人々がさまざまなプラットフォームを利用するマルチスクリーンの時代は今に始まったものではありませんが、このトレンドは加速してきています。テレビを見ながらウェブを閲覧するインターネット ユーザーの割合は、アメリカで昨年 85% 近くに達し、75% をやや上回る程度だった 2014 年に比べてまだまだ伸びていることが確認されました。
こうした状況はブランドに課題を突き付けています。どんなにマーケティング予算を最適化しようとしても、プラットフォームごとに個別のキャンペーンを作成すれば費用が増えてしまうためです。
美容ブランド「クリニーク」も、まさにこの課題に直面していました。シーズンごとにさまざまな商品を宣伝する同社の場合でも、常に広告費用対効果の最大化を追及しています。
個々のデジタル キャンペーンを一から作るのではなく、既存の印刷広告にモーション グラフィックスを加え、6 秒間のバンパー広告を作ることができたらどうでしょう。
クリニークは広告費用対効果を追い求める中で、Google の Unskippable Labs テストに参加し、プラットフォームごとに異なる広告が必要であるという業界の常識に挑戦しました。目標は、少ない経費で成果を向上できると実証することでした。
オムニチャネル マーケティングに、それほど費用は必要ない
この取り組みの発端となったのは、「6 秒間のバンパー広告は、焦点を 1 つに絞ると成果が上がりやすい」というインサイトでした。これは、クリニークの印刷広告でも、常に重視されてきたことです。
このインサイトから、あるアイデアが生まれました。個々のデジタル キャンペーンを一から作るのではなく、既存の印刷広告にモーション グラフィックスを加え、6 秒間のバンパー広告を作ることができれば、広告制作に必要なリソース、時間、費用を節約できるのではないか、というものです。
クリニークはこのアイデアを、「Chubby Plump & Shine」キャンペーンでテストすることにしました。この商品は、唇をふっくらさせる定番商品「Chubby Stick Lip Colour」の最新モデルです。
印刷広告からバンパー広告へ
クリニークから印刷広告 3 パターンを受け取った Google の Unskippable Labs チームでは、シンプルなアニメーションを使って、それらの広告に動きを付けました。
最初のバージョン「Balloons」は印刷広告をそのまま使ったもので、商品の「ふっくら」効果をクリニーク独自のビジュアル センスで伝えています。3 つのバンパー広告の中では、ベースとなった印刷広告(生活者が店頭で目にする広告)と最もイメージが近いものでした。
2 つ目のバージョン「Tribe」は、4 種類の「Chubby Stick」商品を前面に押し出し、ブランドロゴへとフェードアウトするものです。
最後のバージョン「Lips」では「Chubby Plump & Shine」という商品だけを取り上げ、デジタル処理された背景の上に表示しました。3 つのバンパー広告のうち、元の印刷広告のイメージが異なった広告です。
キャンペーンの運用が始まると、Unskippable Labs チームは Google広告 ブランド効果測定を使って、視聴者の反応を調べました。キャンペーンの成果は、クリニークの目標に即し、広告想起率と商品認知度の伸び率に基づいて測定されました。
その結果は目覚ましいもので、相対的な伸び率が広告想起率は + 69.4%、ブランド認知度は + 26.1% となり、クリニークが美容業界の最高レベルとみなす成果を上げました。
元の印刷広告と最もイメージが近かった「Balloons」は、3 つの広告の中で成果が最も高く、ブランド認知度の相対的な伸び率が 42.8% となりました。特に、クリニークがターゲットとする 18~24 歳の消費者の間では、相対的な伸び率が広告想起率で +93.7%、ブランド認知度で +41.7% に達しました。
このテストの教えを広告戦略に活かしましょう
このテストからは、優れた成果を実証したデータ以外にも、費用対効果の高いメディア戦略や広告戦略をご自身のビジネスで見つけるうえで役立つ、次の 3 つの教えが読み取れます。
1. プラットフォームをまたいだ一貫性のあるメッセージ
最も成果の高かった「Balloons」広告では、1 つの商品に焦点を絞ってその特長を伝え、消費者が店頭で目にする印刷広告の画像と同じものを使いました。
クリニークの印刷広告を 6 秒間の動画に効果的に変換したことで、広告クリエイティブと商品との結びつきが強まり、成果につながったのです。
2. 印刷広告を作成する際に、バンパー広告への展開を念頭に置く
アメリカにおいて印刷広告はまだ重要産業であり、2017 年の市場規模は 250 億ドルを上回っています。そして、キービジュアルを宣伝の柱として店頭で商品を販売するクリニークのようなブランドにとっては、今後も印刷広告や画像はマーケティング プランに必ず組み込まれます。
このテストによって、印刷キャンペーンは新しいクリエイティブへの展開を念頭に置いて作成できることが実証されました。これからは、印刷広告の静止画像を動きのあるデジタル広告で活用する方法を検討していきましょう。クリニークでは今後、印刷広告のキービジュアルの撮影時に、できる限り動画も撮影していく予定です。
3. 印刷広告をバンパー広告にすることで、予算を効率的に利用可能
クリニークでは、メディアの費用対効果を最大化するうえで、この手法が優れた成果を生みました。
マーケティング予算に余裕がなかったとしても、選択肢は必ずしも印刷メディアとデジタル メディアの二者択一ではない、ということです。ターゲット ユーザーが両方のメディアを使っているのであれば、ブランド側も両方のプラットフォームでメッセージを届けることができるようにできるように工夫しましょう。