米国のマーケターは、どんなトレンドに関心を持っているのでしょうか。2023 年上半期に US 版 Think with Googleで、読者のエンゲージメント率(*1)が高かった記事 5 本の概要を日本語で紹介します。全文(英語)は各リンク先からご覧ください。
サステナブルマーケティングやアプリによる投資対効果(ROI)向上、プライバシーへの配慮など、先進的なトピックが並んでおり、日本でのマーケティングのヒントにもなるはずです。
サステナブルマーケティングにおける 3 つの落とし穴
英語版の元記事:3 sustainability marketing pitfalls ? and how to turn them into wins
著者:ケイト・ブラント(Chief Sustainability Officer)
昨今は、サステナビリティ(持続可能性)を訴えるブランドも増えていますが、伝え方を誤るとブランドの価値を損なう可能性もあります。
記事では、3,000人以上の米国人を対象とした調査を基に、サステナブルマーケティングにおける 3 つの落とし穴をまとめました。
落とし穴の 1 つ目として、行動を促す啓発キャンペーンがかえってネガティブな影響を与える可能性があります。多くの人は、持続可能性に関する問題を理解していないわけではありません。問題に対して何かしたいと思ってはいるものの、持続可能なライフスタイルを選択しにくい状況に置かれているケースもあります。そのためブランドは、既存の製品に持続可能性を組み込むことが求められます。そうすることで、人々のライフスタイルを否定することなく、持続可能なライフスタイルに寄与できるのです。
2 つ目が、悲劇的なメッセージで緊急性を訴えるキャンペーンです。環境汚染で破壊された風景や、ゴミ、火災、苦しむ動物などを通じて問題を訴えれば、その深刻さや緊急性を伝えることはできます。しかし、かえって問題解決に対する個人の無力感を助長する結果になりかねません。
3 つ目が、持続可能性に関するキャンペーンを、ブランドの信頼性を築くためだけに使っている場合です。米国での調査によると、企業による持続可能性への主張が信じるに値するかを判断する際に、証拠が不十分であることが最大の障壁になるとの結果が出ています。そのためブランドは、自社のキャンペーンについてその証拠や価値を提示する必要があります。
『ハリー・ポッター』20 周年記念の YouTube 広告で、認知度 12.7% 増
英語版の元記事:Secrets behind 3 of the most-watched YouTube ads
著者:カマラ・イオディス(Video Content Marketing Lead)
2022 年によく視聴された動画広告をまとめた「YouTube Ads Leaderboard(英語)」から、3 つの事例を取り上げ、成功の要因を解説しています。
そのうちの 1 つが映画『ハリー・ポッター』シリーズ 1 作目の公開から 20 周年を記念したキャンペーンです。米国のビデオオンデマンド(VOD)サービスである HBO Max では、従来のファンとまだアプローチできていない若者の双方へのアピールを狙っていました。
そのために同社では「ノスタルジックな動画が好まれる」という YouTube のトレンド(英語)に着目。制作当時を振り返るキャスト陣と旧作の映像を組み合わせた、懐かしく感動的な動画(英語)が、視聴者の心を打ったのです。
2022 年 11 月中旬からスタートしたキャンペーンでは、バンパー広告とスキップ不可の TrueView インストリーム広告、スキップ可能な TrueView インストリーム広告で、認知度と購買意欲を高めました。また元日のプレミア放送までの数日間は「YouTube Select」を活用。人気チャンネル上で、特定のカテゴリへの関心が高い視聴者へ広告を届けました。さらに放送の前後には YouTube マストヘッドを使い YouTube のホームフィードに動画を掲載することで、多くの人々への認知を促し、キャンペーンを締めくくったのです。
これらの施策によって 4,900万人のユニークユーザーにリーチし、認知度は 12.7% 上昇。すでに高い認知度を誇るブランドにもかかわらず、大きな成功を収めました。
そのほか記事では、エジプトの通信会社 WE によるラマダン期間中のキャンペーンと、電気自動車である BMW iX のスーパーボウル中のキャンペーンを解説しています。
調査で明らかになった、今後 3 〜 5 年での小売業界のトレンド
英語版の元記事:The future of retail: Global trends shaping the next 5 years
著者:リチャード・マンソ(Senior Director of Retail & Merchant Marketing)
Google では、Bain & Company との米国での調査(*2)や、Kantar と実施した世界 30 カ国以上での調査(*3)から生活者の消費行動を分析し、グローバルで今後 3 ~ 5 年間に起こる小売業界での 4 つの重要なトレンドを特定しました。
トレンドの 1 つが「買い物がよりアンビエントな(生活に浸透した)体験」になること。特定の期間に特定のチャネルで特定の商品を探すという切り分けられた行動ではなく、よりシームレスで生活に浸透した体験へと変わっています。たとえば SNS や動画を見たり、ゲームをプレイしたりする中で新しい商品を発見するようになっているのです。
そのためブランドは、コマースとコンテンツの境界がさらにあいまいになったときの見え方を考える必要があります。
若年層では、新たなメディアを使って買い物をしたことがある割合は、他の年齢層よりも 2 〜 3 倍高くなっています(*4)。AR や VR を活用した買い物体験やライブコマースなど、デジタル技術を活用した新たな買い物体験は、より重要な役割を果たすようになるでしょう。
このようにチャネルやメッセージの移り変わりが早い中では、AI の活用もひとつの手です。たとえば Google AI を活用した「P-MAX キャンペーン」を使えば、広告展開が可能な Google サービス全体へ広告を配信でき、その効果を最大化するのに役立ちます。
記事では他に、「パートナーシップの重要性」「Z 世代の購買力の拡大」「プライバシーへの生活者意識の高まり」について、解説しています。
アプリでビジネスを成長させるには マーケティングのヒント
英語版の元記事:How marketers are tapping their apps to supercharge business growth
著者:マイク・ヘンリー(Managing Director, App Ads)、ベリンダ・ラングナー(Product Director, App Ads)
アプリを通じて自社のブランドを際立たせ、ROI を向上させるにはどうすれば良いのでしょうか。記事では、Google が多くの企業と共に培ってきた経験から、その方法を紹介しています。
たとえば、オムニチャネルでの体験向上はアプリを通じたブランドの成長を促す 1 つの方法です。オンラインとオフラインの体験を融合し、シームレスな体験を提供することが求められています。
Google の「Web to App Connect」では、すでにアプリをインストールしている顧客が広告をクリックした後に、最も関連性の高いアプリ内コンテンツに遷移してもらうことができます。顧客体験と広告効果の両立が可能なのです。モバイルの Web サイトへ遷移する場合と比べて、アプリ内に遷移する場合では、コンバージョン率が 2 倍高いとの結果が出ています(*5)。
さらに長期的な視点では、アプリを通じてファーストパーティデータを取得することがますます重要になっていくでしょう。サードパーティ Cookie や広告 ID などが制限されていく中、同意を取ったファーストパーティデータはマーケティングの強固な基盤になっていくはずです。
ブランドに求められるユーザープライバシーへの配慮
英語版の元記事:Customers want control over their data ? and won’t hesitate to switch brands to get it
著者:マリア・ヘレナ・マリーニョ(Senior Research & Insights Manager)、エリザベス・トラン(Ads Privacy Marketing Manager)
生活者の、オンライン上でのプライバシーに対する意識はますます高まっています。Google が米国、ブラジル、カナダ、メキシコで行った調査(*6)では約半数が、第 2 希望のブランドにおけるプライバシーに関するポジティブな体験が、第 1 希望のブランドからのサービス切り替えのきっかけになり得ると回答しました。
つまり、生活者は自身の情報をコントロールできているという実感を求めているのです。サードパーティ Cookie の設定変更やメールマガジンの購読解除ができる、といったことはもちろんのこと、いつ、なぜ自分の情報が利用されるのかを知りたいと感じています。
逆に言うと、こうしたコミュニケーションをうまくできれば、ブランドへの好感度が上がり、マーケティングメールも信頼されて開いてもらいやすくなるということです。記事では、実際に Google が試して効果を確認できたデータプライバシーの実践方法を、具体的に紹介しています。
以上、2023年上半期に米国のマーケターによく読まれた記事をご紹介しました。
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2023/08/20 03:25 記事を更新。初出時、必要な出典が掲載されていなかったため、追記しました。