多くの日本企業にとって、海外進出の強化は取り組むべき課題の 1 つです。株式会社明治も海外売上比率を高める取り組みを行っています。今回はこうした同社の取り組みの中から、ベトナム進出時の事例を紹介します。Google は初期のマーケティング計画立案から支援し、認知や売上の拡大につなげました。
明治は、1916年に「東京菓子株式会社」を設立して以降、100 年以上の歴史を誇ります。国内では、乳製品やチョコレートなどで高いシェアを維持しており、日本を代表する食品メーカーの 1 つです。同社は今回、重点地域の 1 つに位置付けているベトナムでマーケティング施策を実施しました。
明治のベトナム進出、現地任せではなく本社とともにトライアル
ベトナムは売上の伸びしろがある地域ですが、人口の増加も緩やかになっており、将来的に成熟した市場になる未来を見据えたマーケティング活動が重要です。ただ商品を店頭で目立たせて売るのではなく、健康価値などベトナムの生活者が求める付加価値をプラスオンして、それが伝わるマーケティングをしていく必要があったのです。
しかしこれまで明治のベトナム法人では、現地の代理店に販売戦略を含めて委託していました。そのため、マーケティングにおいて明治として伝えたいメッセージが伝えきれていないことが実情でした。
そこで明治は、本社として積極的に海外展開のプロジェクトを推進。インハウスの代理店を活用するなど、本社主導でマネージメントしました。これにより国を越え、社内のコミュニケーションが円滑になり、トライアルが成功すれば、そのノウハウを現地の代理店などにも展開できると考えたのです。
そのパートナーとして、各国の市場や生活者に関するインサイトを持っていることや、EC の知見を期待され、 Google との取り組みが始まりました。
ベトナムでチョコ菓子の認知、売上アップへ
トライアルの対象にしたのは、ベトナムで販売しているチョコレート菓子「Hello Panda」です。この売上最大化を目標に、キャンペーンを実施。売場である小売店への送客(来店促進)が課題でした。
明治は以前にもベトナムで、赤ちゃん向け商材のマーケティング施策を Google と実施していました。赤ちゃん向け商材は訴求層が明確です。育児をする上での必要性も高く、年間を通じて需要があります。加えて一定期間で顧客層が入れ替わるため、常に新規の顧客を獲得することが必要です。そこで、定常的に新たな顧客層となり得る人々と接点を持ち続けるために、デジタル広告が効果を発揮できると考えました。
この赤ちゃん向け商材で一定の成果を得られたため、今度は嗜好品であるチョコレート菓子での取り組みを決めたのです。
海外進出サポートチームと連携して現地のマーケティング戦略を策定
ベトナム向けのマーケティング戦略を決めるにあたって、まずは現地の市場や消費者のインサイトを把握しなければなりません。
そこで Google ではまず、明治向けにベトナム市場についての勉強会を実施しました。Google には、海外進出やその事業拡大をサポートする International Growth Team(IGT)という専門チームがあります。Google の日本拠点と IGT が連携し、Google 独自データと外部データの掛け合わせから見えるベトナム市場のトレンドなどを共有しました。
ベトナムは、東南アジア 5 カ国と中国を対象とした調査で YouTube の利用率が高い地域の 1 つです(*1)。視聴時間の長さも世界の上位 5 カ国に入ります(*2)。そこでYouTube 広告を活用して、商品を訴求することにしました。
YouTube 広告でブランド認知向上、売上は最大 310% アップ
お菓子は検索して購入する商材でもないため、まずは動画によるブランディング施策が有効だと考えました。
また前述の通りベトナムでは YouTube が浸透しており、広告の視聴も期待できます。そこで明治では、6 秒のバンパー広告と、より長尺の TrueView インストリーム広告を併用することを決めたのです。
2 つの広告フォーマットの世界観や印象は一貫させつつ、バンパー広告ではリーチを広げ、より長尺の TrueView インストリーム広告では小売店への送客を促すメッセージを組み込みました。これを小売店の半径 5km 以内に滞在すると想定される YouTube視聴者へ配信することで、課題である小売店への送客を期待したのです。
TrueView インストリーム広告はこちら
バンパー広告はこちら
キャンペーン後は効果検証も実施しました。店舗の POS データで送客の効果を検証したところ、一部商品では、施策前後での売上が最大 310% 伸びました。また Google の「ブランドリフト調査」では、当該エリアのブランド認知は業界トップレベルの伸びを確認できました。
こうした結果を受けて明治の後藤勇哉氏(グローバル事業推進本部)は「今回、本社主導でのマーケティングによって、現地にいなくても広告を通じて消費者の商品認知を高められたことで、商品導入や販促の進め方が変わりました。メーカー主導で、どのように商品価値を伝えていくかを第一に考えるようになったのです。ベトナムでの結果を受けて、その後台湾でも同様のスキームでチーズ製品の広告を配信するなど、他地域への展開も進めています」
歴史ある日本企業である明治の事例が成功した背景には、Google が持つ、グローバルなマーケティングの知見やテクノロジーがあります。
Google は今後も、日本企業が海外進出で直面する際のマーケティング課題に寄り添い、支援していきます。
Contributor:
国際展開チーム(International Growth Team) ピーター・ツァイ
国際展開チーム(International Growth Team) カリス・ヌグロホ