる人を最大限に増やすことで見えていなかった顧客ニーズを発見し、見込み顧客に適切なメッセージを発信したり、「機械に任せるところ」と「人が知恵を絞るところ」をそれぞれ役割分担し、組織力を最大化したりなども、広告運用の自動化を通じて可能になるのです。
Google では、デジタル広告の自動化を進めてきた中での学びから、自動化をビジネス成長につなげるためには次の 3 つの視点が大切だと考えています。
1 つは想定外の顧客層が購入したときにその意味を分析するといった「顧客分析」、2 つ目が、顧客分析から見えてきた新たな可能性を取り込むために「柔軟に KPI 設定を変えられる」こと、そして 3 つ目が自動化によって削減した時間を LP やサイトの「UI/UX 改善」に使うことです。
これらの視点を持って広告自動化を活用することで、広告効果の効率化から一歩進み、ビジネス全体の KPI とデジタル広告の KPI を一致させることにつながっていくはずです。
2:広告運用の自動化でビジネス機会をつかんだ——MonotaRO、楽天市場、シェアリングテクノロジー
上の記事で、自動化をビジネス成長につなげるための 3 つの視点を紹介しましたが、そのうち「顧客分析」「デジタル広告のKPI設定の柔軟性」を取り入れることで、ビジネスの成長につなげた企業の事例を紹介します。
製造業など事業者向けの通販サイトを運営する株式会社MonotaRO は、広告によって獲得した顧客ごとのライフタイムバリュー(LTV)のばらつきが大きいことが課題でした。しかしデジタル広告では短期間で高速に PDCA を回すため、LTV のような長期間の測定が必要な指標に対して最適化するのは困難でした。
そこで同社は、顧客を属性ごとのセグメントで分析し、各セグメントの LTV の期待値を算出。CV 数ではなく、LTV の期待値を目標に設定した自動入札で広告を配信しました。その結果、マーケティング指標を経営指標と一致させ、ビジネスの成長につなげたのです。
次に紹介するのは、柔軟な KPI 設定で事業の成長を図った、楽天グループ株式会社のサービスである楽天市場です。Google 広告の機能「コンバージョン値のルール(CV 値のルール:一定のルールに基づき CV の価値を調整できる))」を活用しました。
楽天市場では以前から、独自のアルゴリズムに基づいて計測している投資利益率(ROI)に合わせた目標を設定していました。しかしデバイスによって広告効果の差が大きかったため、 CV 値のルールを活用してデバイス間の CV 値を調整。その結果、基準内の ROI を維持しながら、広告経由の売上を 24% 拡大することに成功しました。
CV 値のルールを活用したもう 1 つの事例として、水回りや鍵の修理など生活トラブルを解決する専門業者のマッチングサイトを運営しているシェアリングテクノロジー株式会社を紹介します。
同社のビジネスモデル上、顧客が住む都道府県によって、CV 1 件あたりの CPA などに差がありましたが、一方で広告キャンペーン自体は都道府県別に分かれているわけではありませんでした。そのため従来の画一的な広告運用では、設定した CPA の範囲で顧客獲得が見込める特定の都道府県での CV 数を最大化しようと機械学習が進んでしまい、ビジネスとしての包括的な成長機会を損失してしまっていたのです。
そこで、都道府県ごとに異なる CV 値のルールを設定。パフォーマンス係数をかけた値をもとに自動入札をすることで、地域ごとの売上に応じた入札が可能になり、コンバージョン率と ROAS の大幅な向上、オペレーションコストの削減に成功しました。
3:総合スーパーのイオンリテールが小売ビジネスを拡張、スマホアプリを起点に広告ビジネス展開へ
大手 EC サイトが、人々の生活インフラの一部になりつつある現在、実店舗をもつ小売店にも、デジタルトランスフォーメーション(DX)の潮流が迫ってきています。イオングループの総合スーパー事業を担うイオンリテールも、DX、さらにはその先の広告ビジネスへのビジネスモデルの拡張を見据えて Google と協業しています。
オンライン、オフラインを問わず、顧客接点を広げることができれば、より有益な情報を適切なタイミングで顧客に届けられます。同社はまずチラシやクーポン配信などの機能をもつ「イオンお買物アプリ」のデータを活用し、顧客とのコミュニケーションを深めることで、ニーズを把握し、オンラインとオフラインともに活かす循環を作ろうとしました。
ただし、アプリを通じて取得した購買行動データが膨大だったため、タイムリーな分析や抽出ができず、限定的な活用にとどまっていました。そこで、データを Google Cloud Platform に蓄積。従来社内で使用していた Google アナリティクスや Firebase と連動させやすくなったことで、データ業務や意思決定を高速化、効率化。これまで 30 〜 40 秒ほどかかっていた処理を 5 秒程度に短縮しました。
さらにこのアプリをキーとして、メーカーとの共同販促の基盤「イオンAD」を構築。購買行動データを Google のシステム上でマッチングし、メーカーが出稿した広告も、効率的に届けられるようになりました。
4:マーケティングに必須の「考える時間」、検索広告の現場で本当の「業務効率化」はできていますか?
デジタルマーケティングを活用している企業の多くは、すでに機械学習を活用し、広告効果の最大化や作業の効率化を図っているでしょう。ただし、まだまだ人的リソースを割かなくてはいけない作業もあります。その 1 つが広告媒体ごとに分かれている広告管理です。
検索広告の運用にあたっては、これまで多くのマーケターが、媒体ごとに広告を最適化するための施策を実施してきたと思います。しかし蓋を開けてみれば、アカウントの構造やターゲットキーワードなどがほとんど同じというケースも多かったのではないでしょうか。
「個別管理」ではなく、複数の媒体で検索広告を「統合管理」することで、機械学習の強みを最大限に活かすことができます。それによりマーケターは、媒体ごとの利用者層の違いに応じた調整やクリエイティブの変更など、本来時間を割くべき大切な点に一層注力できるようになります。つまり検索広告の統合管理によって「単純作業の効率化」と「考える時間の創出」が実現できるのです。
記事では、Google のメディア横断広告管理ツール「検索広告 360」を活用したアスクル株式会社の事例も紹介しています。
以上、デジタル広告の自動化についてまとめた 4 本の記事を紹介しました。短期的な広告効果や効率化を目標とした硬直化したデジタル広告の運用を見直し、自動化を通じてビジネスの成長を実現するための視点を持つことが重要です。Google では今後も、デジタル広告の自動化をビジネスの発展へとつなげるために、皆さんと一緒に歩みを進めていきたいと考えています。
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