2022 年で、US 版 Think with Google はサイトのオープンから 10 年を迎えました。今回は US 版 Think with Google が 2022 年 10 月に公開した記事を基に日本語に翻訳、編集し、過去 10 年のマーケティング環境の変遷を紹介します。これからのデジタルマーケティングへのヒントを探ってみてください。
時は 2012 年。超音速スカイダイバーのフェリックス・バウムガートナー氏が、高度 3 万 9,000 メートルの成層圏から地球へフリーフォールするところを、過去最高の 800 万人が Web ブラウザ越しにライブで視聴していました。同じころ、アーティストである PSY の『江南スタイル』(カンナムスタイル)のミュージックビデオが数億回再生されていました。数カ月後、この動画は再生回数 10 億回を突破した YouTube 初のコンテンツになります。これらの記録はデスクトップ PC で達成したものです。当時はまだ、世界の Web トラフィックの約 85% をデスクトップ PC が占めていました(英語)。
US 版 Think with Google は、そんな年に誕生しました。目標はシンプルでした。Google のデータに基づく動向や文化的なトレンドに関するインサイトを、1 カ所にまとめてデジタルマーケティングに携わる皆さんに提供するというものです。
この 10 年で多くのことが変わりました。たとえば、あなたが今、この記事をモバイルデバイスで読んでいる可能性は高いでしょう。今や、世界の Web トラフィックのほぼ 60% がモバイルによるものです。その間、Think with Google は、アプリの台頭から音声検索の普及まで、新たな技術の登場に伴う生活者行動の進化を解説してきました。
10 周年を記念して、この 10 年におけるデジタルマーケティングの大きな変化を紹介します。
2012 年:テレビからオンライン動画へのシフトが始まる
ロイターによると、2012 年のロンドンオリンピックの開会式は世界で 9 億人がテレビで視聴(英語)。オリンピック終了時、NBC は米国史上最も視聴されたテレビイベントになったと発表(英語)しました。しかし、すでに視聴者行動には大きな変化が起こりつつありました。ブロードバンドが普及するにつれ、テレビからオンラインに向かう人々が増加したのです。
2012 年に Google が実施した調査(英語)によると、18 歳 ~ 49 歳の 31% が、1 日にテレビを視聴するのは 2 時間以下と回答。また同年の別の調査(英語)では、13 歳 ~ 24 歳の 44% は、テレビよりもオンライン動画をより多く視聴していると回答しました。
2013 年:人々は実用的な情報と切実な情報の両方を検索に求める
10 年前でも、Google では毎月 1,000 億件の検索が行われていました。Google は当時、人々がいつどこで、どんな検索をしているか、Google トレンドで皆さんに共有していました。しかし、人々がなぜ検索するのかについては、あまりわかっていませんでした。
2013 年に実施した行動観察調査(英語)でわかったのは、「この靴はどこで買える?」といった実用的な情報を求める質問から、「私はどうありたいのか」のような人生を考える観念的な質問まで、検索は多様な理由で利用されているということでした。
2014 年:マルチスクリーン活動が主流に
2010 年、サッカーワールドカップをテレビ観戦していたスポーツファンが手に持っていたのは、スナックだけだったかもしれません。というのも、当時のGoogle のデータ(英語)によると、試合が始まると人々はテレビに釘付けになり、ネット検索件数が激減。当時はまだ、検索はデスクトップ PC によって行われる傾向にあったためです。
2014 年のワールドカップに向けて、私たちはその半月ほど前まで開催していた UEFA(欧州サッカー連盟)チャンピオンズリーグのデータを使って視聴者行動の予測(英語)を行いました。その結果、テレビ画面で試合を観戦しながらスマートフォンで関連情報をチェックする「セカンドスクリーン」が主流になりつつあることがわかりました。
2015 年:マイクロモーメント —— 購入前に好意度と認知度を高める瞬間
2015 年には、店に行く前に詳細な買い物リストを作成する時代は過ぎ去っていました。その代わり人々は、何かをしたい、何かを知りたい、何かを購入したい、そう思った瞬間に、自分のデバイス(スマートフォンであることが増えていました)に向かうようになりました。
Google はこうした瞬間を「マイクロモーメント」と名付け、この考え方を広げてきました。この年、スマートフォンユーザーの 82% が店舗での買い物中にスマートフォンで調べものをしています(英語)。
2016 年:リアルタイムでインスピレーションを求める
マイクロモーメントについて初めて言及した翌年、私たちはこの行動の変化にはさらに別の側面があることを明らかにしました。人々は情報を「今すぐ」求めているだけでなく、「まさにここで」欲しいのです。米国では「near me(近所の)」というフレーズを含むモバイル検索が、2015 年比で 136% 増加しました(英語)。
Google のリサ・ゲベルバー(当時 VP of marketing for the Americas)はこの 2 年後、こうした傾向を考察した記事(英語)で「『near me』というフレーズを含む検索は、広告主にとって重要な情報です。人々が自分の近くにあるものを探しているのであれば、それはかなり強い意思表示です」と書いています。
2017 年:モバイルの速度が成功に不可欠な条件に
2017 年、モバイルでの Web ページの読み込みにかかる平均時間は 22 秒になりました。
些細なことに聞こえるかもしれませんが、この年の Google の調査(英語)によると、この読み込み時間はオンラインビジネスの成否を分けるのに十分なものだったのです。126 カ国、90 万件のモバイル広告のランディングページを分析した同調査では、ページの読み込み時間が 1 秒から 10 秒に延びると、モバイルサイトの訪問者の直帰率が 123% 増加してしまうことがわかりました。
2018 年:インタラクティブでソーシャルな体験としての動画の台頭
スマートフォンから目を離さず、周囲で起きていることに気づかない人々が日常風景になりました。もしかすると、このことがインターネットは現実から孤立した体験だという批判につながってきたのかもしれません。
しかし、2018 年の YouTube のデータ(英語)では、インタラクティブでソーシャルな体験としての動画の台頭という、数年後には爆発するトレンドの兆しが見えていました。たとえば YouTube クリエイターやそのフォロワーと同時に何か(勉強、掃除、読書など)をするよう促す動画への関心が高まりました。また Z 世代の 10 人中 7 人が、誰かと一緒に動画を見ることでつながりを感じられると答えました。
2019 年:音声アシスタントが生活者行動を形成
音声アシスタントのための技術(英語)は、1 世紀以上にわたって、何らかの形で存続してきました。トーマス・エジソンが電球より前に発明したもの(英語)がその起源です。
ほぼ 150 年後、音声アシスタントの技術は広く普及し、2019 年には、世界のオンライン人口の 27% がモバイルで音声検索を使うようになりました(英語)。
2020 年:オンラインの情報がライフラインに
どれほど検索データを集められたとしても、2020 年に世界中で何が起こるかを予測することはできなかったでしょう。新型コロナウイルスの感染拡大により、オフィスも店舗も学校も閉鎖を余儀なくされました。
そうした中、多くの人々が在宅時間を利用して、新しいスキルの習得に取り組みました(英語)。YouTube のデータによると、タイトルに「beginner(初心者)」を含む動画は世界で 70 億回以上再生され、これらの動画の 1 日当たりの平均再生回数は、感染拡大の最初の数カ月で 50% 以上増加しました。
2021 年:バーチャルな共同体験が定着
感染拡大がもたらした行動や文化の変化を一時的なものだと考える人もいるかもしれませんが、2021 年の Google 検索のデータは、そうではないことを示しました。
正常な感覚に戻り、できなかったことを再開しようとする人々の意識が検索にも表れていました。2021 年には、世界中で「zoo tickets(動物園のチケット)」という言葉を含む検索が倍増しました。しかし、バーチャルな体験が完全になくなることはありませんでした。たとえば同じ時間に、同じ動画を、離れた場所で見ながらチャットする「watch party(ウォッチパーティー)」という言葉を含む検索も、2020 年比で 90% 増加したのです。
2022 年:この 10 年に達成したことは次の 10 年の行動指針に
そして 2022 年。Google は、データを解析し、トレンドを紹介し、進化する生活者行動に光を当てています。また、インクルージョンからプライバシー(英語)まで、Google がリアルタイムで学んでいる教訓も共有しています。つまり、10 年前に Think with Google の立ち上げに影響を与えた目標は、今でも私たちのすべての行動を形成し続けており、次の 10 年間の指針となります。私たちは次の 10 年がどのようになっていくか、楽しみにしています。