これまでにも、Think with Google では、実店舗中心のビジネスモデルでも、オンラインはその店舗来店促進に活用できることをご紹介しました。今回も、オンラインの特性を上手に活用して、店舗を中心としてビジネスにどう活用できるか、その一例をご紹介したいと思います。
来店客数国内 1 位のセブン&アイ・グループのスーパーストア事業であるイトーヨーカ堂(店舗名:イトーヨーカドー)では、収益性の向上を目指しており、マーケティング投資も例外ではありません。
同社では、従来よりそのマーケティング投資の多くをチラシに使っていました。期間限定セールについてもそれは同様で、期間限定セールを広く知らせる事を目的として、最適な「時期」、「地域」に合わせてチラシ広告を出稿していました。
一方で、客観的事実として、日本での新聞の1世帯当たり部数は 2000 年の平均 1.13 部から、2017 年では0.75 部と、ここ 17 年で約 2/3 まで落ち込んでいます。*1
さらに、Google の調査では、日本人新聞購読者全体の 3人に1 人以上が、新聞折込チラシを見る頻度がここ 2-3 年で「減ったと思う」「やや減ったと思う」と回答しています。*2
そうした日本人生活者の環境変化の中、同社でもオンラインを新しいセールの告知方法として検討していました。今回は、オンライン広告の中でも、ディスプレイ広告を活用。同社の試算によると、チラシと比較し場合に、一人当たりへの告知(リーチ)単価が良く、収益性の向上につながることを確認できました。
また、今回オンラインのディスプレイ広告でセールを告知するに当たり、運用方法についても期間限定セールの告知という目的に応じた新しい試みを行い、その高い有効性を確認することができました。
それは、これまでマーケティング担当者の間では、オンラインでディスプレイ広告を出稿する場合、広告バナーのクリック単価を最適化(最小に抑える)することを目的とした、CPC(Cost Per Click、クリック単価)運用が主流でしたが、今回は前述の目的により最適な、「広告バナーを見られることに最適化した運用方法である、vCPM(viewable CPM、視認範囲のインプレッション単価制)運用です。この運用方法については、Google にて複数業界で調査した結果、下記の通り見せることにおける有効性が確認されています。
図:ディスプレイ広告の クリック単価運用に対する視認範囲のインプレッション単価制の有用性比較結果*3
今回この運用方法の有効性を確認するに当たり、対照実験を実施しました。これは、あることの有用性だけを確認したい場合に、その他の条件を全て同じにして試験したいことのみによる差を比較する考え方です。
具体的には、今回有効性を確認したい運用方法以外による変化を取り除くため、コントロールグループ(クリック単価運用採用)とテストグループ(視認範囲のインプレッション単価制)と呼ばれる 2 つのグループを作成し、入札手法以外の条件(オーディエンス、クリエイティブ、コスト、キャンペーン設定など)を揃えました。
図:今回のテストの概要
結果として、2 つのオンライン広告グループの広告表示(視認範囲のインプレッション)を比較した場合、同じ予算で 10 倍の広告表示回数を確認できました。
また、今回のチラシと比較した場合に、一人当たりへの告知(リーチ)単価が良く、収益性の向上につながった理由として、同社ではオンライン広告の特性である下記を考えています。
・家にいない人・店舗付近の人などにもタイムリーに配信できる
・チラシと異なり印刷コストがかからない
・チラシと異なり見られた時にだけ課金される
・視認可能性に応じて費用を最適化することが可能
図:今回使われたバナークリエイティブの例
同社マーケティング担当の 宮本 敏実氏は、実店舗主体のビジネスでも、目的に応じた手段としてのオンライン広告、またその中でも視認範囲のインプレッション単価制での運用が、リーチ力を生かしてこれまでチラシだけでは届かなかった新規顧客へのリーチの可能性を効果的に広げるマーケティング投資だということが検証できたことは、大きな一歩だと述べています。