2023 年は、多くの人にとって AI が身近になった年だったかもしれません。アジア太平洋地域(APAC)においても、注目を集めたトピックだったようです。
今回は、2023 年に APAC 版 Think with Google で、読者のエンゲージメント率(*1)が高かった記事 5 本の概要を日本語で紹介します。全文(英語)は各リンク先からご覧ください。
Google AI の活用を中心に、日本国内のマーケティングに応用できる事例が数多く見られました。
複雑化するマーケティングを Google AI で最適化、Samsung などトップブランドの「P-MAX キャンペーン」活用
英語版の元記事:The key that unlocks business gains for top brands across the marketing funnel and channels
著者:ギフト・アナンカパナン(APAC Performance Max Lead at Google)、リハーン・カズミ(APAC Go-to-Market Lead, Retail Ads at Google)
人々が商品を購入するチャネルや、購入に至るプロセスは、多様化、複雑化しています。
そのため、カスタマージャーニーの特定の段階や単一のチャネルに対して投資を集中させてしまうと、他のチャネルなどで獲得できるはずだった潜在顧客を逃してしまうのです。
チャネル横断でマーケティング投資を最適化できる「P-MAX キャンペーン」は、 こうした課題の解決に役立ちます。
Google AI を活用した P-MAX キャンペーンは、1 つのキャンペーンで、検索や YouTube、ディスプレイ、ショッピング、Gmail、マップ などあらゆる Google サービスへ横断的に広告を配信できるツールです。クリエイティブや入札、チャネルごとの予算配分も最適化できます。
韓国の大手家電メーカーの Samsung は、グローバルブランドゆえに、多様な顧客に対してマーケティング投資を最適化することに難しさを抱えていました。特に、インドやベトナムのように、人種や年齢層など多様性に富んだ市場では、個人に最適化して売上拡大につなげることは困難です。
そこで活用したのが P-MAX キャンペーンでした。当初は社内でも懐疑的な声があったため、まずは小規模なテストからスタート。そこで結果を積み上げ、本格的な導入に踏み切りました。
ベトナムでの活用事例では、同程度の広告費用対効果(ROAS)で、月の売り上げが前年同期比で 3.3 倍に増加しました。数値的な貢献だけではありません。マーケターは、これまで手動で広告最適化に費やしていた時間を削減でき、戦略立案などより本質的なかつある業務に当てられるようになったのです。
記事ではその他にも、自動車メーカーの Isuzu Thailand、香港で融資プラットフォームを運営する WeLend の事例を、具体的な数値と共に取り上げています。
動画アクション広告 + パフォーマンス広告で収益性を高めた手法
英語版の元記事:Experiment: How ChicV combined video action and performance ads to boost profitability
ファストファッションブランドの Noracora をグローバルに展開する中国の EC 企業 ChicV の事例です。
同社は多くのファストファッションブランド同様に、顧客の獲得施策に重きを置いていましたが、激しい競争の中で、顧客の獲得単価が高騰していることが課題でした。
そこで ChicV は売り上げに最適化したマーケティング戦略を再考。Google と協力して既存の広告戦略を分析したところ、買い物の探索段階にある顧客ニーズを満たせていないことがボトルネックになってることがわかりました。
そこで、潜在顧客とのタッチポイントを拡大し、継続的に質の高いトラフィックを獲得するために、米国で実験を行いました。
一方のグループには P-MAX キャンペーンを、もう一方には P-MAX キャンペーンと動画アクション キャンペーン(VAC)を組み合わせて広告を配信。P-MAX キャンペーンでは商品の購入をコンバージョン(CV)に設定し、VAC では EC サイトの「カートに追加」ボタンのクリックを CV ポイントとしました。
これにより、「興味はあるものの、まだ購入に踏み切っていない」潜在顧客を明らかにしようとしたのです。さらにこのデータを P-MAX キャンペーンへとフィードバックすることで、より関連性の高いユーザーを獲得し、潜在顧客に対するリマーケティングで購入を促せるようになりました。
P-MAX キャンペーンと動画アクションキャンペーンとの組み合わせで、以下のような結果を出しました。
複数のチャネルを統合することでカスタマージャーニー全体で相乗効果を生み出せることがわかる事例です。
香港における YouTube マーケティングの 3 つのトレンド
英語版の元記事:Trending in Hong Kong: 3 things that matter to viewers and your video marketing
著者:ギフト・アナンカパナン(Product Marketing Manager at Google Hong Kong)
香港の人々は、1 日平均で 80 分以上 YouTube を視聴しており(*2)、3 人に 2 人が「YouTube が何を購入するかを決めるのに役立っている」と感じています(*3)。この記事では、香港での動画マーケティングの 3 つのトレンドを紹介しています。
香港におけるトレンドの 1 つ目は、ブランドとコラボしたコンテンツに対して人々はオープンであるということです。YouTube ユーザーの 81% は「自分に関連のある動画を見る際に、スポンサードコンテンツを受け入れる」と答えています(*3)。
例えばポカリスエットは、人気クリエイターグループの Mill MILK とコラボして商品をプロモーション。商品がクリエイターの日常生活の一部であることを描いた動画は、クリエイターのファン層である若年層の共感を呼びました。結果的にポカリスエットと Mill MILK のチャンネル合計で再生回数 80 万回以上、完全視聴率は 50% という数値を達成しました。
トレンドの 2 つ目は、多様なフォーマットとデバイスで視聴していることです。スマホ、デスクトップ、テレビなどデバイスを横断してさまざまなフォーマットのコンテンツを楽しんでいます
そして 3 つ目は、香港の視聴者が、現在の文化や価値観、ライフスタイルを大胆に映し出したストーリーを求めているということです。LGBTQ+ や、働く女性を支える男性の主夫など多様な人々のあり方を反映した動画コンテンツがブランドの支持につながる事例もあるようです。
記事では、それぞれのトレンドの詳細や具体的な事例動画も紹介しています。
Google AI で顧客とのつながりを広げる
英語版の元記事:Multiply your customer connections with Google AI
著者:マット・デルレ(Managing Director, Cross-Product Solutions at Google)
2022 年の APAC における調査によると、ホリデーシーズンやセールのピーク時に買い物をする人は 2 日間で 3 つ以上のチャネルを利用していました(*4)。また別の調査によると、商品の購入を検討しているときに、2 番目に希望するブランドがあった場合、乗り換えもためらいません(*5)。
Google AI を活用すれば、こうした複雑な消費者へアプローチして売り上げ拡大につなげることができます。記事では、Google AI を活用した 3 つのアプローチを具体例と合わせて紹介しています。
1 つ目は、タイムリーかつ消費者に関連性の高い広告を提供すること。航空会社の Virgin Australia は、旅行に関する、顧客の予測しづらい複雑な意思決定への対応として、スマート自動入札やレスポンシブ検索広告といった Google AI を活用した検索ソリューションを採用。予約数 88% 増、売り上げ 150% 増につなげました。
2 つ目は、新しい顧客を発掘すること。ファッションブランドの COACH は P-MAX キャンペーンを活用して Z 世代における需要を獲得しようと試みました。
3 つ目は、 ROI を最大化するために、AI を活用したキャンペーンを複数組み合わせることです。旅行保険会社の Tata AIG は、Google AI を活用した検索ソリューションと P-MAX キャンペーンを組み合わせることで、ROI 126% 増、売り上げ 8% 増を達成しました。
インドの保険会社が、Google AI 活用で収益性を高めた方法
英語版の元記事:Experiment: How HDFC ERGO created a revenue engine with AI-powered Search ads
規制強化に直面し、対策を探していたインドの保険会社 HDFC ERGO の事例です。インドでは 2022 年、保険に関する規制ガイドラインが厳格化し、さまざまな検索クエリでの保険製品の表示が困難に。検索が顕著に減少するなど、ROI 悪化が課題となっていました。そこで同社は、コストを抑えつつも競争力を維持するために、Google AI を活用した検索ソリューションを試しました。
二輪車の保険事業において、検索数と ROI を高めるべく、検索広告の入札方法を変更しました。まずは第一段階のテストとして、従来の目標コンバージョン単価入札に対して、目標 ROAS 入札での効果を比較。さらに次の段階では、後者のマッチタイプを拡張してより幅広いクエリに対して広告を表示することで効果を比較しました。
その結果いずれにおいても、目標 ROAS での入札の方が効果的だという結果に。9 週間のテストで、ROAS は 49% 高まり、売り上げは 84% 増となりました。
以上、2023 年に APAC 版 Think with Google でよく読まれた記事 5 選でした。
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