長期間にわたり親しまれてきたブランドでも、ときには見直さなくてはならないことがあります。
たとえば ケンタッキー フライド チキン ( Kentucky Fried Chicken ) は「 KFC 」へ、そしてブリティッシュ ペトロリアム ( British Petroleum ) は「 BP 」へと変わりました。アップルコンピュータも、現在は「アップル」へと社名を変更しました。
しかし、ブランドの再構築は単なる社名やブランド名の変更ではありません。リブランディングとは、新たな顧客層に向けてブランドのミッションやメッセージを再構築することです。
Google は今年 7 月にリブランディングを行い、代表的な 3 つの B2B マーケティング ブランドをリニューアルしました。18 年間継続した Google AdWords は「 Google 広告 」と変更され、DoubleClick と Google アナリティクス 360 は「Google マーケティング プラットフォーム」に統合されました。そして、22 年前にサービスを開始した DoubleClick for Publishers は、「Google アド マネージャー」として生まれ変わりました。
今回の変更のひとつの理由は、ユーザーのニーズを見極めて、彼らに役立つ適切なメッセージを配信できるよう、ブランド、代理店、サイト運営者、広告主を支援することです。また Google は、広告主の要望に対して、より迅速に応えなければならないと実感していました。
本記事では、Google がリブランディングを通して学んだ 3 つのポイントをご紹介します。
ポイント 1: 広告主の要望を明確に把握する
この 20 年間に、インターネット広告業界は大きく変貌しました。広告市場の発展とともに、Google はキャンペーンの作成、メディアの購入、広告費用対効果の測定のためのツールを見直してきました。さらに、動画とモバイルが主流になりつつあるのに伴い、適切なツールによって変化に対応してきました。
しかし、ツール類の進化にもかかわらず、AdWords ブランドの主なイメージは依然として「検索広告の購入」にとどまっており、アプリ インストール広告や動画広告の購入に関心のある層にうまくリーチできていませんでした。
さらに、Google のプラットフォームを利用する広告主は、キャンペーンの作成、計画、購入、成果測定のすべてをワンストップで行うことができる環境を求めていました。事実、すでに多くの広告主が、DoubleClick と Google アナリティクス 360 スイートを併用したキャンペーン作成と成果測定を実施していました。つまり、変更すべき点を示すだけでなく、その解決法まで示していたのです。
ポイント 2: 成功のカギは、部門を超えたチームづくりと専門性
Google の課題は、提供中のサービスを簡素化し、シームレスに利用できる単一のプラットフォームとして統合することでした。これは決して容易なプロセスではありません。2 年間にわたり、社内の数百人のスタッフが取り組まなければならない一大プロジェクトでした。
最初に、プロジェクトを推進させる原動力として、少人数のマーケティング スペシャリストからなる「コアチーム」を立ち上げました。これは、Google のようなテクノロジー主導型の会社では珍しいアプローチですが、マーケターにとって、広告主の声を聞き、確実に伝えることが重要であるという理由から、この手法を採用しました。すでにGoogle は、一連の作業をすべて完了しており、広告主が主導権をもった状態でリブランディングを進めるための準備が整っていました。
コアチームに加え、さまざまな部署のスタッフからなるチームを 20 以上立ち上げ、エンジニアリング、プロダクト、デザイン、営業、支払いなど何百人にも及ぶメンバーが参加しました。
プロジェクトの遂行にあたっては、それぞれのグループの専門性が重要な役割を果たしました。たとえば、社内の Brand Studio チームはロゴのデザインを担当し、トレーニングと教育のチームは、世界各国にいる数千人の営業担当者にトレーニングを実施しました。またエンジニアたちは、コードベースに 100 万か所以上の変更を加えました。
その過程で、50 以上のウェブ プロパティの URL を更新し、複数のソーシャル メディアをリブランディングしました。さらに、数百本の YouTube 動画を編集し、Think with Google の 500 以上の記事およびヘルプセンターの記事 5,000 以上を更新しました。そしてコアチームは、プロジェクトの方針がぶれないように、広告主の重要なインサイトをフィードバックし続けました。
多くのチームがかかわることにより、新しいアイデアが湧き出し、多様な意見が飛び交いました。その結果、プロジェクトには、絶えず変更が加えられました。そしてコアチームは、プロジェクトの方針がぶれないように、広告主の重要なインサイトをフィードバックし続けました。
ポイント 3: グローバルな視点とローカルな視点を併せ持つ
もう 1 つの重要なポイントは、グローバルな視点で考えるということです。われわれは、英語圏の国のお客様だけでなく、すべての国の広告主の要望に応える必要がありました。新しいブランドを、英語圏以外の市場にどのように導入するか検討した結果、アラビア語、日本語、ロシア語ではブランド名を現地の言語にローカライズすることにより、広告主の利便性を高めることを目指しました。
さらに、それぞれの地域に応じた対応も必要です。今回のブランド再構築に対して各市場がどのように反応するかを見極め、それに応じた適切なアプローチを採用しました。たとえば中南米地域とアジア太平洋地域では、独自の説明会の開催、地域の主要パートナーとのミーティング、報道向け資料の作成、そして導入事例のプレゼンテーションといった企画を実施しました。
チームが一丸となり目的を達成
一連のプロジェクトを通じてわれわれが学んだことは、常に広告主の立場になって考えることの重要性です。今回のブランド再構築プロジェクトでは、大規模な変更を成功させるために必要な要素を知ることができました。さらに、将来このような規模のプロジェクトを実施する際、参考になる貴重なインサイトも蓄積できたという意味で、非常に手応えのある結果となりました。