US 版 Think with Google が 2024 年 3 月に公開した記事を基に日本語に翻訳し、編集しました。
私が 2019 年に Google に参画した理由の 1 つは、家族旅行の計画を立てていたときに Google 検索で見かけたホテルの広告が気に入ったことでした。それはまさに自分が求めていた情報だったのです。きっと多くの人が同じような経験をしたことがあることでしょう。
エンジニアである私が驚いたのは、その技術です。何十億もの検索クエリを理解し、生活者が求めるものと関連性が高く、魅力的な広告を瞬時に表示することは、並外れた難題です。私はデジタル広告の課題と可能性に魅了され、Google でその未来を切り開きたいと考えました。
それから時は流れて現在、私が Google の広告事業を率いて約 100 日が経ちました。この間に、技術は私が経験したことのない速さで変化しています。
とはいえ、すべてが変わったわけではありません。広告を機能させるために必要なこと、つまり、適切な顧客に、適切な広告を、適切なタイミングで表示するという最終目標は今も同じです。新しい商品やサービスを探し、選びたいという生活者の欲求がなくなることはありません。「世界中の情報を整理し、世界中の人がアクセスできて使えるようにすること」という Google のミッションも変わりません。そして広告は、それを実現するために重要な役割を果たします。広告業界は、今後も経済を動かす大きな原動力であり続けるでしょう。私もこれからの変革に携われることにワクワクしています。
では、次に何が起こるのでしょう? 何が変わるのでしょうか? 2023 年が新しい AI 技術の実装の年だったとすれば、2024 年は、AI がキャンペーン作成から広告体験に至るまで、広告プロセスのあらゆる部分を強化し始める年になるでしょう。2024 年 5 月 21 日午前 9 時(米太平洋時間)に米国で開催する毎年恒例のイベント「Google Marketing Live(英語)」で、私たちの取り組みを伝えられるのを楽しみにしています。
その前に、今回は 2024 年の広告業界への私の考えを紹介します。AI はすでにビジネスの可能性を引き出し、プライバシーに配慮した、より役立つ広告体験を実現しています。そして、これはまだ始まったばかりです。
AI の可能性を享受する
ますます細分化しているデジタルメディア環境で、適切な顧客に適切な広告を適切なタイミングで配信することは、簡単ではありません。新しい手法が必要であり、AI はこの状況でより効果的な広告を広く届けるのに役立ちます。
予測 AI によって Google 製品は、企業がより簡単により高い広告効果を得られるよう進化してきました。最新の言語モデルでは、キーワードターゲティングから入札の最適化に至るまで、生活者と広告主の意図を理解して、マッチングする能力が大幅に向上しました。Google 広告を利用している広告主の 80% が、すでに Google AI を取り入れた検索広告を活用しているのです。
私たちは生成 AI で Google 広告に革命を起こし、広告キャンペーンの管理からクリエイティブ制作に至るまで、あらゆる面を強化しています
最新の Gemini モデルは、生活者や開発者、企業を支える製品、API、プラットフォームなどデジタル広告のエコシステム全体をサポートしています。最近では、検索広告(英語)と P-MAX キャンペーン(英語)でそれぞれ Gemini モデルを使用した初の機能を発表しました。今後さらなる機能が控えています。
これらの機能を使うことで、企業はより少ない労力で高い広告効果を実現できます。入稿するキーワードを生成したり、広告クリエイティブ用のテキストを生成したり、適切な画像をライブラリから選んだりといった作業をサポートします。あとは、こうして用意した素材からキャンペーンを作成するだけです。
Gemini の最新モデルはマルチモーダル対応なので、テキストや音声、画像などさまざまなデータを横断して理解し、より優れた提案ができるようになりました。
冒頭で話した、私の興味を引いた小さなホテルが配信していた広告をを想像してみてください。ホテルのオーナーは広告を出したいけれども、何から手を付ければいいのかわからない状態だとしましょう。
Google の広告製品を使えば、ホテルのオーナーが用意するのはホテルの Web サイト、部屋やアメニティの画像と、もしあれば動画、それからキャンペーンの予算と目標などの、基本的な情報だけです。これだけで、Google AI が、ホテルを紹介する魅力的なテキスト、目を引く画像や動画などのクリエイティブアセットを生成したり選んだりし、さらには、ホテルと関連性の高い潜在顧客に対して、見た目にも魅力的な広告を届けられるよう、キャンペーンを調整していきます。
Gemini は、部分一致(英語名 : Broad match)やコンバージョン モデリングの予測 AI など、Google の他の技術とも連係しています。これにより、広告主は最も関連性の高い検索クエリに対して最適なクリエイティブを配信し、広告効果を最適化できるのです。このような組み合わせを広く提供できるのが Google の強みです。この分野での新たな動きについては、近日中に発表できる予定です。
生成 AI による新たな検索で、広告の可能性が拡大
Googleは、SGE(Search Generative Experience;生成AIによる検索体験)を皮切りに、生成 AI によって検索エンジンの可能性を再構築しています。人々は、AI による包括的な回答と実際の人間の視点による洞察の組み合わせを好む傾向にあり、回答内にある参考サイトへのリンクから情報をさらに掘り下げています。
人々は、以前は考えもしなかったような長く複雑で具体的な検索クエリによって、Web 上のさまざまな視点や深い洞察を得られるようになりました。こうした新しい検索の形は、広告主にも新たな機会を提供するでしょう。
今、検索ではどんなことができるでしょうか? たとえば、私が子供たちとハワイ旅行を計画しているとしましょう。「ハワイでまず訪れるべき島はどこですか?」と検索すれば、旅行サイトのリンクと、候補の島々のリストが表示され、比較検討できます。私たち家族はハイキングが大好きなので、カウアイ島を選んだとしましょう。そこからアクティビティやホテルを探せますし、その際には関連する広告が表示され、予約の助けとなります。
将来的には、さらに多くの可能性があるでしょう。AI の回答が広告によって補完されることを想像してみてください。上の例でいえば、島の説明に加えて役立つアクティビティの広告やホテルの候補が、回答内に表示されるかもしれません。既存の広告をより適切に配信することはもちろん、広告が有効になる場面が大きく広がる可能性があります。
視聴者を引きつけるデジタル動画コンテンツ
優れた広告は、それを視聴する人々がいる場所に届いてこそ効果を発揮します。YouTube はますますそうした場所になっています。ショート動画と長編動画の台頭が、この傾向の大きな要因です。
YouTube ショートは毎月 20 億人以上(英語)が視聴しており、世界中の人が毎日 10 億時間以上の YouTube コンテンツをテレビで視聴しています。
Google AI はすでに、おすすめ動画からアクセシビリティ機能まで、YouTube の人気を支えています。Google AI によって、クリエイターたちは今後さらに YouTube 上で創造性を発揮できるようになるでしょう。それは YouTube 広告に関しても同じです。
2023 年には、Google AI を活用した新しいキャンペーン(英語)やクリエイティブ素材の生成ツール(英語)によって、クリエイターや広告主は視聴者とつながり、さまざまな配信面やフォーマットで需要を喚起できるようになりました。2024 年はさらに、たとえば YouTube 広告内の風景をパリからニューヨークに変えるなど、視聴者に合わせて動的に、かつ大規模にクリエイティブをカスタマイズできるようになるでしょう。
未来のためにプライバシーと信頼を
広告の未来が、プライバシーに配慮した技術の上に築かれることは間違いありません。Google の調査によると、91% の人々が企業に対して、収集したデータの使い方に透明性を求めています(*1)。
それを実現するための方法は明らかです。AI の活用はプライバシー保護技術によって新たな可能性を見出します。AI は、データ量が少なくても、それを補完するのに役立ちます。Google は、ファーストパーティ データ、機械学習とモデリング、そしてプライバシー サンドボックス API 群のようなプライバシー保護技術に基づいて Google AI 搭載の製品を開発してきました。これらの製品を最大限に活用するために、広告主が今すぐ広告の効果測定の環境を整えるための手順があります。
もちろん広告主はリスクがあることを踏まえた上で、データを取得、利用する際に、それほどプライバシーに配慮しない他の選択肢も選べますが、そうした選択が広告業界の未来を形作るのです。私たちは、Google の製品を使う人々と、広告で支えられた Web の未来のために、プライバシーと信頼こそが進むべき道だと考えています。AI は、少ないデータでより多くのことを可能にします。Google は、責任を持って AI を構築することにコミットしており、AI は安全とイノベーションの精神の下で規制されるべきだと信じています。
デジタル広告の次なる時代を定義する
私たちはこれまでにも広告の変革期を経験してきましたが、今回の変化はまた新しいレベルのものです。新たな解決策を大胆に試し、何がうまくいって何がうまくいかないのかを見極め前進しながら、AI 原則に基づいて決断していくつもりです。その過程で、企業はどこに支援を必要としているか、Google が何を改善できるか、皆さんの意見を聞きたいと思っています。
変化は、人々が求めているものを見つける新たな方法と、企業がブランドを披露し、成長する新たな方法への扉を開きます。皆さんと一緒にその扉をくぐり抜けていければうれしく思います。